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 応接室に案内され少しの間待っていると、伯爵夫人がリアを抱っこしながら訪れた。




「眠たいみたい。」と言いながら伯爵夫人はリアをルーカスが腰掛けているソファの隣にそっと寝かせた。リアはウトウトしている。ルーカスは小声で「眠たいのにごめんね。」と呟き優しく背中を撫でた。




(やはり猫は可愛いな。)

(癒される。)




 すると伯爵夫人は「では、ごゆっくりどうぞ。」と言い部屋を出て、扉を開けたままにしようしとしたので「リアは逃げたりしませんか?」とルーカスは心配になり聞いた。




「リアはお利口さんだから大丈夫よ。」

「自分で部屋に戻るし、絶対一人で外に出たりしないの。」




「賢いですね。安心しました。」




 伯爵夫人はニコニコしながら退室した。




ーーーーー




 トクン…トクン…




 心地良い心音が聞こえる。




(暖かい。)

(ゆりかごに揺られているみたい。)

(いい匂いがする。)

(何だか安心する。)

(ずっとこうしていたいな。)




 黒猫セシリアはうとうとしながらもゆっくり目を開けた。背中を撫でられ、セシリアの下にはゆっくり上下に動く胸板があり、目を瞑ったルーカスの顔が目の前にあった。




「…にゃ?」(…?)




「あぁ。起きたかな。」




 ルーカスはソファで仰向けに寝ながら上半身にリアを乗せ、背中を撫でながら一緒にうとうとしていた。




「可愛いなぁ。」ルーカスはリアの頭に頬ずりをする。




 黒猫セシリアは一気に目が覚めた。飛び起き尻尾をピンと立てた。




「にゃーー!!」(きゃーー!近い!!)




「あぁ。ごめん。驚かせちゃったかな。」そっと背中を撫でながら優しい声で話しかける。




「…にゃ。」(驚いたけど、、、)

「にゃあ。」(嫌ではなかったかも。)




 撫でられている背中が暖かくて気持ちいい。黒猫セシリアはまたルーカスの上で丸くなった。




 目尻の下がったルーカスが小さな声で話し出す。




「リア。私は昔から猫が好きなんだ。頑張ってお世話してもあまり懐いてくれなかったなぁ。」



「にゃ…」(ルーカス様は優しいのに…)



「リアは会ったばかりなのに撫でさせてくれるし抱っこもさせてくれる。それにとても癒されるんだ。」



「にゃー。」(私もルーカス様の手は暖かくて癒されます。)



「癒されるといえば、昔一度だけ見知らぬ黒髪の少女と話をした時もとても穏やかで心地良かったんだ。」



「にゃっ。」(それって。。。)



「不思議と何でも話したくなるんだ。あの時の子もリアも。」



「にゃ?」(もしかして?)



「今だに忘れられなくてね。」

「たった一度話しただけの子の事を五年も考えているなんて気持ち悪い男だろう?」

「彼女の素性もわからなかったし。」

「こんな事誰にも言えないんだ。」



「にゃっ!」(五年!)

「にゃー!」(ルーカス様!それ私です!)



 伝える術も無い黒猫セシリアは喉をゴロゴロ鳴らし前足でふみふみした。




 するとルーカスは突然目を輝かせ「この仕草は!慣れてくれたんだね!」と言い、リアを抱きかかえガバリと起き上がった。




 さらにルーカスはリアの頭に頬擦りしてから思いっきり吸った。




「にゃっ!」(キャー!それはくすぐったいし恥ずかしすぎるからやめてー!)




 黒猫セシリアはルーカスの腕からするりと抜け出し床に飛び降りた。




「あぁ。ごめん。これは嫌だったかい。もうやらないからもう少し抱っこさせてくれないかな。」




「リーア。」

「おいで。」

 優しい声で両手を広げたルーカスが呼ぶ。




 黒猫セシリアはいっぱいいっぱいだった。ぴょんと飛んだ後、一目散に自室に走って戻った。




「あぁ。リア…」ルーカスはがくりと肩を落とした。




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