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「はやく、こんなこと終わってくれればいいのですけれども」


ザッハマインで苦しんでいるだろう民と、彼らを救いにいったお父様やお兄様たちの安否を思う。

わたくしには、ここで祈ることしかできない。


暗い気持ちに陥りそうになって、ひとつ深呼吸する。

祈ることしかできないのであれば、祈ろう。

お父様やお兄様の無事と、民の平安を。

そして、……せめてささやかでも、自分にできることをしておこう。


「噂と言えば。王城ですこし耳にしたのですけれども、下町でわたくしと王子の噂が広まっているというのは、ほんとうでしょうか」


「えっ……!?あー、まぁ。ちらっとそんな話も聞いたかなー」


確認しておかねばと思っていたことを尋ねると、エミリオは気まずげにうなずいた。


なんてこと。

王子宮で小翼に聞いた話は、ほんとうだったのだ。


「ちなみに、王子とリーリア姉様の話ってほんとうなんですか?」


エミリオが、ためらいがちに尋ねる。

わたくしはすこし迷ったけれど、この新しい弟に真実を告げることにした。

どのみち、王城では噂は広まっている。

エミリオが登城するようになれば、隠せることではない。


「……そうね。シャナル王子はわたくしのことを慕ってくれているの。わたくしには、別に好きな人がいるのですけれども」


お兄様への気持ちも、もう隠さないって決めた。

お兄様がお帰りになって、お兄様に気持ちを告げるまでは相手の名前は言わないけれども、わたくしに想う人がいることは、もう誰にも隠さない。


エミリオは、困惑したように眉をひそめた。


「え?えーと、俺の覚え間違いじゃなければ、シャナル王子って、リーリア姉様がお仕えしている王子ですよね?8歳の」


「ええ、そうよ」


うなずくと、エミリオはますます困惑して、


「俺が下町できいた噂って、王子とリーリア姉様の恋愛話なんですけど。王子がリーリア姉様に求婚しているけど、リーリア姉様は魔力の違いを理由に断っているって」


「驚いたわ。噂って、そんなに正確に伝わっているものなのね」


予想外に正確に伝わっていた話に、わたくしはため息が出る。

話の出どころは王城で、下町にまで伝わるには多くの人の口を介しただろう。

なのに、そこまで正確な話が伝わっているとは、予想外だった。


わたくしが、王子の求婚をお断りしていることまで伝わっているなんて。

これは不敬にあたるのではないだろうか。


わたくしが考え込んでいると、エミリオもまたわたくしの言葉に首をひねっていた。


「え?8歳?リーリア姉様に求婚したのって、8歳の王子なんだ……?」


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