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For Alive  作者: M.O.I.F.
3/17

戦場への切符

どうも、Make Only Innocent Fantasyの三条 海斗です。

今回の第3話は二話構成にしようかなと思ったのですが、1話に納まったのでよかったです。

まだまだ稚拙なところがありますが、最後までおつきあいお願いします。

それではどうぞ!!

「……」

あれから寮に戻ってきた僕は、一人天井を見つめていた。

15、6……いや、それよりも小さい少年をこの手で殺めてしまったことが頭から離れない。

「くそっ!」

手を振り下ろし、ベッドを思い切りたたく。

ボスッという音が妙に大きく聞こえた。

CSに乗っているのが、無意識のうちに大人だけだと思い込んでいた。

普通は大人しか乗らないのだ。

それも軍人しか。

知らず知らずのうちに人が乗っていることを忘れていた。

思わないようにしていたのかもしれない。

これが殺し合いだということを、戦場だということを。

「はぁ……」

ため息をつく。

そのままボォーとしていると、チャイムがなった。

(誰だ? こんな日に……)

扉を開けると、そこにはアヤさんが立っていた。

「アヤさん!」

「来ちゃった。」

「どうしたの?」

「シャルロットさんがこの前の任務で疲れてるだろうからどこか行ったらどうだって。」

「そうなんだ……」

(心配をかけちゃったなぁ……)

「それじゃあ、どこか行こうか。ちょっと準備してくるから待っててくれる?」

「うん、わかった。」

「ごめんね。」

僕は扉を閉めると急いで準備をした。

時間は3分もかかってないだろう。

僕はアヤさんの元へと急いだ。

「ごめん、待たせたね。」

「ううん、そうでもないよ。」

「そういってくれるとうれしいよ。それで、どこに行こうか。」

「私ね、行きたいところがあるの。」

「行きたいところ?」

「うん! 実は……」

アヤさんが言った場所は意外な場所だった。


 * * * * * 


「わあ……」

目の前いっぱいに広がる水槽。

そこには色とりどりの魚が泳いでいた。

「それにしても水族館かぁ……。いつ以来だろう。」

「私は初めて!」

「えっ!? そうなの!?」

「何、その反応~!」

「いや、意外だったからさ。」

「意外って……君は私のことをどう思ってるの……」

半ばあきれた声を出すアヤさん。

「いや、アヤさんみんなと仲良くできるから友達とかとこういうところに来てそうだなって思っただけだよ。」

「友達か……ユウト君くらいだよ」

「えっ!?」

「なに? 友達じゃない?」

「いやいや、そう思ってくれてうれしいよ。ただの同僚くらいに思われてると思ってたから。」

実際、アヤさんはみんなと仲良くできる。

それは才能だと思うし、アヤさん自体が気の利くいい人だ。

(彼氏の一人や二人、いそうなものだけど……)

「う~ん。……そうだね、どちらかというと仲間っていう意識は強いかもね。同じチームだし、訓練時代からよく話してたから。」

「それは本当に感謝してるよ。」

「いいって。でも、それを友達というのなら、私はユウト君くらいしかいないよ。」

「喜んでいいのかな……。僕も友達、アヤさんしかいないし。」

「というわけで、こういうところは一人で来るようなところじゃないし、来たことがないんだよ。」

「なら、たっぷりとみていこうよ。ほら、行こう。」

「エスコート、お願いするよ。」

「お任せを。」

僕は手を出す。

アヤさんはその手を少し握った。

「ユウト君! はやく行こうよ!!」

「あ、ちょ……アヤさん! そんなに引っ張らないで~~~~~~」

僕はアヤさんに引っ張られるような形で連れていかれた。

(これじゃあ、どっちがエスコートしてるのかわからないよ……)

