銃を放つ者
どうもMake Only Innocent Fantasyの三条 海斗です。
いや、EXITISと感覚が違って戸惑っています。
まだまだ稚拙な部分もありますが、最後までおつきあいください。
それではどうぞ!!
「……よし。」
荷解きを終え、ひと段落つく。
今日からここが僕の部屋だ。
訓練期間中は相部屋だったため、一人部屋というのが少しうれしく感じるとともに、どこか一抹の寂しさを感じる。
それだけ訓練が長かったということだろう。
僕は大きく伸びをすると、ソファに寝転がった。
(確か今日は一日休みだよな……。)
今日は入社式以外は何もなかったはずだ。
(どうしようかな……。)
訓練はほぼ毎日あったので、こうまとまった休みの時に何をしていいかわからない。
高校の時は友達と遊んだり、映画を見たりしていたりしていたのだが、あいにく高校時代の友人もいなければ、仲の良い同僚はアヤさんくらいしかいない。
だが、彼女は女子寮だ。
行っても中に入ることはできない。
貴重な休みを無駄に過ごしそうな予感がする。
「う゛あ゛~」
ソファにうつぶせになり、うめき声をあげる。
そんな事をしていると、突然チャイムが鳴り響いた。
(だれだろう……?)
僕は玄関の扉を開ける。
そこにいたのは……
「やっほ~」
「アヤさん!?」
「この後、何か用事ある?」
「特にはないけど……」
「それじゃあ、出かけようよ。今暇しちゃっててさ。」
「僕もなんだ。すぐに準備するよ。」
「それじゃあ、下で待ってるね。」
「わかった。」
僕は扉を閉めると急いで準備をした。
男の準備なんて着替えて荷物を持つくらいだ。
もう着替え終わっているため、あとは財布と寝癖とかないか確認するだけだ。
(うん、大丈夫だ。)
部屋を出て、一階のロビーに向かう。
アヤさんは管理人さんと仲良く話していた。
「お待たせ。」
「あ、ユウト君。意外と早かったね。」
「男の準備なんてそんなにかかるものじゃないから。」
「言われてみればそうだね。それじゃ、行こっ!」
「あっ! ちょっと待ってよ、アヤさん!!」
「はやくはやく~!」
アヤさんに置き去りにされる僕。
結局、その日は一日、アヤさんに振り回されていた。
「今日はありがとう。」
「僕も暇だったから誘ってくれてうれしかったよ。」
「ホント? 楽しんでくれた?」
アヤさんは前のめりになって聞いてくる。
楽しかったか、楽しくなかったかといえば……
「とても楽しかったよ。また一緒に出かけよう。」
「うん、もちろん。それじゃあ、戻ろうか。」
アヤさんと並んで帰路につく。
アヤさんといると気が楽だ。
アヤさんにすごく親しみやすい雰囲気があるのもあるだろう。
(ずっとこの時間が続けばいいのになぁ……)
そう思わずにはいられない、そんな時間だった。
* * * * *
「さて、本日から勤務してもらうことになるんだが……俺たちの仕事は他の会社と違って基本的には軍事行動に参加する。ありていに言えば護衛だったり、軍に参加したりするのが大半だな。まぁ運搬とか、模擬訓練の相手とかそういう戦闘とはあまり関係のない仕事もある。大体、入社1年目のメンバーがいるチームはそっちの方が主となる。……ここまで大丈夫か?」
アヤさんと僕はうなずく。
そこまでは訓練の時に聞かされていた。
「したがって、慣例で行くのなら初任務は運搬とかなんだが……」
フューラー先輩は面倒臭そうに頭を掻いた。
「どういうわけか、今回の任務は護衛任務だ。それも、軍事兵器運搬する部隊の……な。」
シャルロットさんがすかさず、言葉をつなぐ。
