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エピローグ
世界は何も変わらなかった。
街には朝が来て、子どもたちは学校へ向かい、人々は働き、笑い、食卓を囲む。
その頭上に、無数の死が静かに漂っていることを、ほとんどの人間は知らない。
核抑止は戦争を防ぐ。
だが、それは平和を与えるのではない。
ただ、破滅の時を先送りにしているだけだ。
セリル・カインは窓の外の夜空を見上げた。
星は美しく、そして遠い。
あの光が地球に届くまでの時間の中で、人類は何度この引き金に触れるのだろうか――。
抑止の果てにあるのは、安らぎではない。
永遠の臨界の中で眠る、怪物の静かな寝息なのだ。