2.
5人全員が揃ったのは実に1年ぶりだった。いつもは1人2人かけるものなのに、よりによって昨日の会合に限っては全員揃っていた。
赤こと河村 兼尊が妙な事を言い出すのはいつも5人揃う時だ。何も揃ったから言い出すわけではなく言おうとすると揃うのだそうだ。兼尊曰く。
いつもの発言は笑って許せるような、面白い事だったり些細なことだったりするのだが、昨日のものはどうにもこうにも頭がついていけないような内容だった。
名称:もてなし戦隊シツジンジャー
主な活動内容:情報交換、互助活動
緑こと大原 空也がシツジンジャーの活動をいつも通りと言い現していたが、正直兼尊のことだ、ただの会合では終わらない気がする。これからシツジンジャーの名の元にどのような活動をさせられるか非常に不安だ。青こと泡瀬 響司が上手く兼尊をセーブしてくれる事を切に祈る。
それにしても、なぜこんなものを兼尊が思いついたのやら。しかもよりによって執事に関することだ。
少し気になったので、ネットなどで軽く調べてみた。何か原因が判るかもしれない。
検索窓に“執事”と入力し、出てきた結果を見て頭がくらくらとした。
何だこれは。どこの世界の話だ。雇い主やそのご息女との恋愛とか。うわぁ、ねーよ。てか、美形しかいない。何か?これは俺への当てつけか!?挑戦か!?解ってるよ、執事は見栄えが第一だって。はぁ。溜息しか出ねぇよ。それより何より女がいない。これはおかしい。百年前じゃあるまいし。今やアラブ諸国では執事は女が主流だぞ。なぜ女がいないんだ。いやいや、それより何故戦う?執事のどこに戦う要素が。おい待て、仕込み武器とか。こらそこ、カトラリーを投げるな。どれだけきれいに磨いていると思っているんだ。努力の象徴を投げナイフ代わりにするんじゃない。ドヤじゃねーよ。カメラ目線すな。やはり昨今の日本も物騒だからなぁ、ナイフとか所持した方がっていやいやいや。ちょっと待とうか。落ち着け。俺。
取り乱して素の言葉に戻ってしまった。ふぅ。
兼尊はネットで変な知識を手に入れた。でもって、執事とは戦う者である。という洗脳を受けた。奴の頭の中は今頃、職業執事=戦闘職になっているに違いない。
つまり、そういうことか。だから戦隊なのか。シツジンジャーなのか。ちょうど5人いるからか…
あいつ、情報交換と互助活動って説明していたけど、まさか世界規模で考えていないよな?執事の持つ情報ってとんでもないものが多いから、その情報交換って…うわぁ、考えたら恐ろしいネットワークだよなぁ。敵に回したくない。
もしかして、世界を征服をするおつもりですか?
兼尊恐ろしい奴。
まぁ、情報なんて1ミクロンも漏れはしないだろうけどな。
とりあえず、この国の執事は戦えるようにならないといけないらしい。
ナイフはやはり持っておくか。あれってどこの引き出しにしまっておいたっけ。退役した軍人に感謝のしるしにもらった奴。使い勝手がいいらしい、年季の入ったナイフだ。
おっと、そろそろ日が昇るか。朝の新聞も1時間もすれば届くだろう。
今日は旦那様が朝の会議に出られると昨日秘書の島村さんから情報をもらっているので、朝食の準備は早めにしておかないと…
ああ、家令の江本さんに知り合いのトレーダーからもらった情報伝えとかなくては。アメリカの市況の動きが変だって。
後は…
今日も執事の仕事が始まる。
もう1人のメンバーが出ていませんが仕様です。