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四章 母娘喧嘩は割とよくするけど、今回のは特別だ。

 うーむ、あの母に勝てる勝負なぁ。

 家への帰り道、私は頭を捻っていた。そして考えれば考えるほど勝てそうにないと気付いていく。本当に若さくらいしかないのだ。

 さてどうしたものか……。

 家にたどり着くと、花屋にお客が一人いた。


「いらっしゃいませ」


 にっこり笑顔であいさつする。

 花屋は憎悪しているがお客に罪はない。お客がいればあいさつくらいはするのだ。


「ちょっとあんた、お店に誰もいないんだけど」


 お客はかくしゃくとした老婦人だった。


「え、そうなんですか? すみません、いつもは店を開けたりはしないんですが……」


 父か母かバイトか、常に誰かいるようにしているはずだ。どこほっつき歩いてんだか。


「ちょっと電話してみますね」


 そうやって呼び出すくらいしか私にできることはない。


「そんな時間はないよ。早いとこ花束がいるんだ」


 そう言った後、老婦人が私を上から下まで見ていく。何だ?


「あんた、ここの娘だろ? あんたが作っておくれ。仏壇に供えるのを五千円で」

「はぁ?」


 いきなり何を言い出すんだ。

 私は花屋の手伝いをしていないのだ。勝手に花束を作って売ってしまうなんてやっていいわけがない。

 しかも、外出着を着ているところからしてその花束は贈り物になるはずだ。故人に供えるものでもあるし、変なものを作ってしまうわけにはいかない。


「はぁ? じゃないよ。急いでるんだし、早くしておくれ」

「あの、すみません。私、店とは無関係なんですよ」

「嘘を言うんじゃないよ。前に働いてたろ。さっさと作っておくれ」

「無理無理無理ですって。花束なんて作れませんから!」


 無茶振りをする老婦人が自分の腕時計を見てため息をついた。


「仕方ないね。じゃあ、私がやるよ」


 お客のはずのその人は、店に生けてある花を選んでいって、そこらにあった剪定バサミで花束を作ってしまった。色も形もきれいにまとまった見事なものだ。


「はぁ、お上手ですねぇ」

「あのねぇ、あんたも花屋の娘ならこれくらいチャチャッとしておくれよ」

「そう言われても、私、花屋には関わっていないんで」

「情けないねぇ。和菓子屋の娘を見習いな」


 よく見ると、その人は和菓子屋『野乃屋』の袋をぶら下げていた。お供え物だろう。


「はぁ……まぁ……ねぇ……」


 お客相手に抗弁もできないので大人しく言われるままになる。


「じゃあ、代金を置いてくから。ちょうどあるからね」

「あ! いえいえ、ご迷惑をおかけしたんですし、お代は結構ですよ」

「何言ってんだい。売ってるもの買ったんだから代金を払うのは当然だ。それに、ここはあんたの店じゃないんだろ?」

「まぁ、そうなんですけど……」

「何もできないくせに、出過ぎたことを言うんじゃないよ。じゃあね、また来るよ」

「あ、ありがとうございました!」


 店の前でお客を見送る。

 ……はぁ、とんだ目に遭った。散々罵倒されて気分最悪である。

 全てはこの忌々しい花屋のせいだ。そうに決まっている。

