表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クウォーク大帝国 潮の楔  作者: 北見剛介


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/11

炊事のひと時


それから毎日、ライサンダーは海に潜った。海に潜れば、父さんと母さんに会えるかもしれない。会ったら何を話そうか、母さんは最後に生意気な態度を許してくれるだろうか、そんなかすかな希望を抱きながら、ライサンダーは潜った。それでもやっぱり父さんと母さんが、姿を見せてくれたことはない。


成長した、今ならわかる。あれはただぐずる自分の子供を納得させるために言ったのだ、と。


「そうだ、ライサンダー。今日夕飯家で食べる?あの人、今日大漁だったみたいで、わたしたちだけじゃ食べきれないのよ」


「えっ、いいの?」


「ええ、もちろん」


やった!!クリムの料理はとてもおいしい。できるなら毎日食べたいぐらいだ。流石にそれは申し訳ないと思って、普段は自分で食材を取ってきて食べてるけど。


 「二人とも早すぎるよぉ」


 「そんなに急がなくたってよかったじゃない」


息をはあはあ言わせながら、ようやくフランシュとベティが炊事場に到着した。二人とも顔を真っ赤にしている。


「おう、二人とも。遅かったじゃねぇか。そんで、どっちが勝ったんだ?」


二人の近くにいる漁師がやけに食い気味に二人に聞いた。そんなに子供同士の遊びの結果が気になるのはなんでだろう?


「勝ったのは・・・・・・ライサンダー!!」


二人が声を合わせて、宣言すると炊事場にいた男たちが、あるものは歓声を上げ、あるものは頭を腕で抱えた。


「だから言ったろう。ライサンダーが勝つって」


「そんなこと言ったって。今日タレッサ言ってたぜ。今日は絶対に負けない。とっておきの秘策があるんだって」


「ライサンダーが見破ったんだろうよ、その秘策とやらを」


「あいつ、親父と違って頭が回るからなぁ」


そんな会話をしながら、男たちは金を渡したり、もらったりしているようだった。そんな光景をしばらく見て、ライサンダーはピンときた。


「まさか・・・・・・12の子供のかくれんぼの勝敗にお金かけてたの?」


ジト目でアズバンを見上げれば、アズバンはばつが悪そうな顔をしてごまかすように笑った。


「ハハハ・・・・あいつらが盛り上がっちまってな」


「あなた、ごまかさないで。もう、本当に何考えてるのよ」


「で、お父さんはどっちにかけてたの?もちろん私の勝ちによね?」


身を乗り出し、口をもごもごさせながらタレッサが聞いた。


「あなた?まさか自分の子供の遊びを賭け事の道具にはしないわよね?」


「いや、俺はかけてないぞ。本当に、本当だって。クリム。だからその顔はやめてくれ」


クリムは拳を上げ、アズバンをにらみ、今にも殴りかからんとするような表情だ。多分今のクリムに会ったら凶暴な海の化け物、グンバも尻尾を巻いて逃げ出すと思う。


怒られていないはずのタレッサでさえ、顔が青くなり、今にも母に土下座しそうな勢いだ。本当に悪いことをしたらああいう感じで雷を落とされているのか。


少しだけタレッサが、かわいそうになった。


「本当に?」


「本当です。本当だって。何ならあいつらに確認してみろよ」


「そうね・・・ねぇ、うちの人ってその賭けに乗ってないわよね?」


クリムが口の周りに手を当てて、金を集めている男連中に聞いた。


「ああ、なんか途中までは割と乗り気だったけど、急に青い顔になって俺はやめとくって・・・・・」


だんだん禍々しいオーラのようなものがクリムの体から放出されているような気がする。あれ、クリムって昔絶滅したはずの魔法使いの末裔だったりするのかな。


遠くにいるはずの彼らにもオーラのようなものが見えたらしく、顔が引きつっているのがわかった。そしてなぜ、そんなことになっているかの理由も思い当たったらしい。


「いや、まぁ、クリム。結局アズバンはやらなかったわけだから・・・・・」


「・・・・・そうね」


クリムはもう彼らには用はないらしく、くるりとこちらを向いた。彼らはしばらく凍り付いたようにこちらを見ていたが、もう自分たちに矛先が向かないとわかると、先ほどより若干静かになって金の受け渡しを始めた。


「待て、待ってくれ。クリム。俺はやらなかった!そこに、あの、情状酌量の余地を認めてくれても」


「そうね。確かに。でも一瞬やろうとしたことは、事実みたいだから・・・・」


その直後、ボンという大きな音が聞こえた。クリムがアズバンの頭を殴ったのだ。ただ少し加減はしたらしく、アズバンは痛がりこそすれど気絶はしていない。


本気で殴れば屈強な海の男であるアズバンでさえ、一撃ノックアウトだ。一回その現場を見たことがあるが・・・・とても恐ろしいものだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