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 伯爵家に到着すると、黒猫を抱き優美な身のこなしをした亜麻色の髪で薔薇色の瞳の女性に出迎えられた。部長に続いてルーカスは屋敷に入る。



「おかえりなさいませ。」女性は言った。



「ただいま戻った。まだ仕事中だがな。」ニヤリと部長は笑った。



「あら。まあ。」黒猫を抱いた女性はくすりと微笑んだ。



「こちらは部下のルーカス君だ。」

「そしてこちらはここの領地経営をしている私の妻のソフィアだ。」




 部長は二人をそれぞれ紹介した。




 ルーカスは頭を下げ挨拶をした。「初めまして、伯爵夫人。財務部のルーカスと申します。本日からお世話になります。よろしくお願いいたします。」




 伯爵夫人のソフィアは「まぁ。そんなにかしこまらないで下さい。こちらこそよろしくお願いします。ゆっくりしていって下さいね。」とにっこり微笑んだ。




 すると伯爵夫人の腕の中にいる黒猫が突然鳴き出した。



「にゃっ…」(もしかして…)


「にゃにゃ!」(あの時の!)


「にゃー?!」(ルーカス様では?!)




 セシリアがルーカスと最初で最後に会った時から五年経つ。すっかり大人になったルーカスに黒猫セシリアはまた会えて嬉しくなり、とても気分が高揚した。




「とても元気な猫ですね。」ルーカスは言った。




「猫は苦手かい?」部長は聞いた。




「いえ。動物は好きです。特に猫は。」

「子供の頃、屋敷に迷い込んだ猫を天寿を全うするまでお世話をしていました。」実は無類の猫好きのルーカスであった。




「少し撫でさせていただいても良いですか?」ルーカスは既に手を伸ばしている。




「では、抱っこをどうぞ。」伯爵夫人は黒猫セシリアを渡そうとする。




「にゃー!」(恥ずかしい!)

 黒髪セシリアは身を捩った。




「嫌がっているのかな…」しょんぼりするルーカスに夫人は「大丈夫よ。恥ずかしがっているだけだと思うわ。」と言って黒猫セシリアを抱っこさせた。




「にゃっ」(恥ずかしい。)




「とても綺麗な毛並みに薔薇色の目。可愛いなぁ。」黒猫セシリアの顔を覗き込み抱きかかえ、撫でながらルーカスの目尻が下がっていった。




「にゃぁ…」(暖かいなぁ…)


 黒猫セシリアはポカポカ暖かくなり、うとうとし始めた。




「大人しくなりましたね。名前はなんというのですか?」ルーカスは聞いた。




「…リアっていうの。」伯爵夫人は答えた。




「リア。女の子ですか?」




「ええ。」伯爵夫人はニコニコしている。




「名前も可愛いですね。」ルーカスもニコニコしている。




 一連のやりとりをじとりとした目で見ていた部長の様子にルーカスは気付かなかった。







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