表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狭間の光  作者: 半沢真
9/10

第9章 社交の場の心理戦

シャンデリアの光が反射し、会場は絢爛な金色に包まれていた。

玲奈は胸元に忍ばせた小型カメラが点滅するのを感じながら、黒幕――理事長の目を見据えた。


「あなたのやっていることは、もう隠せません。帳簿も映像も、すべて外部に送ってあります。」


理事長はワイングラスを軽く揺らし、笑みを崩さなかった。

「若いな……玲奈君。権力というものを甘く見すぎだ。帳簿? 映像? そんなものは“編集”されればいくらでも形を変える。世間は、私が見せたい真実しか信じない。」


周囲の客たちは微笑みを浮かべたまま談笑を続けているが、耳は二人のやり取りに傾けられていた。

まるで舞踏会の仮面をかぶった観客のように。


玲奈は一歩踏み出し、声を落とした。

「では、なぜ今こうして怯えているのです?」


理事長の目が細くなった。

「……何のことかな?」


玲奈は淡々と告げた。

「あなたの手は震えている。グラスを落とさないよう、必死に抑えている。でも、カメラは正直です。ここにいる誰もが、その姿を見ている。」


会場の空気がわずかに揺れた。

理事長の取り巻きの一人が不安げにささやく。

「……理事長、落ち着いてください。」


理事長は深呼吸し、口元に再び笑みを浮かべた。

「なるほど。君は頭が切れる。だが、ここで私を告発したところでどうなる? この場の人間は皆、私に恩義を感じている。君の言葉に耳を貸す者などいない。」


玲奈は唇を引き結び、鞄から小さなリモートスイッチを取り出した。

「だから……私は直接“世間”に聞いてもらうことにしました。」


シャンデリアの下、スクリーンが突然切り替わり、理事長の不正会議の映像が流れ始めた。

会場のざわめきが一気に膨れ上がる。

「これは……」「理事長が……?」


理事長の顔から血の気が引く。

「馬鹿な……! この会場の回線は私が――」


玲奈は鋭く言い放った。

「会場の回線じゃありません。外にいる数千人が、今あなたの声をライブで聞いています!」


場の空気が一変した。

取り巻きの数人が理事長から距離を取り、視線を逸らした。

彼の権力の網は、静かにほつれ始めていた。


理事長は歯を食いしばり、声を低く震わせた。

「……まだ終わっていない。君は……必ず消える。」


玲奈は冷たい微笑みを浮かべ、静かに答えた。

「窮地を脱するのは、いつだって“真実”の側です。」


会場は記者と警察の突入で騒然となった。

スポットライトに照らされる中、理事長の権力は音を立てて崩れ去っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