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11.

「あー、イチャついているところ申し訳ないのだが、そろそろ俺達行くから」

クライドから声がかかった。山華さんがその隙に離れてしまった。

彼女の温もりが急速に失われていく。それが名残惜しくて、思わず先程まで彼女に触れられていた場所に手をやる。

「クライド、今日は助けてくれてありがとうございました。あのままでしたら、2人ともどうなっていたか分かりませんでした。この礼はいずれまたさせてください。それからクライド達がなぜここにいるのかは、追求しませんし警察にも話さないつもりでいます」

「あぁ、話が早くて助かるな。礼は、そうだな…」

いったん話を区切りこちらをじっと見てきた。

なんだ?

クライドが徐にスマホを出して、構え始める。

「よし、良く撮れてる」

「え?」

撮れてる?

「ケインに今のお前の姿写真を送っておく。これで相殺しておいてやるよ」

「ひぃ。やめろ。帰った時にからかわれる!礼なら別の形でお願いします!クライド」

本当にやめてくれ。これをネタにされてケインに永遠にからかわれ続けるとか。いや、それより奥様やお嬢様にまず知られる!あぁ、恐ろしい。無理難題をここぞとばかりに。むしろ、執事からメイドに強制転職とか!?なにそれ、あり得そうで怖い。

「いやぁ、送っちまったしな」

「何!?」

悪びれもせず言い放つクライドに殺意がわく。

落ち着け、俺。相手はプロ、相手はプロだ。万が一にも勝ち目はない。勝ち目はないんだ。落ち着け俺。

「てことで、行くわ、コウ。ケインによろしくな。それからそっちのお嬢ちゃんも、今日の事は早めに忘れた方がいい。じゃあな」

山華さんが何かを言う前に、クライド達は足早に去っていった。

「山華さん」

頭痛がするコメカミを揉みながら、彼女に向き直ると、途端目を逸らされた。

うわぁ、ショックだ。

「あー、山華さん。申し訳がありませんが、警察やご両親には彼らの事を話さ…」

「篁、無事か?」

この声は佳人か。よくここが判ったな。

振り返るといつものメンバーが揃って来ていた。

なぜ皆執事服なんだ?え?よく見ればお揃い?しかも各種色付き?あ、もしかして今気づいてはいけない事に気づいた?シツジンジャー本気だったんだ、兼尊。色にあわせて執事服用意するとか、どこまでやる気なんだよ。よかった俺黒で。白だったら、白色の執事服だよ。似合わない。幸いなのはピッチり衣装ではなかったことだけど。

「篁?どこか怪我でもしたのか!?」

頭の中で頭の痛いことを考えていたら、佳人に心配された。

「あ、いや、無事だ。山華さんも」

何となく佳人と山華さんを会わせたくなくて、隠すように彼女の前に立った自分はへたれなんだろう。認めたくないけど。

「どうやってここが判ったんだ?」

「それは、山華さんの服にGPSついてるから。山華さんのところとお前のところと俺のところの手のあいているセキュリティ集めて即席の救出チームを作ったんだ」

佳人が後ろの方を指差す。遠くにいる黒服集団が見えた。その中にはケインもいた。まだクライドのメールを見てないようで、こちらに気づいていない。

そのまま気づきませんように。

「ま、助ける前に終わってたみたいだがな。ところで佳人、そちらの女性達は知り合いか?」

響司が佳人に尋ねている。

達?女性達?え、もしかして俺って気づかれてない?兼尊は判っているみたいで、ニヤニヤしている。その顔やめろ。

空也は無表情だ。気づいたかどうかよく判らない。

「響司、何をいってるんだよ。こいつ、篁だぞ」

「え!?」

ビックリしたのか、響司が口許を隠す。いつでも冷静な響司の慌てたような様子を見れたのはよかったが、なんだか複雑だ。付き合い長いのにな、俺達。

「はぁ。カッコよく華麗に救出といきたかったが」

「何を言っているんだ兼尊。救出といったって実行はガードの方々だろ?俺達なにもできないし」

響司が指摘する。

「坊っちゃん方、そんなことはありませんよ。お嬢様を無事に救出出来たのも、あなた方の情報によるものですから」

山華さんのセキュリティの人が、濡れタオルを持って山華さんを迎えに来た。腫れた頬用だろう。

それより坊っちゃんって…

「そちらのお嬢様もご無事でよかった」

うっ。お嬢様って俺のことか?

思わず絶句してしまう。

「お、お手数お掛けしまして…」

裏声使ってボソボソ言って誤魔化そうとしたら、山華さんがネタばらしをしてくださった。

そんな親切はいらなかった…

セキュリティの人が口をパクパクしていた。

見るんじゃなかった。

そっと視線をはずす。

「それで、その、山華さん。先程の外国人については、黙っておいてほしいのです。警察に聞かれてもセキュリティに助けられたと。それから、近くで銃撃があったようですが、その件についてもよく判らなかったと顔をぶたれて意識もはっきりしなかったことにして下さい」

「田山、聞いたわね。あなた方も口裏をあわせてちょうだい」

「了解しました。他の者にもそのように伝えましょう」

「兼尊達も頼んだ」

皆が頷いたのを確認をしてホッと一息ついた。

パトカーのサイレンが遠くに聞こえる。

「お嬢様、そろそろ」

「そうね。それから貴方、今日はありがとう。貴方がいて心強かったわ。名前を聞いてもよろしいかしら?」

「篁です。右山篁」

もうすっかり辺りは暗くなり、彼女の顔がはっきり見えない事を残念に思いながら名を告げた。

ちょうど迎えであろう車のヘッドライトがこちらを照らし、彼女の顔がスポットライトを浴びたかのように見えた。

「私は山華章子(しょうこ)

彼女の微笑みが、目に焼き付いた。目が眩みそうになったのは、ライトのせいか彼女の微笑みのせいか。

「よろしく、山華さん」

幸せな気分に浸りながら、笑顔と握手を彼女に返した。

しばらくその場で誰も動こうとはしなかった。

紅蓮躱名義で書いていたのはここまでとなります。

ペースががくりと落ちますが、お付きあいいただけると嬉しいです。

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