 と、お客の方へ駆け寄る人影が。

 どっかほっつき歩いていた母のようだ。ペコペコ頭を下げているのが見える。

 ざまぁみろ、娘に迷惑かけた報いを受けるがいい。

 まぁ、一番迷惑を受けたのはあのお客なのだ。お詫びはきっちりしとかないとな。

 老婦人は急いでいたみたいだったので、少し話をしただけで母を置いて駅の方へ歩きだした。

 さ、私も家に入るか。ひと休憩して夕飯の仕度だ。




 夕飯時、母は無言だった。

 なんか話をしづらい圧力を感じたので、さっき巻き込まれたトラブルに対する抗議は差し控えておいた。

 洗い物も終わって自室に戻ろうとしたところへ後ろから声をかけられる。


「あんた、何考えてんの」

「え、私?」


 母はいきなり喧嘩腰だった。


「お客さんに花束作らせたんでしょ? 何考えてんの」

「いや、向こうが自分から作るって言ってきたんだよ」

「そんなことさせていいわけないでしょ? 何であんたが作らないの? 中学の時に私が仕込んだろ」

「んなの、何年も前の話じゃん。それに、あの頃にしたって商品になるようなのは作れなかったはずだよ?」


 私が作ったものは、そのままお客には出さず親が手直ししていた。


「確かにあんたが作れるのは店の基準よりやや劣るもの。それでもね、何もしないより、お客さんの手を煩わせるよりかはずっとマシなんだ」

「お客さんっていうか、私は花屋と無関係じゃん。そういうふうに条約でも……」

「条約は関係ないっ!」


 母がテーブルを叩いた。


「そこ座れ」

「なんでよ。宿題しなきゃ」

「座れ!」


 あーもー、本当にタチが悪いな、この人は。自分が店開けるなんてミスしといて、私に当たり散らすとか筋が違うでしょ?

 でも下手に逆らうと後で悲惨なことになる。

 仕方なしに自分の席に座った。


「なんで私が悪いことになってるの? お店開けといた母さんが悪いんじゃん」

「それは確かに私が悪かった。お客さんが買った鉢物を、ちょっとそこまで運ぶつもりが手間取ったんだ」

「でしょ? それで私が煽り食ったんじゃない」

「でもね! 条約でお店の手伝いしてないなんて、私達の都合なんだよ! それでお客さんに迷惑かけるなんてあっちゃ駄目なんだよ!」


 いきなり怒鳴ってきやがった。でも、言われっぱなしでいられるわけがない。


「それおかしいって! なんでそこで私が花屋の頭数に入ってるのさ! 私は花屋とは関係ないんだ!」

「あんたは花屋の娘なんだ! 無関係なんてわがまま、お客さんに通用するわけないでしょ!」

「こっちは好きで花屋の家に生まれたんじゃない!」

「だからそんなの通用しないんだよ!」


 怒りで頭がグチャグチャになってきた。

 私は店の手伝いをしない。それは母も承知したことなのだ。

 それなのに、今になって全てを反故にするつもりでいる。

 なんて身勝手な奴なんだ。


「じゃあ、こんな家出てってやる。花屋の娘なんてやってられるか!」

「そんなことさせるか! どこにいても絶対に見付け出して引きずり戻してやる! あーもう! ちょっと甘やかしたらつけ上がりやがって! 条約なんて破棄だ! あんたは私がきっちり花屋の娘として鍛え上げてやる! それで私のお店を継ぐんだ!」

