繋ぐために
どうもMake Only Innocent Fantasy代表の三条 海斗です。
今回、新たに連載小説を書かせていただきました!
今回はロボット物です!!
第一話は世界観の説明に終始しているので、少し短いですが2話からEXITISと同じくらいにしようかなと考えています。
まだまだ稚拙な部分がありますが最後までお付き合いください。
それではどうぞ!!
息苦しいような、狭い空間。
暗く、目の前のディスプレイの灯りと手元をわずかに照らす灯りしかない。
「……!」
僕は強く操縦桿を握り、アクセルを踏む。
ゆっくりと、機体が前進する。
その動作に合わせてディスプレイの映像も上下に動く。
(どこだ……? どこにいる……!)
目の前にあるディスプレイは三つ、それぞれ正面、右側、左側の映像を映し出していた。
頭部につけられたカメラの映像がそれぞれ映し出されているのだ。
だが、所詮左右のカメラはサブカメラでしかなく、正面のメインカメラの方がやはりはっきりと見える。
一向に敵影は見えてこなかった。
レーダーにも反応はない。
(このあたりにはいないのか……?)
見渡す限りの木々。
それに隠れていたとしても熱源反応は消せない。
万が一、ここが真っ昼間の砂漠とか、火山の近くとかだったらわかる。
だけど、ここは何の変哲もないただの森林。
熱源が隠せそうなものもなければ偽装できるようなものもなかった。
僕はアクセルを強く踏み込んだ。
機体はスピードを上げて走っていく。
走れば音も大きくなるわけで……。
大きな音と共に左側n:のディスプレイに表示されるDangerの文字。
「アラート!? ロックオンされたかっ!!」
機体を翻し、横に跳ぶ。
すると、先ほどいた場所に巨大な弾丸が着弾した。
人間の銃に比べればはるかに大きい弾丸。
だがそれは、CSに比べればはるかに小さいものだった。
「牽制射撃……それならっ!!」
操縦桿を操り、手にもったアサルトライフルを弾丸が飛んできた方向へと向ける。
トリガーを引くと、弾丸は勢いよく放たれた。
銃を連射したまま横に歩く。
先ほどの機体はすでに先ほどの場所から移動しているだろう。
トリガーから手を放すと、銃を向けたまままっすぐ進んでいった。
しばらく歩いていると、レーダーに反応があった。
「この反応……そこかっ!」
操縦桿を操り、弾丸を放つ。
ダダダッという音の直後に大きな爆発が起きた。
「やったかっ!?」
直後、ディスプレイいっぱいに出るWinnerの文字。
「よしっ!!」
狭いコックピットの中でガッツポーズをする。
『浮かれているひまはないぞ。』
勝利の喜びに浸っている僕に、通信機から聞こえる淡々とした声。
教官だ。
『これで最終試験を終了とする。戦場で敵を打ち取った後にいちいちガッツポーズをしないか心配だな。』
その一言をいうと、扉が開かれ外の明りがコックピットの中に差し込んできた。
その明りは先ほどまで暗い場所になれていた僕の目には、少しまぶしかった。
* * * * *
「あ、ユウト君。」
そう声をかけられ振り返ると、茶色がかったポニーテールを揺らしながら近づいてくる女性がいた。
「アヤさん、お疲れ様。」
「お疲れ様~。それで、試験はどうだった?」
「無事に合格できたよ。そっちは?」
「私もできたよ。よかった、これでやっと正社員になれるね。」
「2年、か……。そう思うと長かったような、短かったような……。」
「でも晴れてPMC、ラスト・フォートのコントラクターだよ。」
そう、僕たちが就職したのはPMC……民間軍事会社だ。
戦争の機運が高まり、こういった会社は多く設立された。
このラスト・フォート社もそのうちの一つだ。
高校を卒業してから2年。
Cavalry soldier、略してCS。
騎兵と名付けられた巨大なロボットの操縦、戦闘などの軍事行動にかかわる訓練を受けていた。
その最終試験が先ほどのCSのシミュレータを使った戦闘だったというわけだ。
その試験にふたりとも合格したということは二人とも次の月にはPMCのコントラクターとして働いているだろう。