でも、楽しそうに笑うアヤさんの横顔に少しどきっとした。


 * * * * * 


しばらく歩いていると、とある立て看板が見えた。

そこにはポップな字体で『わくわく! イルカショー!』と書かれていた。

どうしてここだけ日本を感じるかはさておいて、イルカショーには心惹かれる。

日本人ならば誰だってそうだろう。

ひねくれた考え方もあれば、素直な考え方もある。

それは人それぞれだ。

イルカショーそのものに疑念を持つ人もいるくらいだ。

僕はイルカショーは見てて楽しいし、イルカが様々な芸を見せてくれるのは本当にすごいと思う。

水族館のイルカショーに野生のイルカを見に行っているわけではないので、個人的にはありだと思うのだが、これ自体の賛否はたぶんなくなることはないと思う。

「アヤさん。ここ、イルカショーをやってるんだって。」

「イルカショー?」

アヤさんはきょとんした表情で聞き返してきた。

「そう、イルカショー。日本じゃ結構有名でね、イルカが一緒に練習してきたトレーナーの人たちといろんな芸を見せてくれるんだ。」

「それって犬に芸を仕込むような感じ?」

「ありていに言えばそうだね。見たことないなら一度見てみる?」

「うん、そうしようかな。」

「それじゃあ、行こうよ。」

アヤさんと二人で野外にあるステージへと向かう。

大きな半円型のプールの奥にあるステージには清掃員がなにやら掃除をしていた。

客席を見ると人はちらほらと。

(海外の人には受け入れられにくいとは聞いていたけど……ここまでとは思ってなかったな。)

客席にいる人たちはイルカショーを見に来たという雰囲気でなく、ただ休憩をしに来たように見えた。

(まっ、ここまで席が空いていると好きな席に座りやすいからいいけど。)

「それじゃあ、こっちに。」

僕はアヤさんの手を引っ張って、ステージの中央あたりに座った。

「たぶん、ここが一番よく見えると思うよ。」

「へえ~。どんなのが見れるんだろう。」

「僕が覚えてる限りだと……」

「あ、待って! 言わないで!! 楽しみにしてるから。」

「わかった、それじゃあ何も言わないよ。」

「あ、でもすごいかすごくないかだけ……」

「僕が日本で見たイルカショーはすごかったよ。その時の感動といったらもう……」

「ますます楽しみになってきた。」

「あ、でもショーはそれぞれの水族館で違うから、たまたま僕が見た水族館のがすごかっただけかもしれないよ。」

「でも、楽しみだよ。初めてのことだし。」

「そうだね。僕も日本以外で見るのは初めてだよ。」

そもそもあまり海外ではイルカショーはあまりやっていないらしい。

動物愛護がどうとか、同じ哺乳類がどうとか、いろいろな意見があるからと聞いているが、実際のところはどうなのかわからない。

やっても反対意見が多かったらすぐにやめる羽目になってしまうのならやらない方がましということもある……ということだろう。

そうこうしているうちにイルカショーの開始時刻になり、会場にポップな音楽が流れ始めた。

「はーい、みなさーん、お元気ですかー?」

明るい口調のお姉さんの声に反応する人は誰もいなかった。

いや、一人いた。

「はーい!!」

アヤさんだった。

子供のような純粋な声で返事をしていた。

反応が返ってきたのが嬉しかったのか、お姉さんはすこし嬉しそうな顔をした。

「それではこれからパフォーマンスをしてくれるイルカ達のご紹介でーす!!」

その声でイルカ達がジャンプを披露した。

「わぁ……」

感嘆とした声をあげるアヤさん。

そこからショーは始まり、イルカ達がジャンプをしたり、宙返りをしたり、さまざまな芸を見せてくれた。

僕らは時間を忘れて、魅入っていた。

「以上で、イルカショーを終わらせていただきます! ありがとうございました!!」

イルカがヒレを動かし、バイバイをする。

その仕草はやっぱり可愛かった。

「イルカショー楽しかったぁ。」

「本当? よかったよ。」

「みんな見ないなんてもったいないなぁ。」

「色々あるんだとおもうよ。」

こればかりはしょうがない。

「そうなのかな。まっ、人それぞれか。」

「そうそう。さ、続きを見に行こうよ。」

僕はそう促し、水族館の続きを見に行くことにした。

奥の方には先ほどいろんな芸を見せてくれたイルカの展示もある。

イルカを間近で見ることにすこし心躍らせながら、僕は歩を進めた。


 * * * * * 


「楽しかったよ。今日はありがとう。」

「ううん、お礼ならシャルロットさんに行ってよ。ユウト君を誘うように言ったのシャルロットさんだし。」

「でも、本当によかったよ。気が楽になった。明日、シャルロットさんにお礼を言うよ。」

「うん、そうしなよ。それじゃあ、帰ろっ。」

僕らは並んで歩く。

今日という日が終われば、また明日から仕事が始まる。

そうしたら、またアヤさんとこうして一緒に遊びに行っているのだろうか。

そんなことを考えていたら、胸のもやもやは消えていた。

(いつまでもくよくよしてちゃいけないな。)

