ガイー12
空色の瞳がぱちりと開き、焦点のあわない視線がゆっくりと俺を見る。
息をのんでリアを見つめていると、リアはゆるりと笑みをうかべた。
「お兄様……、おにぃさま……」
リアはまだ半分眠りの世界にいるのだろう、あまえたように俺に手をのばし、俺のシャツをぎゅっと握ってくる。
「リア……」
そんなリアがかわいくて、名前をよぶ。
無様に声はかすれ、微妙にうわずってしまったが、リアは気づいた様子もなく、「ふふ」と笑う。
「お会いしたいと、願っていました……」
小さな声でそう言うと、リアはまた目を閉じ、すぅっと寝入ってしまう。
……俺の妹が、かわいすぎてどうしよう。
落ち着け。
落ち着け、俺。
ぎゅうぎゅう抱きしめて、口づけをしたくてたまらなくなる衝動を、ぐっとこらえる。
そんなことをしたら、リアが起きてしまう。
さっきまで涙の痕が頬に残っていた、リア。
きっと疲れているんだろう彼女の眠りを妨げるなど、あってはならない。
さっきのように、どこか苦し気に眠っていた時ならいざ知らず、今のリアはとても幸せそうに眠っているのだから。
だがしかし、そっと触るだけなら……?
リアを起こさないように、そっと触れるだけ、なら……?
さっきだって、リアは頬に触れても、髪に触れても起きなかったし。
いいいいいいいや!だめだだめだ。
さきほどリアに触れた時は、リアを慈しむ気持ちでいっぱいだった。
泣いていた痕の残るリアを前にして、自分の欲など消えていた。
だが、今はだめだ。
かわいく俺に甘えてくるようなリアを前に、俺の欲はあおられすぎている。
すぅ、はぁと、深呼吸をする。
すこし頭が冷えたので、そっと、リアを起こさないように注意しながら、俺のシャツをつかんだままのリアの手を外す。
眠っているせいか、リアの手はなんの抵抗もなく、俺のシャツから指を外した。
自らそうしたのに、一抹の寂しさが胸によぎる。
そんな自分の感情を抑え込んで、ベッドから立ち上がる。
あぁ、リア。
俺がどんなに君が好きか、君は知らない。
リアに知られたら、怯えられそうなこの熱情を、いつか少しでも君に打ち明けられたら、と思う。
俺は壁にもたれて、リアの顔を見つめていた。
リアの姿をずっと見ていたいが、眠らなければ、明日の任務に差し障る。
本来ならベッドで眠って疲れをいやすべきだが、リアが寝台にいる現状では、まだ床で寝たほうがきちんと睡眠がとれそうだ。
今回はきちんと庁舎に泊めてもらっているが、ふだん軍務についている時は、時々床でゴロ寝をしたり、野宿をすることもある。
床で眠るのも、そこそこ慣れている。
俺は床に寝転がって、リアの規則正しい寝息を聞いていた。
あまい小さな音に眠れなくなるかと思ったが、やはり一日馬に乗っていた体は疲れていたのだろう、ほどなくして眠ってしまったようだ。
朝になると、リアの姿は消えていた。