「どういうことですか?」
「わからん。ただ、今日渡された仕事が護衛任務ってことだ。しかも、森林地帯を通るんだが、この森林地帯は武装組織が潜んでいるという情報もある。初任務にしてはいきなりすぎるとは思うが、何事も経験だ。各自それぞれに配備されたCSを一二:〇〇までに準備しておけ。」
「了解!」
全員が一斉に返事をし、部屋を飛び出していく。
(CSを準備しておけ……か。さすがに大規模な戦闘にはならないとは思うけど……)
用心に越したことはない。
計器のチェックは念入りにしておいた方がいいだろう。
僕は訓練の時よりもチェックを念入りに行った。
* * * * *
『全員搭乗しているな? 滑走路に輸送機があるからまずはそこまで行ってくれ。新人二人はちゃんとハンガーにロックしろよ?』
『わかってますよ!』
『それじゃあ、ユウト。お前から先に行ってくれ。』
「了解。」
僕はCSを動かす。
一歩前進すると、振動が機械の足から伝わってくる。
一歩、また一歩と前進する。
ガシンガシンと音を立てて、進んでいくCS。
目的の輸送機まではそれほど時間はかからなかった。
「ロック完了しました。」
『了解した。それじゃあアヤ。』
『はい! それじゃあ行きます。』
さすがのアヤさんもいつもの調子ではなくまじめな様子を見せていた。
それから順にシャルロットさん、フューラー先輩と輸送機に乗り込んだ。
『それじゃあ、全員降りて輸送船の搭乗席に行くぞ。』
パシュンというような音を立ててフューラー先輩のCSのハッチが開かれる。
それに続いてアヤさん、シャルロットさんもCSから降りた。
僕もCSの扉を開けてみんなの後を追っていった。
フューラー先輩はすでに準備を進めていてアヤさんたちはその前に座っていた。
僕はアヤさんの隣に座ると、シートベルトを締めた。
「よし、それじゃあ今回の作戦を説明するぞ。」
そういうと、フューラー先輩の後ろにあった壁に地図が現れた。
どうやらディスプレイになっているようだ。
「降下ポイントはここ、森林地帯入口3km前だ。ここから荷が積まれているトラックを輸送しながら進み、森林地帯の奥にある基地に輸送するまでが今回の任務だ。場所が場所だからな。航空機での輸送ができない。敵の攻撃に注意しつつ任務に当たってくれ。質問はあるか?」
手は上がらなかった。
「それじゃあトラックの右前に俺、左前にアヤ、右後ろにユウト、左後ろにシャルロットという配置で行く。それじゃあ、出発するぞ。」
そういうとフューラー先輩は席に着き、シートベルトをした。
もうディスプレイは消えている。
『それでは出発します。』
機内のアナウンスが流れ、輸送機はゆっくりと戦場に向けて動き始めた。
* * * * *
PMC本社を飛んでから2時間。
僕たちは何事もなく目的の降下ポイントについていた。
CSを動かし、トラックの元へ。
そこで目に入ったのは衝撃的なものだった。
(ミサイルだって……!? こんなもの、こんな場所で撃ったら……!!)
それこそ、周りに甚大な被害を与えるだろう。
一体、どうしてそんなものをこんな場所に配備しなくてはいけないのか。
しかも、大きさはCSのライフルほどはあるだろうか。
明らかに長距離用ではない。
せいぜい、対空ミサイルと言ったところ。
だが、そもそもここは空爆禁止区域に設定されている。
対空ミサイルなど必要はないのだ。
では、どうして配備される必要のない場所に、配備する必要のないミサイルが置かれているのか。
(もしかすると……これはミサイルじゃないのか?)
