七月一日【file. 1】
六月二十日。PM:02:15。
東京都練馬区、G.H.O.地下実験区画死霊発生。
発生源:八級の霊寄生体による暴走。
死者:二名。
G.H.O.第六鎮圧部隊、隊員が駆け付け処理済み。
六月二十二日、AM:01:43。
東京都杉並区、インターチェンジ死霊発生。
発生源:六級の寄生体による暴走。
死者:八名。
G.H.O.第七鎮圧部隊隊長が駆けつけ処理済み。
七月一日、PM4:21 。
東京都渋谷区、十字路にて霊発生。
発生源:四級の寄生体による渋谷区壊滅。
死者:0名。物怪による寄生:一名(意識あり)。
G.H.O.第ニ鎮圧部隊隊員が駆けつけるも、大和霊総合センター所属のフリーランスの隊員によって処理。
八月十三日、AM:11:54。
東京都全域にて霊大量発生。
発生源:Unmeasurableの霊による寄生体実験。
死者:およそ二千万人。
国家滅亡。
【G.H.O.全隊員及び、大和霊総合センター所属フリーランスの全隊員行方不明】
……何てくだらない予言がここ、大和霊総合センターにある資料に突然書き加えられていた。
淡々とした筆致に、感情のかけらも感じないフォント。
きっとこの予言は一度パソコンかスマートフォンで入力された物だろう。
実にくだらない。
こんな予言ごときでこの世界の不条理をねじ曲げられると思っているのか。
七月一日。
学校帰りに寄った仕事先で予言を見つけたのは私・皐月みやび。
普段は高校一年生として、そして放課後はこの霊総合センターの助手として二つの仮面を使い分ける異能力者だ。
『ではここで臨時ニュースです。六月二十二日に東京都杉並区、インターチェンジにて起きた自動車による玉突き事故ですが、現在の所、何の情報も得られておりません。
このことに対して政府は……―――』
ミーン、ミーン。
ミンミンゼミの鳴き声が事務所の外にある木から聞こえる。
数千万人が死ぬという絶望的な予言を読み、隠蔽されたニュースを聞きながら、耳に届くのは平凡で、どこか苛立たしい夏の日常の音。
しかし、この日常こそが私が守り抜かなければならない物なのだ。
Level.Kと帯に書かれた黒いファイルを事務所の端にある銀色に輝くデスクの上に置く。
「あれ、皐月?もう来てたんだ」
「公。課題はちゃんとやって来たの?」
「うん。先生に怒られながらだけど……」
ウィーン、と自動ドアが開いた先にいたのは、ここ大和霊総合センターの二代目候補であり私の幼馴染でもある、大和 公。
桃色の髪を靡かせながら、頭をかく彼に色々と確認をする。
課題の事やこのセンターの事、そして、これからの事。
今日依頼はなかったが、もしかするとまたG.H.O.から出動要請が来るかも知れない。
行きたくはないが、困っている人は助けたいのでいつも公と二人で現場へ向かっている。
G.H.O.とは、国家霊鎮圧部隊の事。
物怪を寄生させた少年少女たちを使い、霊わ鎮圧しようとしている部隊だ。
しかし、もちろん私はそこには所属していない。
実力がないから?
いや、違う。
実力がありながらも所属しないのだ。
―――今世紀最大の異端児。
それが、私の異名。
公はそれに付き合わせた、ただの幼馴染だ。
しかし、実力は相当。
国家が欲しくてたまらない私と公がここにいるからこそ、成り立っている日常がある。
その日常を壊さないためにも私たちは、闘い続けなければならない。
一人で浸っていると、デスクに置かれてある固定電話が音を轟かせた。
これは三年後、敗戦の日に思い出した私の記憶だ―――。




