第8章 黒幕との最終決戦
片桐が連行されたあとも、玲奈の胸には重い影が残っていた。
――黒幕はまだいる。
片桐の最後の言葉は虚勢ではなかった。
数週間後。
玲奈は証人保護プログラムの下、仮名で新しい生活を送っていた。
だが夜ごと、監視されているような気配に目を覚ます。
そしてある日、差出人不明の封筒がポストに届いた。
中には、1枚の写真。
霞が関の高層ビルの一室で、背を向けた大柄な男と握手する片桐の姿。
裏には赤いペンで一言――
「次は彼だ」
玲奈は震える手で封筒を握りしめた。
黒幕は、政財界に繋がるさらに大きな存在。
片桐は駒にすぎなかったのだ。
---
その夜、玲奈は再び片桐を訪ねた。拘置所の面会室。
彼は痩せこけ、憔悴していたが、目だけはぎらぎらと光っていた。
「……来たか。どうだ、自由は味わえたか?」
「黒幕は誰?」玲奈はまっすぐ問いかけた。
片桐は乾いた笑いを漏らした。
「教えてどうする。奴は、国家そのものだ。潰そうとすれば、君も潰される。」
玲奈は静かに答えた。
「それでも、私は闇に飲まれたままじゃいられない。」
片桐は数秒、彼女を見つめ……やがて囁いた。
「――“理事長”。名前はそれ以上言えない。だが、奴の牙城は近い。」
---
数日後。
玲奈はジャーナリスト仲間の協力を得て、理事長と呼ばれる男の存在を追い詰めた。
その正体は、大手財団のトップにして複数の政治家を操る影の実力者。
帳簿の数字も、映像の裏付けも、最終的には彼の権力へと繋がっていた。
決戦の舞台は、彼が主催する「慈善パーティー」。
表向きは華やかな夜会。だが裏では、資金洗浄と密談が行われる秘密の場。
玲奈はドレス姿でその会場に潜入した。
胸元に忍ばせた小型カメラが、最後の武器だった。
大広間の中央。
「よく来てくれたね、玲奈君。」
肥えた体をスーツに包んだ“理事長”が、余裕の笑みで手を差し伸べた。
玲奈はその手を取らず、毅然とした眼差しで言った。
「――ここで終わらせます。あなたの闇を、すべて。」
会場のシャンデリアの下、黒幕と玲奈の最終戦が幕を開けた。