ガイ-1
艶のある金の髪を、ゆっくりと撫でる。
腕の中の少女が愛しくて、彼女が自分の腕の中にいることが嬉しくて、時間を忘れてしまった。
気が付くと私の肩に頬をよせていたリアは、眠ってしまったらしい。
すぅすぅとかわいい寝息が、耳をくすぐる。
ずっとこのままでいたいが、理性がもちそうにない。
リアを起こさないようにそっと抱き上げて、ベッドへと運んだ。
ベッドのシーツに金の髪が広がり、ささやかなリアの胸が呼吸とともに上下する。
ふっくらとした小さな唇は、ついばまれるのを待つかのようにすこし開いていて、私の理性をぐらぐらと揺さぶる。
とつぜんリアが倒れた昨夜は、リアの体調が心配で、枕元に一晩つめていても欲情などわかなかったが、先ほどの元気そうなリアを見て安心したとたん、これだ。
後ろ髪をひかれるような思いで、リアの部屋を後にする。
そのまま向かったのは、ハッセン公爵の執務室だ。
「リアの容体はどうだい?」
ハッセン公爵は、からかうように私に尋ねる。
「一度目を覚ました時は元気そうでしたが、すぐに眠ってしまいました」
「今日のリーリアの予定は?」
「私とふたりで、エミリオにこの家を案内するために、スケジュールは空けていました。エミリオを案内するのは私だけでも事足りますし、今日はリアは休ませましょう」
「そうだな。あの子が倒れるなんて初めてのことだ。大事をとるほうがいいだろう。とはいえ、ガイにとっては幸いだったかな。エミリオとリーリアを近づけなくてすむ」
冗談のようにハッセン公爵は言うが、その眼差しは厳しい。
私がさりげなくリアに、エミリオと距離をおくよう誘導していたことは、お見通しらしい。
エミリオを養子にと望んだハッセン公爵からすれば、私の言動は反逆と思われても仕方ない。
次期公爵の座を望む私は、ハッセン公爵に逆らうつもりはなかった。だが。
ハッセン公爵が新たに養子を迎えると聞いた時から、私は不安だった。
自分の能力が次期公爵として足らないとは思わない。
自分の実力にも努力にも、自負があった。
……けれど、リアのことは別だ。