夕暮れを背にそう決意をした。


 * * * * * 


「さて、次の任務だ。」

「割と早いですね。」

「現状が現状だからな。」

その一言で納得した。

スポーツじゃなくて武器を使った代理戦争。

PMCは仕事には困らないが、その反面、死亡率はぐんと上がった。

それに伴い、給料も上がったという面ではコントラクターには悪い面ばかりじゃないということだ。

「それで、次の任務は何なんですか?」

アヤさんがそうたずねる。

「次の任務は、中東アジアに展開された武装組織をたたく。この組織には普通の武装組織よりもCSも武装も整っている。相手を侮ると痛い目見るぞ。」

「なにか後ろ盾がいるとみていいだろう。そいつらが参入してくる可能性はあると思うか?」

シャルロットさんはフューラー先輩にそうたずねる。

「その可能性は十分に考えられる。……それもずいぶんと大きな組織だ。」

「それを僕らだけで戦うんですか?」

「いや、今回の作戦は多国籍軍と共同で行う。共同って言っても、俺たちは独自に動くことにはなる。それでも多国籍軍から多くの情報、物資を得ることができる。」

「でも、独自ってことは前線で戦うわけじゃないんですよね?」

「ああ。それじゃあ本題に入っていくぞ。」

フューラー先輩の後ろにあるスクリーンに地図が映し出される。

「多国籍軍の動きは南から北上し、武装組織と前線で正面衝突してもらう。その隙に俺たちは東から迂回し、武装組織の本部をたたく。西からは多国籍軍が何小隊か来る手はずになっている。」

「挟撃するってわけですね。」

「ああ、その通りだ。時間との勝負になる。各自ルートは頭に入れておけ。質問はあるか?」

「本拠地を防衛している敵の勢力はどれくらいなんでしょうか?」

「本拠地は機関銃を装備した防壁に囲まれている。あくまでも予想でしかないが、本拠地にはCSは配備されていないとみていいだろう。ほかにあるか?」

手は上がらなかった。

「よし。いまから30分後に自分の機体に乗って待機しておけ。それじゃあ、解散だ。」

そういうと、スクリーンが消える。

(30分後だと急がなくちゃいけないな。っと、その前に……)

「シャルロットさん。」

「どうした?」

「昨日は気を使わせちゃったみたいで……すみません、ありがとうございます。」

「何、気にするな。……さあ、急ぐぞ。」

「はい!」

僕らはなかば駆け足でCSの格納庫へとむかった。


 * * * * * 


『全員待機しているな? それじゃあ、輸送機まで行ってくれ。』

「了解。」

全員が、そう返事をすると、一人ずつ輸送機へと向かった。

ロックをすると、CSから降りる。

そのまま前回の要領でシートまで向かった。

「ふぅ……」

思わずため息が出る。

自分でも緊張しているのがわかるほど体はこわばり、心臓はバクバク言っていた。

(戦争しに行くんだ。)

