1.
この作品はかつて作者名紅蓮躱で掲載されていたものです。アカウント統合のため作者名が変わっておりますが、同一作者のものです。
ここは、いつも使用しているマンションの一室。20平米はある。かれこれ5年は使用しているか。ただしここにはだれも住んでいない。ただ集まる為だけの部屋だ。
ここに集まったメンバー5人は幼少期からの友人で現在20代前半の男。顔は皆イケメンといっていいだろう。街を歩けば男女ともに振り返る的な、言い表すならそれぞれ極上醤油・オイスター・ケチャップ・マヨネーズそれに水、揃いもそろって個性豊かなイケメン野郎どもである。自分以外。まぁ、水だって味はある。うん。
そんな5人が選んだ職業というのが、世間ではまず考えられない職業、執事である。
まぁ、執事なんてのは自称できるので職業的にはあれなのだが、我々が目指しているのは最低でもIBG(International Butlers Guild)に加入できるだけの実力のある執事だ。自分ともう一人はすでに加入済みだが、残り3名はこれからである。頑張れ。
で、我々が何故集まっているかというと、メンバーの1人から来たメールが原因である。
我々メンバーで組織を立ち上げようと思う。
いつもの場所21:00
相変わらず用件の要領がえない。こいつの場合、最後まで話を聞かないと話の全体がつかめないのだ。性が悪い。でもまぁ、いつもの事なので誰も深く追求せず、ここに集まった。で、今度は何を始める気だ。と思ったら、最後まで話を聞いても頭のついてこない内容だった。
「我々は幼少の砌より、執事になるために切磋琢磨してきたわけだが、このまま唯々諾々とこの道を進んでもいいのだろうか?」
「頭でも打ったのか?進むもなにも、はじめから目標は執」
「いやない」
こいつは昔から問題定義をするわりに人の話を聞かず、自己完結してしまうやつだった。そして決まってもう1人がその辺りを解っていながら、つい突っ込みを入れてはいつも玉砕をしていた。この2人はボケ役と突っ込み役が定位置だ。
「そこで、このような組織を立ち上げた。その名も、もてなし戦隊シツジンジャー」
「なんだその頭のわ」
「僭越ながら、赤はもちろんこの私が勤めさせてもらおう。お前青な」
「いや、私の話を聞け…」
この日もこいつ…もういいや赤で、突っ込み役の青でも赤をとめられず、結局はもてなし戦隊シツジンジャーなるものが結成されてしまった。
誰の承諾もなしに。
我々は一体何と戦っている?
あれか?よく困った要求をしてくる来賓か?それとも会社のゴタゴタを押し付けてくるご主人様か?それとも大学での研究データの統計を1時間で終わらせろと言ってくるお嬢様か?はたまた戦隊ものにはまって、敵役を業務中に依頼してくるご子息様のことなのか?それとも、できもしない料理に懲りもせず挑戦し続ける奥様の果て無きフォローのことなのか?
いや、これらは自分の問題であって他のメンバーは関係ないな。
はて?なんの話だったか。あぁ、そうだ、シツジンジャーの件だった。
とにもかくにも、赤の一声で我々メンバーの強制加入が決定された。
拒否権は無かった。
色も決められた。
自分は黒らしい。水だから白とかでいいと思うのに何故黒なんだ。
赤が言うには、今現在異星人の襲来や世界征服が企まれている。
わけではないらしい。
あたりまえだ、あってたまるか。
見かけは概ね平穏である我が国だが、その実戦争一歩手前な状態にある日本の緊張緩和に動く特殊組織。
でもないらしい。
「うむ。主にお互い困った案件があった場合助け合ったり、情報交換を行いあらゆる状況をカバーするのが目的だ」
え?戦わないの?
戦隊ってなに?
なんのためのジャー?
ああ、飯炊くためか。
いかん、混乱をきわめたために言葉遣いが素に。ああそう言えば、奥様本日炊き込みご飯を創ると仰っていたな。未知なるオブジェが出来あがる前に、替え玉を用意しておかなければ材料がなくなる。
「つまり、今まで通りなんだな」
緑の一言で、その日は解散になった。桃は始終爪をいじっていた。ああ、平常通りだな。
さて、早く帰らなければキッチンのリフォームを余儀なくされる。そうなってはまた一騒動だ。
結局もてなし戦隊シツジンジャーってなに?
え?ただの互助会?
International Butlers Guildについて。
恐らくは存在しません。別名の組合はあります。執事を目指すならそこへ加盟しましょう。