最初の友達
「やぁ、ライサンダー。待ってたよ」
「やっぱりもう来てたんだ」
いつも緑の丈の長いコートを着て、見たことないような楽器を持ち、白い肌に金髪、外見はライサンダーに似ているが、俺とは違い、どこかはかなげな雰囲気を持つ青年、プライエストだ。
世界中の色々な場所を見てまわっているのだという。本人曰く、世界とは何か、神様とは何か、を知りたいらしい。それが、色々な場所を見てまわることにどうつながっているかは、あまりよくわからなかったけど。
両親がいなくなったあとライサンダーは、周りを遠ざけていた時期があった。今考えれば、弱いところを見せようとしたくなかったのかもしれない。
そんなときに、たまたま集落に来ていたプライエストと出会った。プライエストが聞かせてくれるむかしの不思議な話、山や森なんていう他の自然や動物たちの話は、ライサンダーにとって新鮮で、とても面白いものだった。
「ねぇ、プライエスト。今日はどんな話をしてくれるの?」
「そうだなぁ。じゃあ今日は魔法使いの話をしようか」
「魔法使い・・・・伝説の?本当にそんな人たち居るの?」
「そうだよ。むかし、むかしのお話でね・・・・」
そんな話を夜までせがんでも、プライエストは嫌な顔一つせずに話し続けてくれた。あの頃のライサンダーにとって、プライエストは親にも似たような存在だったと思う。
そんなプライエストがまた新たな旅に出てくる、と言ったときは少し悲しかったが、寂しくはなかった。そのころにはタレッサやフランシュ、ベティなんかの友達もできていたから。
今でも1か月に1回は行商人を通じて手紙が届くし、半年に1回はこうしてこの集落に来てくれる。そしてライサンダーにまた不思議な話をして、旅に出て行く。
「で、今回はどんな話をしてくれるの?」
「そうだなぁ・・・・じゃあこの前行った不思議な集落の話をしようか」
「うん、聞かせて、聞かせて!!」
「人は基本的に自然とともに生きているよね?」
「うん。海でも、山でも、森でも、自然がないと人は生きられないよね」
小さいころ口酸っぱく長老や、両親に言われたことだ。
「自然とともに人は生きる。自然に敬意を持て」
ライサンダーもその通りだと思う。海がなければ自分たちは生きていけない。
「でもね、その集落の周りには自然がないんだ」
「山も森も、海もないの?」
信じられない。人は自然からの恵みを受け取り、何か他のものが欲しければ行商人の持っているものと交換する、そういうシステムなはずだ。でも自然がなければ、その受け取るべき恵みがない。
「その集落では、道具を作って、それを行商人が持っている食べ物と交換するんだ」
「道具?漁のための網とか銛とかってこと?」
それならライサンダーも自分で作れるし、そのほうがしっくりくる。他の人たちもそうだろう。わざわざ行商人に渡しても、それをもらう人なんているのだろうか。
「そう。そういう道具をよりよくするのさ。例えばライサンダーが持っている銛は常に刃の部分、獲物を突き刺す部分がむき出しだよね。でもこれだと危ないなぁって思ったことはない?」
「あるある。波に巻き込まれると、たまに刃が自分のほうに向いて、危ないんだよなぁ」
「そういうことを避けるために、彼らは銛の中を空洞にして、中に刃をしまえるようにしたんだ」
「ああ、なるほど。それなら危なくないし、ほしいかも」
「だろう?こういう風に自然の恵みに頼らなくても生きている人たちもいるんだ。だから彼らには神様がいない」
「神様がいない・・・・・ああ、そうか。自然がないから」
基本的に神様は、自然にいるものだと言われている。その集落が恵みを受けている自然の神様を信仰するのが普通だ。しかし、その自然がないのなら神様もいないのは、当たり前だろう。
「ほかにもいろいろな場所があってね・・・」
そこからプライエストはいろいろなことを話してくれた。山のほうに行ったときに、凶暴なズボーに追いかけられて危うく食べられかけた話や、星の動きで占いをする方法、旅先で出会った不思議な道具、たまたま見つけた魔法使いの古い遺跡、そのどれもが俺にとっては新鮮で、面白かった。
「ライサンダーは最近どうなんだい?」
「俺?俺はねぇ・・・・」
シャガル族の古代文字を何となくではあるが、読めるようになったこと、タレッサにかくれんぼで連勝したこと、他にもたくさんのことを話した。一方的に俺がまくし立ててただけだったけど、プライエストは、二個に押しながら聞いてくれた。
夕飯は、二人でタレッサの家でごちそうになった。タレッサもアズバンも、クリムもプライエストを歓迎してくれた。タレッサは久々に会えたプライエストに興奮し、口にご飯が入ったまま、質問をしてご飯を飛び散らせ、クリムにきつい一発をもらっていた。あの時のプライエストの顔と言ったら!!今までにない表情で少し面白かった。
そして、翌日プライエストはまた別の場所に行くと言って、集落を出て行こうとしていた。