その可能性は否定できない。
だとしたら、これは一体……。
『気になるのはわかるが、余計な詮索は後だ。今は任務に集中しろ。』
俺の様子に気づいたのか、シャルロットさんが通信機越しにそう声をかけてきた。
(声に出ちゃってたかなぁ……気を付けよう。)
『よし、それじゃあ出発するぞ。全員、準備はいいな?』
『こちら、シャルロット。問題ない。』
『こちらアヤ。大丈夫です。』
「こちらユウト。いつでも行けます。」
『よし、それじゃあ行くぞ!』
「了解!!」
前方を警備する二人が先に歩き、その後ろをトラックがついていく。
僕たちはある程度の距離をとってその後ろについていった。
歩くペースは一定に、レーダーに集中する。
熱源の反応はないが、長距離からの狙撃に注意しなければならない。
目の前に広がるモニターも注視する。
広がる景色はあまり変わらない森ばっかりだった。
木々の間に作られた一本の道。
包囲するには格好の場所だ。
『気を張りすぎるなよ。』
「は、はい!」
『はははっ! だから、そう気を張るなって言っているんだ。』
シャルロットさんの笑い声なんて初めて聞いたような気がする。
「……気を付けます。」
『適度に、な。』
ここにきてシャルロットさんに二回も心配されるなんて思ってもなかった。
やっぱりはたから見ても緊張しているのがまるわかりなのだろうか。
(適度に……か。)
僕は、レーダーから目を離して、前方のメインモニターだけ見るようにした。
といっても凝視しているわけじゃなく、操作に必要な程度だ。
(まだ先は長いもんな。こんなところで疲れていざというときに全力出せるようにしておかないとな……。)
僕は改めて気合いを入れなおした。
* * * * *
しばらく経った頃。
大体、中ごろまでついたところだろう。
『全員、止まれ!』
フューラー先輩の声がコックピットの中に響いた。
『どうした?』
『そうですよ、いきなり大声なんかあげて。』
『何かいる……』
「……!?」
言葉を聞いた途端、全員がライフルを構えた。
『……』
緊迫した空気がコックピット越しに伝わってくる。
一瞬、だけどとてつもなく長く感じるその時間。
それを破ったのはレーダーに映ったたくさんの反応だった。
『これは……!』
『熱源反応!?』
『そんな……!』
「敵襲……だって!?」
『総員、戦闘準備! くそっ! どうしてここまで接近を許した!?』
『考えるのは後だ、アルフォンス! いまは目の前の敵をたたくのが先だ!!』
『アヤ! ユウト! 行けるか!!』
『やってみます!』
「後方は任せてください!」
『シャルロット!』
『前線は任せろ!』
そういうとシャルロットさんは森の中に入っていった。
『アヤとユウトはそのままトラックの援護! いそいでこの場から離脱しろ!!』
「了解!」
アヤさんと僕の声が同時に響く。
『いけっ!』
トラックは思い切りスピードを上げて進んでいく。
僕らもなかば駆け足気味にそのトラックの後を追っていく。
あと半分。
たどり着く先ははるか先だった。
そこまで無事に護衛できるかどうか……。
そんな時だった。
『後方に熱源反応!』
「僕が食い止める! アヤさんは先に!」
『でも!』
「いいから!!」
『……わかった! かならず追いついてよ!』
「もちろん!」
アヤさんとトラックはそのまま走り去る。
僕は向きを急いで振り返るとそのまま進んでいった。
近づいて闘うよりか時間は稼げるだろう。
僕はライフルを構えながら走り続けた。
* * * * *
「くそっ! 数が多いっ!」
「そんなことを言っていてもどうにもならないぞ! 今は多くの敵を倒すんだ!!」
「わかっているさ!!」
アサルトライフルの銃声が響き渡る。
それは木々を貫き、粉砕し、なおも放たれ続ける。
「森での戦い方になれていやがる……!」
「ここら一帯に拠点を置いている武装組織とみて間違いないだろう。」
「やはり、狙いは……!」
「食い止めるぞ! “あれ”がこいつらの手に渡るわけには行かない!」
「おう!」
フューラーの駆るCSは武装組織のCSを追い詰めていく。
