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UNSPOKEN BLOOM  作者: つむろ.


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3/4

七月一日【file. 3】

「春日隊員……」




私の声は震えていた。

目の前の男から放たれる霊気は、夏の湿った空気をナイフのように切り裂き、私の肌に無数の微細な傷をつけるような錯覚さえ覚えさせる。




「お前らが殺らねぇなら二人とも俺が殺る。そこを退け」




事務的な、あまりに事務的な宣告。

彼にとって、目の前で苦しむ少女を殺すことは、道端のゴミを掃くのと同義なのだ。

その残酷さに、私の奥歯が鳴った。




「っ……!待って下さい……!この子を倒してしまったら、元人間を殺したことになるし、倒れている子だって、まだ目を覚ましていないんだから影厄かもしれない。

それでもG.H.O.は構わないんですか」


「あぁ。そいつはもう人じゃない。倒れている奴も、人じゃなければここら一帯が危うくなる。

目の前の命を救う為に殺すなら安いものだ」


「命を値踏みし、切り捨てることが、貴方達の正義なんですか……!」



叫びは、夜の渋谷のビル群に吸い込まれ、消えた。



「私だって、見ず知らずの厄霊ならすぐに片付ける!……でも……もう見ちゃったから……。

人間の姿を見ちゃったから……私は……」


「なら、そいつを人間として生かしたまま処理する方法があるのか?あ゙?」


「……っ、そんな異能力は……ありません……。でも……っ、貴方達の考えは正しくない。

それは私と公が一番知ってる」


「……皐月」



喉の奥が熱い。悔しさと無力さが混ざり合い、視界が滲む。

公が、私の前に一歩踏み出す。

その背中は、いつになく冷え切って見えた。



「……公?」


「春日隊員」


「?」


「すみません、今の僕らじゃこの厄霊は手に負えない。今回はお任せしてもよろしいでしょうか」


「公……ッ!」


「皐月。春日隊員の質問にすら答えられない僕らじゃ、無理なんだよ。救いたいって思いだけで救えてたら、今頃霊なんて存在しない」



言葉が出なかった。正論という名の礫が、私の胸を正確に貫く。

無力な私たちは、ただ処刑を見届けることしか許されないのか。



「ッ……」


「……わかった。最小時間で済ませる。〝反逆〟」




春日が指を鳴らした瞬間、大気が爆ぜた。

視界が歪むほどの圧力。

抵抗する間もなく、厄霊と化した少女の輪郭が、内側から裏返るように収束していく。

断末魔さえ許さない、完璧な「排除」。

それが国家の、G.H.O.のやり方なのだと思い知らされる。


―――ああ、こうして私は「個」を切り捨てる世界に慣らされていったのだ。

三年前のあの日、この光景を、私はどんな目で見つめていたのだろう。


しかし、その静寂を破ったのは、もう一つの異変だった。




「うっ……」




塵となった少女の傍ら、絶命したと思われていたもう一人の少女が、ゆっくりと上体を起こした。



「……!もう一人の人が起きて……!」


「あれ、ここ……どこ……?」


「……え、」


「あ、貴方達は……?」



人ならざる力を宿しながら、人の心を失わなかった存在。

その泥中の蓮のような奇跡を前に、少女は虚ろな瞳で私たちを見上げた。

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