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日常編4(事故)

因みに作者はギャルゲーやエ◯ゲ が好きです。

毛利くんは自分の昔のまんまです。

昼休み、教室の片隅。


「あ、クリアしたんだ?」

毛利傑がニヤリと笑いながら、健太からゲームソフトを受け取った。


「ああ、面白かったよ」


「でしょ? で、誰が一番好きだった?」

毛利が身を乗り出してくる。

健太は少し考えてから答えた。


「まぁ……幼馴染ヒロインの嘉音は鉄板だったな」


「わかってるじゃないか!!」

突然、毛利が机を叩いて立ち上がった。

「やっぱ幼馴染ルートこそ正義だよな!? いや、最初は距離が微妙なんだけどさ、そこから過去の約束が明らかになって、あのイベントで二人の距離が縮まるんだよ! で、クライマックスの選択肢! ここで幼馴染を選ぶことで、真のエンディングが——」


「……お前、めっちゃ早口だな」

健太は半ば呆れながらも、楽しそうに語る毛利を見て笑う。


そんな二人の様子を、たまたま通りかかった九条明が目に留めた。


「お前ら何の話してんの?」

「ん? ああ、ゲームの話」

「どんな?」


「恋愛ゲームだよ」

健太がさらりと答えると、明は少し驚いたように目を丸くした。


「へえ、お前が恋愛ゲームとか意外だな」

「いや、毛利が貸してくれた。初めてだよ。」

「それにしては結構語ってなかったか?」


「……まぁ、確かに面白かったしな」

健太が肩をすくめると、毛利が明を見てニヤリと笑った。

「九条くんもやりなよ。絶対ハマるから」


「え、俺も?……まぁ、せっかくだしやってみるかな。サンキュ」


明は苦笑しながら、毛利から「カオス♾️ラブ」のソフトを受け取った。




久住健太の「トラブル製造機」としてのエピソードは枚挙にいとまがない。

小学校からその特異体質は変わっていなかった。


小学校の運動会、健太はリレーのアンカーを任されていた。


足が速かった彼は、トップとの差をぐんぐん縮め、最後のコーナーでついに先頭に躍り出る。


しかし、その瞬間――グラウンドに迷い込んだ犬と衝突。


健太は大を避けて転倒し、後続のランナーたちも巻き込んで次々に転ぶという大惨事に。


結局、全員で助け合ってゴールし、運動会の歴史に残る珍事件となった。


ーーランドセル落下事件


ある日、健太は放課後に友達とじゃれ合いながら教室を出た。

ふざけてランドセルを振り回した瞬間、勢い余って窓の外へダイブ。


――ちょうど下を歩いていた校長先生の頭に直撃。

先生はそのまま尻もちをつき、ランドセルには健太の名前がしっかり書いてあったため、一瞬で犯人特定。


その後、健太は「校長先生にランドセルを投げつけた男」として伝説に。


ーー迷子の少女を助ける


下校途中、泣いている小さな女の子を見つけた健太。

迷子らしく、親を探して一緒に歩いていたが、通りがかりの人に怪しまれて通報される。

「小学生が幼児を誘拐しようとしている」と先生が駆けつける騒ぎになった。

結局、親が見つかり誤解は解けたものの、以降「人助け=トラブル」の図式が健太の中に刻まれることに。


ーー伝説の雪合戦


雪が降った日、健太はクラスメイトと雪合戦をすることに。

負けず嫌いの健太は、誰よりも大きな雪玉を作ろうと意気込んだ。


しかし、作った雪玉があまりにもデカすぎて坂道を転がり、駐車場の先生の車に直撃。


結果、大人たちが総出で雪玉を撤去することになり、健太は「雪合戦で車を破壊した男」として記録される。


こうした数々の伝説を残し、健太は小学校時代から「歩くトラブルメーカー」と呼ばれていた。


しかし、本人に悪気はない。


ただ困っている人を助けたり、全力で遊んでいただけなのだ。

それなのに、なぜか毎回トラブルに発展する。


この“体質”は成長しても変わらず、中学でも健太の周りにはトラブルが絶えなかった。




高校生活が始まって暫くしてからのことだった。


いつものように朝から騒がしいクラスの雰囲気の中、健太は自分の席に着こうとした。その時、担任の先生が少し沈んだ表情で近づいてくる。


「久住、ちょっといいか?」


何事かと訝しみながら廊下に出ると、先生はゆっくりと切り出した。


「……大川が、事故に遭った」

「え?」

「登校中に車と接触して、そのまま救急車で運ばれた。今、○○総合病院にいるらしい」


一瞬、耳を疑った。


陽菜が事故に?


確かに、彼女は身体が強くはなかった。

だが、病気ではなく、交通事故――?


先生の説明によると、陽菜は横断歩道を渡っている最中に信号無視の車に跳ね飛ばされたらしい。

すぐに救急搬送され、緊急手術が行われたという。


「今、容態は安定しているらしいが……目を覚ますかどうかは、まだ分からないそうだ」


健太は呆然とした。

隣で話を聞いていた明と麻奈美も、言葉を失っていた。


「……病院、行こう」

気がつけば、健太はそう口にしていた。


「おう、当然だな」

「私も行く」


明と麻奈美もすぐに頷いた。


そのまま、三人は学校を抜け出し、病院へと向かった。





病院に到着すると、受付で陽菜の病室を尋ねる。集中治療室の前には、陽菜の両親が座っていた。


「……健太くん、来てくれたのね」


陽菜の母親が、疲れ切った表情で微笑む。

「陽菜は、今……?」


健太の問いに、父親が重い口を開いた。

「手術は終わった。最悪の危機は脱した。……でも」


そこで言葉を区切る。


「頭を強く打ったのもあって、いつ目覚めるか分からない。いや……もう、目覚めないかもしれない」


その言葉が、やけに現実味を帯びて耳に残る。

目覚めないかもしれない。


つい昨日まで、同じ教室にいた幼馴染が。


それが突然、何の前触れもなく――。


「そんな……」

麻奈美が小さく呟く。明もいつもの軽い調子はすっかり影を潜め、腕を組んだまま沈黙していた。


「……陽菜は、大丈夫です。絶対、目を覚まします」

健太は、自分に言い聞かせるようにそう口にした。

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