友との約束
「もう行っちゃうの?いつもはもう少し長くいるのに」
「すまないね、ライサンダー。少しやらなくてはいけないことが出来てしまってね」
「そっかぁ・・・・」
もう少し色々な話を聞きたかったなぁ・・・・
「ライサンダー、これを受け取ってくれないか?」
「何、これ?」
「僕の故郷で作られたネックレス、首飾りだよ。まぁ、お守りみたいなものさ」
真っ赤に燃えるような色をしている紐の先には、透き通るような青色の石がつけられている。まるで海の色みたいだ。それにただの石なはずなのに、石そのものがピカピカ輝いているように見える。海にも、磨けばこういう風に光る石は落ちている。でも、それはあくまで太陽の光にあてた時の話。こんな風に自分から光る石は見たことがない。
「この石、プライエストの故郷でとれたの?」
「ああ。僕の集落ではこんな石がたくさんとれる。その石をこういう風に加工したりして、生活しているんだ」
「そういえばプライエスト。この前の手紙で一度故郷に帰ったって言ってたよね。プライエストの故郷ってどんなとこなの?」
「そうか・・・・ライサンダーにまだ話したことはなかったね」
「うん」
「僕がむかし、魔法使いの話をしたことを覚えているかい?」
「もちろん。伝説の種族で、不思議な力を使うことが出来たんでしょ」
「僕がいた集落は、その魔法使いの末裔が集まる場所なんだ」
「・・・・・・」
「驚いたかい?」
「・・いや、そんなに」
「えっ」
「そう考えれば、納得がいくなって。今まで聞いた話の中で一番詳しいっていうか、リアリティあったの魔法使いの話だったから。それに、プライエスト、初めて会った時から見た目が全然変わってないし」
「ああ・・・なるほど」
「見た目が変わらないのも魔法使いの末裔だから?」
「まあ、多分そうだと思う。僕の集落の中でもそれはまちまちだけどね」
「じゃあ、魔法とか使えるの?」
「使えないよ。僕はあくまでも末裔だからね。魔法使いじゃない」
「じゃあ、今までの旅の生活はひょっとして、魔法使いとして覚醒するため・・とか?」
「それも違う。ただ自分の興味が赴くままに旅してただけだよ」
そこまで言うとプライエストは真剣な顔になって、ライサンダーの方に手を置き、目線を合わせた。
「いいかい、ライサンダー。君はこれからの人生でいろいろなことがあると思う。楽しいこと、もちろんつらいことも」
「どうしたの、急に」
「いいから今は黙ってて。もしつらいことがあったら、自分が正しいと思うことをやりなさい。自分がすべきことをやりなさい。いいね?」
「う、うん。わかった・・」
「それと、このお守りを肌身離さず持つこと」
「ねぇ、なんかおかしいよ。急にそんなこと言って。もう二度と会えないみたいな言い方しないでよ!!またここに来てよ。また、俺にいろんな場所の話聞かせてくれよ!」
「もちろん僕もそうしたい。だけど今回はちょっと危険が伴う旅になりそうなんでね。万が一のことがあってはだめだと思って」
「なら行かなきゃいいじゃん!!」
「ダメなんだよ。これは僕にしかできないことなんだ」
そう静かに言うプライエストを見て、はっとなった。ここで俺が感情をそのままプライエストにぶつけたら、母さんの時と同じじゃないか。やっぱり俺はだめだ。体はでっかくなったし、泳ぎは子供ならだれにも負けないけれど、心は6歳の、あの時のままだ。
「そっか。ならしょうがないね。でも、一つ約束してほしい」
「なんだい?」
「絶対に生きて。生きて、ここにまた来て。今度は俺が料理作るから。料理の腕上げて、プライエストを精一杯もてなして、スイチョウに・・・・ファンプクに乗れるようになって、一人前の男になって見せるから」
「そうか・・じゃあ僕は必ず生きてここに来る、ライサンダーは僕と会うまでに一人前のシャガル族の男になる、そういう約束だね」
「おう!男同士の約束だ!」
二人はがっしりと握手を交わした。これは、男同士の約束、絶対に破ってはいけない。アズバンも昔、そう言っていた。
「あと、欲を言えばタレッサに告白できてればいいなぁ、なんて」
「は、はぁ?なんであいつの名前が出てくるんだよ。大体あんな暴力女、誰が好きになるってんだ」
「ホントかなぁ?」
意味ありげな笑みを浮かべるプライエストに、真正面から言い返せないのが若干悔しい。いや、待て。確かにタレッサはなかなか美人だ。すぐに手が出るという欠点さえ除けば、非常に良い女だと思う。だが、だからと言って、俺があいつのことを好きになんか・・・
「まぁいいや。とりあえず行ってくるよ!」
「お、おう。気を付けて!」
慌てて手を振って見送ったが、正直最後の言葉が心に残っていて、それどころではなかった。
「プライエスト、いきなり何言い出すんだよ・・・・・」
その後も、
「なんで俺がタレッサなんか・・・」
とぶつぶつつぶやきながら、ライサンダーは家に戻った。