「条約を破棄? そんなのお祖母さんが許すと思ってんの? 私は花屋なんて継がない! 絶対に継がないっ!」

「継げっ!」

「継がないっ!」


 母は目の前で鬼の形相をしていやがるが、こっちも後に引けない。

 咲乃先輩が何かアドバイスをくれていた気がするが、私の頭には目の前の女の横暴を今ここで叩き潰すことしかなかった。


「文香さん、やめるんだ」


 そう言って母の肩に手を置いたのは父だった。大きな身体なので母を押さえ付けているようにも見える。


「でも久秀君。こいつ、お客さんに迷惑かけたんだよ?」

「花屋の客は私の客じゃない!」

「菜ノ花も落ち着け」


 父が大きな手で私達の間を遮った。仕方なしに自分の席に座り直す。


「菜ノ花は店の手伝いをしない。そう決めたことは分かってるな、文香さん」

「あの条約はそもそもがおかしいんだよ……」

「分かってるな?」

「……はい」


 母がうなだれた。


「菜ノ花、お客様から見たらお前はこの家の娘なんだ。関係ないでは済まないというのは分かるな?」

「でも条約が……」

「分かるな?」


 父が珍しく威圧感を出してきた。こういう時の父は本気で怒っている。


「……はい」


 私もうなだれてしまう。


「菜ノ花は本当にこの店を継ぐ気はないのか?」

「ないよ。それは絶対に嫌」


 母が睨んできたがこっちも負けずに睨み返してやる。


「文香さんはそれでは納得できないんだな?」

「当たり前だよ。花屋の娘は花屋を継いで当然なんだ」

「自分だって服屋から逃げたくせに!」

「あんたにあの時の私と同じだけの覚悟があるのかよ!」

「やめろ、二人とも!」


 くっ……。目障りだ。

 この女は、私の目の前に立ち塞がるこの女は目障りだ。


「文香さんが赤木の家を出る時、どんな条件が出たか知ってるか、菜ノ花」

「……知らない」


 そんな話になったことは今までなかった。


「ハハは二千万円を要求したんだよ。大学出て何年も経ってない私相手にね」

「二千万!」

「それでも今までの養育費には全然足りないとか恩に着せてきたよ。花屋の開店資金を必死で貯めてたのに、大半を持ってかれた。おかげで開店計画が二年遅れるハメになったんだ」


 孫の私にも厳しい祖母だが、娘には一層厳しいようだ。

 それにしても二千万円か……。母もよく持ってたな。


「なんでそこまでして家を出たのさ。お店がしたけりゃ、服屋でもいいじゃない」

「私は花屋がしたかったの。どうしても花屋じゃなきゃ駄目だったの。ねぇ、菜ノ花」


 母がこっちに身を乗り出してくる。

 その表情は今まで見たことのない真剣なものだった。


「ねぇ、菜ノ花。あんたには親の願いを振り切るほどの、強い思いが本当にあるの?」


 私は言葉に詰まってしまう。

 母は花屋がやりたくて文字通り莫大な代償を払って実家を出た。

 金額が問題ではないにしても、母ほどの覚悟を自分が持っているとは到底思えなかった。

 また負けた。

 こうして私は母に負け続けるのだ。

 胸の中から沸きだしてきた悔しさが涙となってこぼれ出た。必死にこらえようしてもどうにもならなかった。


「でも嫌なんだ……。花屋は嫌なんだ……」

「ねぇ、なんでそんなに花屋を嫌うの?」


 母がこちらの顔を覗き込んで言ってくる。


「高校に入って、私は部活がしたかった。中学はずっと帰宅部だったし、新しいことを始めたかったから。一番熱心に勧誘してくれたバレー部に入ったけど、三日目に顧問の先生から部活を辞めるよう言われてしまった。なんでだっけ?」

「私が顧問の先生とちょっと話をしたんだよ。娘は店の手伝いが忙しいんだって話をちょっとね。それで先生が気を利かせてくれたんだ」

「嘘付け、家業が忙しくて人手が足らないんだって嘘泣きして、辞めさせるって約束を無理矢理取り付けたんじゃない」

「そういう言い方もできるかな?」

「私はあれで花屋が決定的に嫌いになった。絶対に手伝うもんかって。でも手伝いを拒否すると、母さんはあの手この手でやり込めてくるんだよ。お祖母さんに仲裁してもらうまでの一年は本当に長かった。ねぇ、母さん?」