「そこだっ!!」
ダダダッと連射された弾丸はCSを一機貫いた。
幸いにも爆発はしなかったが、この場所で爆発でもされたらとフューラーは自身の行動にぞっとした。
「シャルロット! 森林の中で爆発させるなよ!!」
「わかっている!!」
そう答えたシャルロットはとてつもない速さで相手に詰め寄っていく。
相手もアサルトライフルを放ち、牽制するが、シャルロットの前には意味を為さなかった。
「終わりだぁぁぁぁぁぁ!!」
シャルロットは腰に備え付けられているナイフを取り出すと、相手のCSのコックピットめがけて突き刺した。
そのまま、がくんと倒れるCS。
シャルロットはゆっくりと、そのCSを横たわせると次の相手を探した。
「どこにいる……?」
「シャルロット!」
「どうした?」
フューラーがすこし慌てたような声を出す。
「何機かユウトたちの後を追ったみたいだ! お前はすぐに追いかけてくれ!」
「わかった。気を付けろよ!!」
そういうとシャルロットは一本道を駆けていく。
「さあて、俺が相手になるぞ……!」
フューラーは木々の間を縫って一本道に戻る。
彼を追ってきた数は2。
「行くぞっ!」
ライフルを捨て、腰に携えたナイフを取り出すフューラー。
敵はフューラーに対して弾幕を張ろうと2機が横に並んでライフルを構えた。
「甘いんだよ!」
フューラーはCSを駆り、横に跳ぶ。
そのまま森林の中に入っていく。
フューラーの狙いはライフルの無効化。
フューラーが駆るCSの盾になるかのように木々が弾道の前に立ちはだかる。
一瞬の隙をついて、フューラーは一機のCSにとびかかった。
そのCSを立てにするように後ろに降り立つと、ナイフをコックピットに突き刺した。
コックピットの乗り組み口にはわずかな隙間があり、そこにナイフを突き立てると一直線にパイロットの元に行くという寸法である。
その証拠にナイフを引き抜くと、すこし赤いものがついていた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
敵のCSを立てに突き進む。
敵はライフルを撃ちつづけるが、その弾丸はフューラーには当たらない。
「止めだっ!!」
動かなくなったCSを投げつけると、フューラーはその二機に向かって跳び蹴りをした。
トラックで運べる重さ、約5トンという重さの巨大な機械人形の蹴り。
とてつもない衝撃がCSコックピットの内部に襲い掛かるだろう。
運が悪ければ脳挫傷で死んでしまうかもしれない。
だが、戦場ではそんなことを考えてはいけない。
それは戦場で、銃を放つ者の宿命。
生きるために戦い、相手の命を奪う。
「さて……生きていればいいんだが……」
CSを膝立ちの状態にしてフューラーはCSから降りた。
ガンホルダーから銃を取り出すと、蹴りを入れたCSに向かって歩く。
横になったCSはそれほど高くはない。
コックピットから飛び降りても、本当に運が悪くて捻挫する程度の高さだ。
フューラーは手慣れた動きでCSのコックピットの前まで行く。
横にあるスイッチを操作し、相手のパイロットの顔を拝見しようとしているのだ。
パシュンというような音を立てて開くコックピット。
「これは……!?」
* * * * *
(来たっ!)
目の前を走ってくる、2機のCS。
迷彩柄に塗装され、この森林地帯に合わせている。
そう結論づくまで、それほど時間はかからなかった。
「ここで食い止めるんだ!」
僕はライフルを構え、敵に向ける。
そして、そのまま放つ。
弾幕のような銃撃。
だが、一機で張る弾幕などたかが知れている。
(足止めになれば……!)
レバーから伝わる、銃の反動。
ダダダッと連射する音に合わせて、レバーが小刻みに動く。
射撃ずれがないようにオートで修正をしてくれる機能が備わっているため、アサルトライフルを連射できるが、なかったらと思うとぞっとする。
その弾幕を縫って、一機のCSが仕掛けてきた。
僕は連射をやめ、後ろに跳ぶ。
敵の方を見ると、敵はナイフを構えていた。
(やばいっ!)