「それじゃあ、またね。私、部屋の片づけが残ってるから~!」
アヤさんはポニーテールを揺らしながら、すこし駆け足気味に去っていった。
(そういえば……この二年でアヤさんと結構、仲良くなったよな。)
最初のころは、僕が日本人ということもあり、いろんな国の人に囲まれて強い疎外感を感じていた。
そんななか、アヤさんは僕に気軽に話しかけてくれた数少ない人だ。
日本人の血が少し入っているらしく、どこか日本人の雰囲気の面影を感じて打ち解けるまでに時間はかからなかった。
まぁ、アヤさんが割と明るい人っていうのもあったかもしれないが。
揺れるポニーテールを見ながらそんなことを考えていた、昼下がりだった。
* * * * *
「諸君、二年という訓練期間を終えてここまで来たことにまずは祝おう。だがっ! 今日からお前たちはラスト・フォート社のコントラクターだ! 戦場でのミスが自らの死を招くと思え! 戦場はお前たちが思っているほど優しいものじゃないぞ! 心して任務にかかれ! 以上だ!!」
そういうと社長はステージから降りていった。
入社式……というものだろうか。
実際、こういう式に出席するのは二回目だ。
最初は訓練に入る前。
そして、二回目が今。
世界各地にあるPMCの中でもトップクラスに入るPMCの社長が新入社員の目の前に現れるというのはやろうと思う気になるし、これからのことに胸が躍る。
入社式が終わると、それぞれの班……仕事を行う上で一緒に行動するグループを紹介された。
このグループは4人一組で、すでに仕事をしている社員2名と新入社員2名で構成される。
これはOJTといって、実際に仕事を行いながら仕事を覚えるという意味がある。
(一体、だれが僕と同じ班になるのだろう……?)
扉を開けて中に入るとそこには見知った後ろ姿があった。
「アヤさん!?」
「あ、ユウト君! 君も一緒だったんだ!!」
「アヤさんこそ!」
アヤさんはいつものようにポニーテールを揺らしながら、近づいてくる。
「おい、イチャイチャしてるんじゃない。」
「イチャイチャなんか……」
「残念だが、私もイチャイチャしているように見えたぞ? キリシマ。」
そこにいたのは一組の男女だった。
「俺はアルフォンス・フューラー、そしてこっちが……」
「シャルロット・プリエールだ。シャルロットと呼んでくれ。」
「えっと、ユウト・キリシマです。」
「アヤ・リューグナーです。」
「ほう、お前が噂のジャパニーズか。」
「噂の?」
シャルロットさんがそうたずねた。
彼女は本当に知らないようだ。
「“平和な”日本からわざわざPMCに参加するようなもの好きと聞いているぞ。」
その言葉には少しとげがあった。
少し昔、日本は変わろうとしていた。
だけど、日本は変わらなかった。
それが今もなお、変わっていない。
今も、世界が緊張状態にあるというのに日本は自衛権を持っていないから戦争はできない、という言い分を貫いている。
当然、世界の批判も集まるわけで。
こういった軍事にかかわっている人から日本人はあまり好かれていない。
もともとあまり好かれていなかったのかもしれないが。
「そこまでにしておけ。偏見を持つのはよくないぞ。」
「そうですよ!」
「おっと、これは怖い。とりあえず、これからは一緒に戦う仲間だ。よろしく頼む。」
「こちらこそ。」
僕は差し出された彼の手を握る。
力強いその手は彼の経験の多さを物語っているような気がした。
「まっ、あんなこと言ったけどこれからは同じチーム同士仲良くしようぜ。」
「こちらこそ、先輩。」
「アルかフューラーでいい。」
「それじゃあ、フューラー先輩で。」
「頼むぞ、ユウト。」
そんな風に僕らの初顔合わせが終わった。
この時、僕は想像していなかった。
これから起きることを。
そして、僕らのことを……。
今作では各話ごとのあとがきに次回予告的なのを入れようかなと思います。
あくまでも構想上の次回予告なので、そうならない場合がありますのでご了承を。
ついに訪れた初任務。
そこには訓練のような優しいものは存在していなかった……。
次回、第2話 「銃を放つ者」
青年は生きる意味を知る―――。