「何?」


 顔を上げた私は母と向かい合う。涙はもう涸れていた。


「私はホントに花屋を嫌ってるのかな? 違うかもしれない。私が嫌ってるのは……そう、私が何よりも嫌っているのは、今目の前で母親ぶってるあんたなんだ」


 相手の目を見て言ってしまった。

 言って後悔したが、もう手遅れだ。

 私の言葉の刃を受けても母は表情を変えなかった。身動きせずこっちをじっと見ていた。


「菜ノ花。心にもないことを言うんじゃない」


 父が静かに言ってくれたが、今さら取り消すことはできない。私の言った言葉は自分の心も抉った。


「まぁ、菜ノ花が私を嫌っていようが、この際たいした問題じゃないよ」


 母はイスに背を預け、平然と言ってのけた。


「最終的にお店を継げばそれで問題なし。菜ノ花の気持ちなんて知ったことか」

「はあ?」


 呆れて声が出てしまった私に母は言葉を続けた。


「菜ノ花、明日からあんたはお店で働け。学校も辞めろ」

「なんで学校まで辞めないといけないのさ?」

「余計なこと考えてる暇がないほどお店でこき使ってやる。一から鍛え直しだなぁ」


 などと言って伸びをする。

 あんなに酷いことを言ったのにまるで堪えていない。それどころか、かえって今まで以上にタチが悪くなっている。

 なんなの、この人?


「文香さん、落ち着くんだ。動揺するのは分かるが、余計に話をこじれさせるだけだ」

「別に動揺なんてしてないよ? 小娘のたわ言くらいで私がどうにかなるとでも?」

「でも泣く寸前だろ?」

「そんなことありません」

「そうやって意地ばかり張るから菜ノ花に嫌われるんだ」

「き、嫌われてなんてないもん!」


 いきなり立ち上がって洗面所の方へ走っていった。


「やれやれ……」

「え? ホントに泣いたの?」

「菜ノ花が酷いことを言うからだぞ。後で謝っておけ」

「でもあれくらいであの母さんが?」

「大事にしてる実の娘にあんな言い方をされたら泣きたくもなる。文香さんは泣き虫なんだし」

「いや、あの人が泣いてるとこなんて見たことないんですけど」

「菜ノ花、本当にお店を継ぐのは嫌なのか?」


 父の目は悲しげだったが、ここで妥協しては終わりだというのは分かっていた。


「本当に嫌。私、普通に大学に行きたいんだけど、それは絶対に許されないことなの?」

「そんなことはないぞ。じゃあ、条件を付けよう」

「条件?」

「夏休みまでの三ヶ月だけお店を手伝うんだ。嫌な手伝いを頑張ってやり遂げたなら、大学に行きたいという菜ノ花の気持ちが本物だと認めてあげよう」

「ちょっと待ってちょっと待って! 久秀君、何勝手なこと言ってるのさ!」


 顔を洗ったらしい母がタオルを首に巻いて走ってきた。本当に泣いたのか?


「だけど文香さんが強引に押し付けても菜ノ花は嫌がるだけだ。今までずっとそれが裏目に出てるんだし」

「そんなことないって。最終的に屈服させればいいんだから、途中でちょっぴり嫌われるくらいは許容範囲内だよ!」

「そんなこと言ってると、また泣かされるぞ」

「泣いてませんし、泣きもしません~」

「ていうか、屈服させられるとか勘弁なんだけど」


 やっぱり歯向かう娘を支配したいだけなんじゃないか。


「仕方ないな、お義母さんにまた来てもらうか」

「あ、私もお祖母さんの助けを借りるつもりでいたんだよ、今思い出した」

「ちょっと待ってちょっと待って! ハハだけは勘弁してよ!」


 母は母で祖母がよっぽど苦手らしい。

 そこにつけ込む隙がある。

 どうやら今の母は動揺しているようだし、ここで祖母を召喚して勝負の話を持ち出せばいいのだ。今父が言った、三ヶ月花屋の手伝いをするというのがちょうどいい。

 三ヶ月頑張りきったら私の勝ち。

 縁と一緒にキャンパスライフ。

 途中で挫けたら私の負け。

 母にしごかれて花屋を継ぐ。

 よし、これで行こう!


「もう夜遅いけど、重要案件だしお祖母さん呼ぼうよ。それともこっちから行く?」

「電話だけして、明日改めて伺おう」

「でも母さんが弱ってる今じゃないと」

「ちょっと待って! ホントにハハは勘弁! 分かった、分かったから!」

「何が分かったんだ?」


 父が母に問いかける。

 もしかして、こうやって母を操縦している?