そう思うと、なぜか緊張してしまう。

死ぬかもしれない。

それが頭から消えてくれない。

まだ輸送機は飛び立ってすらいないのに、ここまで緊張するのは早すぎるかもしれない。

ふと、手を握られた。

横を見ると、アヤさんが僕の手を握っていた。

「大丈夫、私が君を守るよ。」

「……ありがとう。それじゃあ、僕も君を守ろう。」

「ありがとう。落ち着いた?」

そういえば、少し緊張が解けているような気がした。

「うん、大丈夫。本当にごめんね。」

「いいよ。」

「ん、ん!!」

ふたりの咳払いが聞こえた。

「いちゃつくのはいい加減にした方がいいぞ」

「だから、いちゃついていませんって。」

「手を握って見つめあって……どこがいちゃついていないというんだ?」

シャルロットさんの冷たい声。

ふたりはジトーっとした目でこちらを見ていた。

「まぁ、ユウトに何かあればアヤを行かせればいいということが分かったな。」

「ああ。昨日も二人で仲良くデートしたそうだからな。」

「それはシャルロットさんの発案でしょう!?」

「一緒に遊びに行けとは言ったが、まさか水族館へデートしに行けとは言っていない。」

しれっと答えるシャルロットさん。

もう逃げ場はなかった。

「はぁ……」

輸送機の中はすでに戦場に行く緊迫感は微塵もなかった。


 * * * * * 


「今回の指揮を担当する多国籍軍総司令官のマックカースだ。」

輸送機を降りて僕らは総司令官の前に向かった。

代表としてフューラー先輩が

「ラスト・フォート社のアルフォンス・フューラーです。この度はよろしくお願いします・。」

「こちらこそ。そちらの評判は聞いている。そちらの活躍に期待している。」

「それで、要求をしていた武装は準備していただけたのでしょうか。」

「長距離用の追加バッテリーと、強襲用ミサイルランチャー、ライフルの弾丸は用意した。ほかに必要なものはあるか?」

「いえ、十分です。」

「作戦開始時刻は一九:〇〇だ。それまでに武装を受け取り、装備しておいてくれ。そのほかのことはそちらに任せる。」

「了解しました。」

フューラー先輩はそう返事をすると、僕らに目で合図をした。

それを確認すると僕らは自分たちのCSの元へと向かった。

「長距離移動用のバッテリーに、強襲用ロケットランチャー……すごい装備ですね。これだと機動性はかなり下がっちゃうんじゃないですか?」

「俺たちの任務は本拠地の破壊だ。機動性を確保しておく必要はない。それに長距離移動用バッテリーは着脱できる。CSとの戦闘になれば外せばいいだろう。」

「確かに……。」

今のところ、本拠地にはCSが配備されていないということらしい。

機動性は確かに必要ないのかもしれない。

「さあ、装備をとりに行くぞ。」


 * * * * * 


『これより作戦を開始する。各自、持ち場につけ!』

マックカーニ司令の通信が全機に響き渡る。

目の前のディスプレイの右上隅に作戦開始までのカウントダウンが表示されていた。

(あと、30秒……!)

表示されている時間は刻々と減っていく。

それに伴い、周りに緊迫した空気が張りつめる。

コックピット越しにさえ伝わってくる緊張。

(これが……戦場……!!)

10……9……8……。

CSの体勢を整える。

暗い森の中、CSのアイが煌々と輝いた。

3……2……1……0!