ライフルを構え、敵のCSに向ける。
そのままトリガーを引いた。
勢いよく発射される弾丸。
それはまっすぐ、敵のCSに飛んでいった。
ナイフを構えていたCSは僕に近づいていたため、よけきれず銃弾をもろに浴びていた。
バチバチと音がする。
「しまった!」
僕は急いでそのCSから距離をとる。
敵も僕を追いかけてくる。
敵のCSが銃弾を浴びたCSに近づいた時だった。
とてつもない爆風が襲った。
「うわあああああああああああああ!!」
爆風をもろに受け、軽く飛ぶCS。
地面にたたきつけられた衝撃はコックピットを襲った。
「ぐっ……!」
僕CSを操り、立ち上がらせると、爆発した方をみた。
そこは思いきり吹き飛んでいて、爆風をまじかで食らったCSは腕や頭が吹き飛んでいた。
もはや、戦える状態じゃない。
それでもなお、敵のCSは僕に近づいてくる。
「そんな機体で一体、何をしようっていうんだ!!」
僕は目の前のCSのボディにパンチを一発入れた。
後ろに思い切り倒れるCS。
腰に携えたナイフを構える。
だが、CSは一向に動かなった。
(や……やったのか……?)
『ユウト! そちらに何機か行ったぞ!!』
「2機撃墜しました。」
『本当か!?』
「ええ。いまからパイロットの確認に行きます。」
『まてっ! 私が行くまで待っていろ!』
「了解。」
僕はナイフを構えたままシャルロットさんの到着を待つ。
だいぶ近づいていたのかシャルロットさんはすぐに来た。
『よし、行くぞ。』
僕はCSを膝立ちの状態にしてコックピットを開ける。
そのまま降りると、相手のCSの元へと向かった。
コックピットの横、そこにあるスイッチを操作するとコックピットは開く。
シャルロットさんとアイコンタクトをして扉を開く。
パシュンというような音を響かせ、開く扉。
その中にいたのは……
「なっ……!」
「子供だと……!?」
胸に深々と刺さったディスプレイの破片。
それは少年の命を奪っていた。
そう、まだ子供だ。
僕らが戦っていた相手はまだ幼い少年たちだった。
「こんな子供がどうして……!!」
「……! まさかっ!!」
「何か知っているんですか!?」
「ゲリラやテロ組織なんかでよく使われる方法なんだが、戦場で孤児を連れ去り、兵士として育てて戦わせるんだ。それを、ここら一帯を拠点とする武装組織も使っていたら……」
「少年兵……! だけど、それは国際条約で禁止されているはずです!」
「こんな武装組織に世界の法律が通用すると思うのか!? どれだけ規制しても“正当な軍で使われない”だけだ。」
「っ……! こんなのって……!!」
「細かいことは後だ。早くアヤと合流するぞ!」
「っ! 了解!!」
何とも言えない後味の悪さを残して僕はアヤさんの元へと向かった。
* * * * *
「アヤさん! 無事ですか!!」
『こっちはまだ襲撃されてないよ。残り10kmってところで待機してるよ。そっちは?』
「もうすぐ合流します。」
『了解。』
『どうやら敵はあれだけだったようだな。』
「ええ……」
目に浮かぶ少年の姿。
(僕はこの手で二人の少年を殺したんだ……。)
手に残る銃の反動。
思い返すたびに自然と力が入ってしまう。
『気持ちはわかるが冷静になれ。』
「わかってます。わかってはいるんです。」
『君はもうコントラクターなんだ。いずれこうなるのはわかっていただろう? 戦場は遊び場じゃない。自らの命を懸けて戦う場所だ。彼らも命を懸けて生きるために戦ったんだ。』
「……」
『奪った相手の分まで生きる。それが銃を放つ者の役目だ。彼らのことを考えるなら今は生き残ることを考えろ。』
「……はい。」
『さあ、アヤと合流するぞ。それに、アルフォンスもそろそろ合流してもいいころだ。』