 父の方が上手?


「三ヶ月菜ノ花はお店の手伝いをする。それをやり遂げたら好きな大学に進学する。それでいいんでしょ?」

「違うよ。私がやり遂げたら、花屋を継ぐって話は二度と持ち出さないって約束して」

「ちっ!」


 どうせ大学卒業に合せて花屋を継ぐ話を蒸し返すつもりだったんだろう。その手は食わない。


「やっぱりお祖母さんを……」

「分かった! 分かった! その条件で。菜ノ花がやり遂げたって私が認めたら二度とお店継げって言わない!」

「いや、やり遂げたかどうかは俺が判断する」

「なんでさ?」

「母さんじゃ、難癖付けるに決まってるじゃん」

「ぐぬぬぬぅ」

「もう観念しなさい、文香さん。菜ノ花はお店の手伝いを三ヶ月やる。それをやり遂げたと俺が認めたら、文香さんは金輪際、直接間接を問わず、菜ノ花相手にお店を継がせようとしてはいけない。その上で、菜ノ花は自分のやりたいようにやる。そういう契約だ。分かったか?」


 あ、そうか、単に話をさせないだけだと、タチの悪いやり方で私を追い詰めて、花屋を継ぐしかないよう仕向けてくる可能性があるのか。

 その辺父は考えて、行動全部を縛ったのだ。さすが自分の妻のことをよく知っている。

 そして私のやりたいようにやらせてくれるという条件を追加してくれた。

 ありがたい。父には本当に感謝だ。


「分かった!」


 母が仁王立ちして背を反らせた。

 実に偉そうな格好で啖呵を切る。


「三ヶ月たっぷりしごいてやる! 私のことを嫌いとか言ったことを、死ぬほど後悔させてやるからなっ!」

「あ、その件に関してはごめんなさい。言い過ぎました」


 父に謝れと言われていたのでしっかりと頭を下げて謝る。

 というか、実際言い過ぎた。

 頭が冷えてくるとあれが本音とはとても思えなかった。


「へんっ! 今頃謝っても遅いってのっ!」


 頭を上げると母はタオルで顔を覆っていた。


「泣かないで? 母さん」

「泣いてないっ!」


 あの一言だけでここまでの譲歩を引き出せてしまった。

 だからと言って、これに味をしめるなんてことはないだろう。

 母に向かって嫌いだなんて、お互いの心を深く傷付けるだけなのだから。




 私は自分の部屋に戻ると、壁に掛けてあるカレンダーの横に『進路調査票』をピンで止めた。

 今、新しい契約が取り交わされた。

 明日からの三ヶ月は試練の三ヶ月となる。

 何としてでも乗り切って、親友とのキャンパスライフを獲得するのだ。

 あの母は、私を挫けさせようとありとあらゆる苦難を加えてくるだろう。それを乗り切らねばならぬ。

 なかなかつらそうだが、絶対に負けるものか。

 縁と一緒の大学に行きたいから?

 それは当然あるが、それだけではなかった。

 あの母。

 あの母に一矢報いたかった。

 母は花屋がどうしてもやりたくて、怖い祖母に逆らってまで家を飛び出した。

 一方の私にはやりたいことが何もない。大学進学にしたって、ほとんど遊び感覚だと自覚している。

 母は言った「あんたには親の願いを振り切るほどの、強い思いが本当にあるの?」

 確かに今の私には母ほどの強い思いはないかもしれない。そんな私でも、どうしても意思表示したいことがあった。


 私は花屋を継ぎたくないんだ!


 三ヶ月をやり遂げて、私の思いの強さを証明したかった。そしてそれをあの母に突き付けるのだ。

 随分後ろ向きな考えかもしれない。

 でも、あの母にせめて一太刀浴びせなくては、私は前へ進めないと思うのだ。


「よし、明日からやってやるぞっ!」


 私は絶対に屈しない。


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