『作戦開始!!』

その声と当時に走り出す。

ガシンガシンという音を立てて小高い丘や小さな森に隠れながら東側を迂回し、敵の本拠地へと向かう。

騎兵は今、戦場に向かって動きだした。


 * * * * * 


『どうして、こんなところにやつが……! う、うわあああああああああああああ!!』

一機のCSが爆発した。

それは多国籍軍のCSだった。

『カール!! くそっ! 引退したと聞いていたが、まさかな……』

目の前に立つ一機のCS。

数では多国籍軍が有利。

だが、CSに乗っている兵士は理解していた。

ここにいる全員が力を合わせて挑んでもやつには勝てないことを。

『ジョン! やつは一体何者なんだ!?』

『やつはPMC最強のコントラクター……』

戦争が始まると同時に設立されたPMC、サタン・クロス社。

いち早くCSを導入し、多くの実績を上げてきたPMCで、多くのコントラクターが務めている。

そのサタン・クロス社の創設者でありながらCSを乗りこなし、その名を世界に知らしめたコントラクターがいる。

それはまだ試験段階であったCSの機動性を遥かに超え、その速さから彼はいつしかこう呼ばれるようになった。

『“魔王十字(サタンクロス)のヴィント”!!』

『なんだって!?』

『くそっ! 全員、撤退しろ!! やつに挑もうとするな!!』

ジョンと呼ばれた隊長は急いで、そう指示を出す。

その声に従い、何機か撤退を始めた。

『……哀れだな。』

多国籍軍のものではない、通信回線から流れる声。

貫録を感じさせるその声にその場にいた全員が威圧された。

逃げられない。

いつしかそれは当たり前のように頭の中にあった。

ここで戦って奴を撃ち取るか、奴に撃ち取られるか。

『3番機、4番機、本部に戻れ! あとのものは俺と一緒にやつを討つ!!』

『ですが隊長!!』

『いいからいけっ!! 早くこいつが来ていることを知らせるんだ!!』

『……ご武運を!!』

二機は背中を向けて走り去る。

ヴィントはあえてその二機を追いはしなかった。

『……なるほど。軍人にしておくには惜しい男だ。』

『こちらの無線回線に割り込んできているのか……! どうしてここにいる!!』

『仕事以外にあるまい。』

『仕事だと……! 依頼主は……まさかっ!?』

『こちらにも守秘義務があるからな。お前たちを黙らせていただく。』

『っ! 各員、放てっ!!』

一斉にライフルが火を放つ。

弾丸は地面を削り、土埃を巻き上げる。

『やったのか……?』

仲間の一人がつぶやく。

『いや、違う……』

ジョンはすぐさまそれを否定した。

『……! 襲撃に備えろ!』

土煙の向こうに見えた機影。

それは紛れもなくヴィントの機体だった。

『効いていないのか……!?』

それを裏付けるようにヴィントの機体は傷一つついていなかった。

『くそっ! 銃がきかないなら……!!』

『まてっ!』

仲間の一機が静止も聞かず、ナイフを片手に突っ込んでいく。

『たわけよ。自ら死にに来るとは。』

『くらええ!!』

ナイフを突き出す。

たが、ヴィントはその攻撃を軽々と避けた。

『望み通り殺してやろう。』

『やめろっ!!』

ヴィントは手に持ったライフルをコックピットの近くに当てると、トリガーを引いた。

何発か撃った後、ヴィントはそのCSを蹴り飛ばした。

直後、起きる爆発。

助かる見込みはなかった。

『くそっ! ん……?』

その時、ジョンは違和感に気付いた。

(どうして、レーダーに異常が起きているんだ?)

強力な磁場でない限り、レーダーに異常が起きるなんて、そうあることではなかった。

『まさかっ!?』

『ほう、感づいたか。だが、それも無駄だ。』

『なっ!?』

モニターから消えるヴィントの機体。

右にも左にも映ってはいなかった。

『これが、風の由来か!』

『うわぁああああああ!!』

『リッキー!!』

ジョンの仲間が一人ずつ断末魔を上げて、消えていく。

気付いた時にはもう、ジョン一人だけになっていた。

『くそっ……! どこにいる……!?』

『ここだ。』

『なにっ!? 後ろだと!?』

急いで向きを反転し、ヴィントに向けてライフルを構える。

だが、ヴィントも同じようにライフルを構えていた。

確実にこちらの負けだった。

『くっ……!』

『さらばだ。』

怪しく光るCSの目。

(ごめん……ヘレン……シャーリー。父さん、帰れなさそうだ……。)

ジョンが最後に思い浮かべたのは妻と娘の顔だった。


 * * * * * 


(ん? 通信?)

