二話「ランクS」
一同の反応を見ながら、ユジアは、やっぱりね、とでも言いたげな表情で眉の端を下げた。
冒険者がモンスターを討伐、駆逐、淘汰するのは簡単ではない。
下手をすれば命を失う。
だから武器を持つのだ。
けれど、その中でも異色を放つ武器のジャンルがある。
体術。
つまりは、素手、だ。
もちろん手や足にカバーなどはするが、戦闘着や副武器等が重くては戦えないし、防御系の武器なども持てない。
なので、体術の得意な冒険者は、大抵大柄で力の強い巨人族や、魔法が得意な人物である。
「じゃあ……ユジア、だっけか?お前は魔術が得意なのか?」
「え?ううん」
ルードが尋ねるも、ユジア、速攻で否定。
「…んじゃさユジア。あんた、なんで体術を?」
ユジアの目の前にいた、椅子ではなくテーブルに腰かけた獣人の女性が尋ねる。
彼女、見たところ猫の獸人のようだが、自己紹介の最中にもかかわらず酒を飲んでいる。
「はい!私の知人の元冒険者の人が体術使いだったので、教えてもらいました!その人は魔術得意だったんですけど、私はさっぱりで!」
明るくそう言い放つ彼女に、一部の人間は不安を感じ、また一部の人間は半ばあきれたようだった。
が。
「ハッハッハー!面白いね、あんた!!ねえエルマ、こっから先の説明、アタシに任せてくれねぇ?」
さっきの女性は相変わらずサバサバした口調でそういいながら酒を飲み干す。
「いいけれど、大丈夫?」
「へーきへーき!アタシを誰だと思ってんの?巷で噂の槍使い、カサベル・クルーちゃんだぜ!」
「一回も噂聞いたことないけどね、巷で」
エルマに軽い調子で返した女性、カサベルに対し、彼女の隣に立っていた酒場の従業員であろう少女が冷たくツッコミを入れた。
そんな事にはお構いなしに、カサベルは堂々と四人の前に出てくる。
「よお。まあ、さっき名乗ったけどさ、アタシはカサベル・クルー。武器はそこのメッシュの奴と同じ槍。ランクSの冒険者だ」
にひひ、と無邪気に笑うその姿は子供っぽく見えるが、ランクSという言葉を聞いて新人四人は緊張を覚えずにはいられなかった。
冒険者には『ランク』という物がある。
ランクは六つあり、最低ランクのEから上がっていき、一般にはランクAが最高とされている。
そして、ランクSはそれより上、つまり、ギルド連盟から課せられた試験をクリアした一部の人間しかなれない。
作成中。