そのまま走る二機のCS。
隣のモニターを見るとシャルロットさんのCSの機体が見えた。
(今は合流することを考えよう。)
頭を無理やり切り替えると、僕はアヤさんと合流するため、先を急いだ。
だけど、子の胸にある後味の悪さはぬぐえなかった。
* * * * *
ユウトやフューラーが仲間と合流しようと急いでいるころ。
とある場所のオフィス。
「そうか。“白虎隊”は全滅したか。」
少年兵だけで結成されたCS部隊が全滅をしたという報告を受けても、その男は顔色一つ変えなかった。
彼の名はヴィント。
世界有数のPMCであるサタン・スカル社の創設者である。
「それで、“あれ”はどうなっている。」
「健在でございます。」
「なるほど。」
ヴィントは少し面倒くさそうな顔をすると、ため息をついた。
「今回の件は致し方あるまい。後処理は任せたぞ。」
「かしこまりました。」
そういうと男はオフィスから出ていく。
だが、ヴィントはモニターを見つめたままだった。
「手練れた護衛だな。よほど奪われたくないと見える。」
誰もいなくなったオフィスにヴィントは一人つぶやいた。
「まぁいい。機会はいくらでもある。」
不敵な笑みを浮かべるヴィント。
その顔は狂気すら感じさせた。
* * * * *
『待たせたか?』
『いや、そうでもないさ。それより……』
『ああ。パイロットのことだろう? 俺も確認したよ。』
『この辺の武装組織とみて間違いないだろう。狙いはやはりこれか?』
『だろうな。それしか考えられない。』
『ですが、これを狙う理由は何ですか? そもそもこれは一体……』
『もうすこしで基地につく。それまでは軍事秘密ってことで教えてくれない。見た目はミサイルだが、搬送するのはミサイルとは聞いていない。』
「だったらこれは……」
『カモフラージュだろう。さ、基地まで急ごう。隊列は前のままだ。行くぞ!』
「了解!」
フューラー先輩、アヤさん、トラック、僕、シャルロットさんの順で進んでいく。
また敵が出てこないとも限らない。
緊迫した空気がずっと張りつめていた。
敵はあれだけだったのか、基地につくまで現れなかった。
基地の中でCSから降りる。
森林地帯の奥地にある基地ということもあり、全体的に緑色のような色をしていた。
カーキ色というのだろうか。
基地というよりキャンプだ。
「さて、任務完了のしるしをもらいに行ってくる。お前たちはここで待っていろ。」
フューラー先輩はしるしをもらいにいった。
特にやることがない俺たちはCSの破損個所の確認をした。
機体の方は大丈夫そうだ。
先輩がかえってくるまでまだ時間があるだろう。
僕は何かから逃げるように機械のチェックまで行った。
そんなことをしていると時間はあっという間に過ぎ、フューラー先輩が戻ってきていた。
「さあ、任務完了だ。帰るぞ。」
「その前に、結局あれは何だったんですか?」
アヤさんがそうたずねた。
「ああ、あれはミサイルじゃなくてCSの新たな武器だったよ。」
「新たな武器?」
「ああ。あの外観はミサイルのようにして一般市民を近づけさせない狙いと、偽装をしていたらしい。」
「その新兵器って……」
「さすがにそこまでは教えてくれなかったよ。」
「そうなんですか……」
がくりとうなだれるアヤさん。
(そんなに興味があったのか……)
僕も気になったことは気になる性質だ。
気持ちはよくわかる。
正直、気になっているが教えてくれないのならそうするしかない。
「帰るぞ。CSに乗り込め。」
こうして僕らの初任務は終わった。
だが、後味の悪さを残して……。
次なる任務は戦闘への参加だった。
現れる強敵、彼らの正体は一体……!
次回 第3話「戦場への切符」
青年は生きる意味を知る―――。