突然入った通信の合図にすこし疑問に思った。

しかも、それはこちらにだけ向けた通信だった。

『西方の別働隊が全滅した! “魔王十字のヴィント”が来ているらしい! 注意してくれ!!』

「“魔王十字のヴィント”だって!?」

『どういうことだ!? まさか、後ろ盾していたのはサタン・クロス社か!?』

『いや、それはない。第一、奴らにはPMC……ましてや“魔王十字のヴィント”なんて大物を雇う金はない!』

「それなら、どうして……!」

『わからない! だが、奴が来た以上こちらも注意して進むぞ!』

「了解!」

スピードを上げて走っていく。

西の別働隊からこちらまで距離はかなりある。

その間にある前線を超えてここまで来るにはかなりの時間がかかるだろう。

それでも僕らは急いでいた。

もしかしたら追いつかれるかもしれない。

その不安が僕らを急かす。

『見えたぞ!』

小高い丘の向こう。

そこに敵の本拠地はあった。

『急ぐぞ! やつが来る前に攻撃するんだ!!』

『ユウト! アヤ! ランチャーを用意しておけ!!』

「了解!」

『了解!』

『シャルロットはヴィントの警戒を!』

『了解した!』

『さっさと蹴りをつけるぞ!!』

僕はミサイルランチャーを構える。

幸い、まだ気づかれていないようだ。

目の前のモニターは狙撃モードに切り替わり、敵の本拠地にズームしていく。

ロックマーカーが敵の本拠地をとらえた。

「ロックオン!」

『ロックオン!』

『撃てっ!!』

僕はトリガーを引く。

すると、ミサイルランチャーからミサイルが一発飛んでいった。

隣からアヤさんのミサイルランチャーからも放たれたミサイルと一緒に本拠地に飛んでいく。

敵の本拠地に入った瞬間、ミサイルは爆発した。

だが、それは空中で突如として爆発をした。

『何っ!?』

それはまるで誰かに狙撃されたかのようにもみえ、なにか見えないものにぶつかったようにも見えた。

『どういうことだ!?』

『……!? 外壁の下に!!』

『なんだと……!』

敵の本拠地の外壁の下に一機のCS。

肩に海賊船の旗のようなマークを付けたその機体は誰もが知っていた。

「“魔王十字のヴィント”……!!」

『こちらの行動が筒抜けになっているのかっ!? 一体、誰が……!』

『今はそんなことを言っている場合じゃない! 奴をどうにかして、ミサイルを本拠地に打ち込むんだ!!』

『どうやって、奴の注意をひきつけるんですか!?』

「僕とアヤさんを別々に行動させて、片方を囮に使うのは……?」

『今は、それが有効か……。囮は俺とユウトでやる!』

『本拠地破壊はこちらに任せろ!』

『行くぞ、ユウト!』

「了解!」

『ユウト君! 死なないでね!!』

「もちろん!」

僕とフューラー先輩はわざとヴィントに見せつけるように本拠地に近づいていく。

ヴィントはこちらに狙いをつけたようだった。

『来るぞっ!』

ヴィントはライフルを構えるとためらいもなく、こちらに発砲した。

「っ!」

急いで、うしろに飛び退く。

そのまま円を描くように走っていった。

『くらえっ!!』

フューラー先輩がライフルをヴィントに向けて放った。

(ん……?)

その時、レーダーに走った波。

それは電磁波の異常だった。

(こんな場所で、磁場の干渉……?)

その直後だった。

「なっ……!?」

『そんな馬鹿な……!?』

目の前で起きていることが信じられなかった。

弾丸がヴィントを避けるように進んでいき、地面を、壁を貫いていく。

『そんな馬鹿な!!』

「一体どうして……!?」

可能性のあることを考えてみる。

だけど、すぐに答えは出なかった。

そんなことを考えていると不意の通信に驚いた。

その声はフューラー先輩でもシャルロットさんでも、アヤさんでも、ましてやマックカーニ総司令官の声でもなかった。

『ラスト・フォート社のコントラクターに告ぐ。今すぐ作戦を中止しろ。さもなくばお前たちを全滅させることになる。』

『この声は……!!』

『間違いない。やつの声だ……』

「ということは!!」

『“魔王十字のヴィント”!!』

史上最強のコントラクターの声は聴いたこともないほど冷たく、CSから異様なまでのさっきが感じられた。

(こんな敵に……僕らは勝てるのか……?)

『お前に言われる筋合いはない! 俺たちは依頼を完遂させて見せる!!』

『ふん、戯言を。』

『私たちからすれば、どうしてお前がここにいるのか疑問だ。……依頼主はこの武装組織の後ろ盾か?』

『私にも守秘義務というものがある。返答は控えさせていただこう。』

『』

アヤさんと一緒に反対側にいたシャルロットさんもヴィントに対して銃を向けた。

『何をやっても無駄なことよ。』

『無駄かどうかはやってみなくちゃわからないさ。』

『無駄だ。お前たちは私に1発当てることができない。』

『当ててやる。』

一機のCSに向けて銃を向ける2機のCS。

『いいだろう。ならば相手になってやろう。……来いっ!!』

ヴィントが銃を構える。

すかさず、フューラー先輩とシャルロットさんはライフルのトリガーを引いた。

勢いよく発射される何十何百発という弾丸。

だが、それは全部ヴィントを避けるように飛んでいく。

(まただ……。また磁場が干渉してる……。)

理由はわからない。

(ん? ……待てよ。どうしてヴィントは銃を撃たないんだ?)

今も続いている磁場の干渉。

弾丸はヴィントを避けて進んでいく。

防御は完璧。

ならば銃を放てば自分は無傷で相手にダメージを与えられるのだ。

だが、ヴィントは一向に撃とうとしなかった。

「……まさかっ!!」

(この磁場はあのCSから発生しているのか!? だが、そんなバッテリーあのCSのどこに!?)

