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クウォーク大帝国 潮の楔  作者: 北見剛介


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8/11

特訓

「おーい、ファンプク。いるかぁ?」


「なんだよ。ライサンダー。今日はどうした?まだこんな早い時間なのに」


プライエストを見送った翌日、朝に俺は誰よりも早く起きて、海に潜ってファンプクを呼んだ。プライエストがいつ帰ってきても良いように早いとこ、ファンプクに乗れるようになる必要があると思ったからだ。


そういえば、プライエストはファンプクに会ったことがなかったな。以前紹介しようと思ったが、海に潜れない、と言われ驚いた。その時初めて、海の神様を信仰している部族以外は海の中で息が続かない、って知ったんだよなあ。


「ファンプク、俺を乗せてくれないか?」


「えっ」


いきなり切り出したからだろうか、ファンプクは驚いて固まってしまった。


「おーい、ファンプク。大丈夫か?」


「あ、ああ。ってお前、今俺に乗せてくれって言ったか?」


「そうだ。聞こえてなかったか?」


「いや聞こえてた。聞こえてたからこそびっくりしたんだよ。お前まだ12歳だろ?スイチョウに乗るには少なくとも」


「16歳以上、だろ?そのぐらいにならないと、スイチョウを乗りこなすことはできない。16歳以下だと力が足りずにスイチョウから振り落とされてしまうから。もし大人たちに見つかったら、すごく叱られるだろうな」


「そう。わかってるなら・・・」


「そんなことは分かってる。でも、やらなきゃいけないんだよ。男と男の約束なんだ」


「約束って?」


そうして、ライサンダーはプライエストとの約束の話をした。


「なるほどな・・・・だが、やっぱり」


「頼む。ファンプク。大人たちにはばれないように練習するから!」


「・・・あんまり気は進まないが・・」


「よっしゃ!ありがとう、ファンプク」


そうして練習を始めたが、16歳以上にならないとスイチョウに乗れない、と言われている理由をすぐに実感した。伝承に出てくるドラゴンのような形、さらに二メートルほど体長、そんなファンプクが水中を自在に走り回れば、ファンプクの触覚にしがみつくのだけでやっと。こんな状況でファンプクを自分の思う方向に動かすなんて無理だ。


スイチョウに乗るには、体の前側の部分をスイチョウに押し付ける必要がある。そうすることで水の抵抗が減り、水中を自由自在に駆けることが出来るのだ。しかし、今の自分ではとてもそんな姿勢をとることはできない。シャガル族の男たちがなんでみんな屈強な体をしているのかがわかった。


こんなとこで諦めてたまるか、そう思い何時間も練習を続けたが、一向に上手くなる気配はなかった。ずっとファンプクをつかんでいた手は、切れてうっすらと血がにじんでいた。


「な?だから言っただろ?お前はまだ12歳、そんな焦らなくても・・・」


「ダメなんだよ!!次プライエストと会うまでに、ファンプクに乗れるようになってなきゃダメなんだ。男と男の約束なんだ!!」


「あのな、そのプライエストっていうのとの約束は、一人前のシャガル族の男になれ、ってことだったんだろ?だったら他にも・・」


「乗るったら乗る!そう決めたんだ!」


「わかった。わかった。じゃあ練習を続けよう。ただやみくもにやっても意味ないだろう?まずは大人たちの漁の様子を見て、どういう風に乗ってるかを観察することから始めてみたらどうだ」


なるほど、大人たちの漁の様子は今まで見たことは何回もあるが、スイチョウの乗り方だけを注意して見たことはなかったはずだ。


「ほら、そろそろ来るぞ」


岩陰からそっと様子を見てみると、大人たちがスイチョウに乗り、銛を片手にものすごいスピードで水の中を駆けている。逃げ回るスーファの群れを何人かで追い込んで、その先ではアズバンを含む4人が網をもって群れを待ち構えている。この網は、他の族が山の川の生き物をとらえる網とは少し違うのだ。

他の族の漁は、川底に網を敷いて、その上に餌を固定しておく。その餌を食べている最中に網を上げる、という漁のため網の形は真っ平だ。


しかし、シャガル族の網は奥のほうに行くにつれて、広くなるような筒状になっている。つまり一度群れが入ってしまえば、たとえ出ようと思っても出ることはできない。


そうしてとらえたスーファを海岸までもっていき、炊事をしてくれる妻たちに引き渡す。余った分は頑張ってくれたスイチョウに餌として渡す。それが終わるとまた新しい獲物を探しに出かけるのだ。


「思った以上に下半身に力が入ってるんだな。腕で触角をつかんでるだけじゃない」


「なるほど・・・しかもお前はまだ12歳。腕の筋力が大人よりない分、より下半身でカバーしなくちゃいけないってことか」


「そう。多分股のところでファンプクを思いっきりはさむ感じかな」


「じゃあ、それを意識してやってみるか」


「わかってると思うけど、スピードを加減しないでよ。ファンプク」


「当然だ。やるからには本気でやる」


そうしてまた特訓を再開した。ファンプクがだんだんスピードを上げてくる。ここで腕の力だけに頼らず、下半身を使うことが大事なんだ。飛ばされそうになるが、股に思いきり力を入れる。そうすると先ほどよりも、体が安定するのがわかった。ここで体の前側をファンプクにつける!!すると正しい姿勢でファンプクに乗れた。やった!やったぞ!


そう思った数秒後には、体がファンプクから投げ出されていた。


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