表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/18

日常編1(トラブル製造機・久住健太)

今までと少し毛色が違う作品ですが、良かったら読んでください。

尚、作者はギャルゲー、エ◯ゲー好きです。

久住健太くずみけんたは、飽きていた。


剣道は好きだった。小学生の頃に始め、中学では全国大会にも出場した。高校に入っても剣道部で稽古を続け、自然と結果を出してきた。


ただーー気づけば、今や高3やOBすら圧倒するほどの実力が身についている。


それだけじゃない。

勉強もすらすらできるし、スポーツも得意。なぜか人の行動が読めることも多い。


テストの問題が直感的に分かることもあれば、剣道の試合で相手の動きが見えるように感じることもある。


最初は気持ちよかった。

何をやっても思い通りになるのは、悪い気分ではない。


だが、ある時ふと気づいた。


「これ、前にもなかったか?」


そう思う瞬間が増えた。

誰かの言葉、廊下での出来事、次に起こる展開が分かる。

まるで決められた脚本をなぞっているような感覚。


思い通りになることが、次第に不気味になってきた。

そして気づけば、全てがただの繰り返しに思えてきた。


日々は流れるが、新しいことなど何もない。

ただ、決められた出来事をなぞるだけの毎日。


飽きた。

もう何もかも、うんざりだった。


そんな健太の前に、突然現れた人物がいた。


「おはよう、健太くん!」


桜舞う春の日、高校2年の始業式。

教室の入り口に立っていたのは、長い黒髪をなびかせた、一人の美少女だった。


大川陽菜おおかわひな


幼い頃からの幼馴染で、中学までは病弱で学校を休みがちだった女の子。


だが、目の前の彼女は――昔の印象とはまるで違っていた。

堂々とした態度、自信に満ちた笑顔。

そして、その場の誰もが見惚れるほどの美貌。


そして彼女は、健太を真っ直ぐに見つめ、こう言った。


「健太くん、好きです! 付き合ってください!」


その瞬間、健太の中で何かが軋む音がした。

デジャヴのような違和感。

何かがおかしい。


けれど、この時の健太はまだ知らなかった。


まだこの時、彼にとって”同じ日常”のほんの始まりであることを――。





久住健太、高校2年生。


両親と、大学3年生の兄・渉の四人家族。

特に変わった家庭環境ではない。

剣道は子供の頃に何となく始めたが、才能があったようで、気づけば全国レベルの実力になっていた。


頭は普通。

勉強はできなくはないが、特別優秀というわけでもない。

友達からは「単純」「楽天家」と言われることが多いが、本人は特に気にしていない。

困っている人を見かけたら率先して助ける、まあまあいいやつ。


彼女は――万年募集中。


モテないわけではない。

剣道をやっているおかげで体は鍛えられているし、顔立ちもそこまで悪くない……はずだ。


告白されることもそれなりにある。

しかし、何故か告白されるのはちょっと変わった女の子ばかりだった。


例えば——

「私、前世であなたと結ばれる運命だったの!」と突然運命を語り出すスピリチュアル系女子。

「君の生活を観察して、完璧な彼女になれるよう努力してきました!」とストーカーじみた努力家女子。

「えっ、付き合う? いやいや、私が告白したのは冗談だから!」となぜか全力で撤回してくる謎の小悪魔系女子。

「……健太くんを好きな子、全部消せば、私だけ見てくれるよね?」と物騒なことを囁くヤンデレ系女子。


……などなど、どこかズレている子ばかり。


そして健太が好きになる女の子は、なぜか常に彼氏持ちという謎の法則がある。

そんな健太の夢は、『好きになった子と付き合ってエッチしたい』だった。


ーー健太の高校生活は、日々事件の連続だった。


道を歩けば困っている人に遭遇し、

電車に乗れば痴漢を見つけ、

助けた女の子にはストーカーされる。


しかも、それらのトラブルは些細なものばかりではない。

暴走する車が突っ込んできたり、ひったくり犯がナイフを手にしていたり、危うく巻き込まれそうになった喧嘩が、実は裏社会の抗争だったり——

命の危険を感じる場面も、一度や二度ではなかった。


だが、不思議なことに、どれだけ危険な状況に陥っても、健太は致命的な怪我を負うことがほとんどなかった。


確かに剣道の経験が生きていた部分はある。

無意識のうちに身についていた動きが、危機を回避する助けとなった。

反射的に身をかわし、適切な間合いをとったり、時には竹刀の代わりに傘や木の枝を使い、攻撃を受け流すこともあった。


しかし、それだけでは説明がつかないことも多かった。

明らかに間に合わないはずのタイミングで誰かが助けてくれたり、すんでのところで車が方向を変えたり、襲いかかってきたナイフが、なぜか衣服だけを裂いて肌には届かなかったり。


ーーまるで、何かに試されているかのように。そして同時に、何かに守られているかのように。


とはいえ、本人の意思とは無関係に、日常の至るところで事件が起こる。

気がつけば、どこかのトラブルの中心に自分がいる。


だから、健太の周囲の人間はまず「トラブルが起きたら久住を疑え」と言っている。


人は彼をこう呼ぶ。


「生粋のトラブル製造機」と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