機動力を優先した作りになっているのだろうか、ヴィントのCSは一般的に普及しているCSよりも一回りスリムだ。

確かに機動力は上がるかもしれないが、その反面、運用性は著しく低下する。

バッテリーの容量も限られてくるし、外付けの装備だって一般の装備の流用は厳しいだろう。

それこそ、ライフルやナイフ、ミサイルランチャーなど武装しか言い切れるものはない。

そんなヴィントのCSにこれほどまでに強力な磁場を発生させる武装やバッテリーがあるとは思えなかった。

(外部給電? いや、ケーブルは見当たらない……。だけど、これで僕らの勝ちだ!)

「フューラー先輩! シャルロットさん! ヴィントに向けて弾幕を張ってください!」

『何か秘策があるのか?』

「できるかどうかわかりません。だけど、試してみようと思います。」

『やってみろ、ユウト。』

『アルフォンス! 本気か?』

『ああ。やつは強敵だ。勝てる可能性がわずかにでもあるのなら俺はそれにかける。』

『なるほど……。わかった。私もかけてみよう。』

「……! ありがとうございます!」

『だが、もって5分だ。それまでに決着を付けて来い!』

「了解!!」

『行くぞ! シャルロット!!』

『任せろ!!』

勢いよく弾丸を発射するライフル。

弾丸は直前でヴィントを避ける。

僕はそれを確認すると、アヤさんに対して通信をした。

「アヤさん! こっちに!!」

『わかった!』

そう返事をすると、アヤさんはこちらに走ってくる。

『でも、一体何をするの?』

「今はとにかくこっちに!!」

僕はアヤさんを先導して、外壁に向かう。

『小賢しい真似をする!』

ヴィントはこちらにその頭を向けた。

『おっと! させないぜ!!』

『行くのなら私たちが相手になろう。』

僕はそのまま進んでいく。

そして外壁の中に入ると、一直線に本拠地を目指した。

『わかった! そういうことね!』

「ああ。僕とアヤさんの今の装備ならできる!」

(タイムリミットまであと3分……!)

「……っ!!」

ダダダッと目の前に降り注ぐ鉄の雨。

それは外壁の中に設置された機銃からだった。

『ユウト君は先に! 私が援護する!』

「わかった!」

アヤさんが飛び出し、ミサイルランチャーを放つ。

ミサイルが爆発し、機銃がやむ。

僕はその隙を狙って本拠地へと進んだ。

(見えた……! タイムリミットは……!!)

そびえたつ敵の本拠地。

僕はミサイルランチャーを構える。

(あと1分……!!)

ヴィントのCSの影響があるのかなかなかロックしない。

(くそっ……!)

焦りがだんだん募っていく。

『ユウト! まだか!?』

そこでロックオンマーカーが赤く光る!

「ロックオン!」

『行け! ユウト!!』

『遠慮はいらん! ぶちかませ!!』

『ユウト君!!』

「発射!!」

トリガーを思い切り引く。

ミサイルはまっすぐ本拠地へと向かっていく。

「いっけええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

ミサイルは敵の本拠地に着弾し、爆発した。

爆炎が立ち上り、大きながれきが落ちていく。

もう一発、また一発と放ち、全弾使い切ったところで本拠地は完全に崩壊した。

「こちらユウト! 敵の本拠地の破壊完了!!」

『よくやった!!』


 * * * * * 


『これで、戦いは多国籍軍の勝利だ!』

『小賢しい真似をする……! だが、私も馬鹿ではない。』

『なっ!?』

フューラー、そしてシャルロットのディスプレイからヴィントの姿が消える。

『ここはひかせてもらう。だが、次にあった時はお前たち全員の命をもらうぞ。』

ヴィントのCSが動いているであろう音は聞こえるが、ヴィントの機体は全く見えない。

音はもう聞こえなくなっていた。

『行ったのか……?』

『ああ、だろうな。……帰ってきたようだぞ、アルフォンス。』

『ああ。よくやってくれたよ。』

フューラーとシャルロットは外壁の向こうから歩いてくるまだ未熟な兵士を見つめていた。

だが、フューラーの頭の中にはある疑念が浮かんでいた。

それはあってはならない疑念。

それしか考えられないという確信。

フューラーがその答えを知る時期は近い。

フューラーの頭の中に浮かんだとある疑念。

それは信じがたいものだった。

そして、ユウトは……。

次回 第四話 「真実の代償」

青年は生きる意味を知る―――。

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