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僕たちの小さな冒険

作者:

  僕たちは田舎にある祖父母の家に遊びに来ていた。祖父母の家は僕たち住んでいる家よりもうんっと大きい。だからこそ、誰も立ち入らない[開かずの部屋]が存在する。祖母や母は危ないからはいってはいけない、と言うが僕たちはそう言われると余計その部屋に入りたくなった。内緒で入ろうにも、その部屋には鍵が掛っていては入れない。だから僕たちはただ部屋の扉を眺めることしかできない。

今日も僕たちはその部屋を眺め続ける。いつもと何ら変わりない。


「お前ら、今日もそうやって過ごすつもりか?」

「お父さん、、」


こんな僕たちを見かねた父が話しかけてきた。


「外で遊ばないのか?ここだったらボール遊びがやり放題だぞ。」

「そんなのいいよ。僕はこの部屋に入りたいんだ!」


僕がそう言うと、弟も便乗して「そーだ!そーだ!」と言った。

僕たちはどうしてもこの部屋に入りたいのだ。


「分かった、分かったよ。そんなにこの部屋に入りたいんだな。」

「うん!!」


僕たちは勢いよく返事をした。


「でも、この部屋にはおばけが出るかもしれないぞぉ。」


父が脅すように幽霊のポーズをして言った。

父は馬鹿だ。幽霊なんか存在しない。テレビでやっている特集もCGに決まってる。僕たちはそんなのに騙されるほど子供じゃないんだ。


「お父さん、幽霊なんか存在しないよ。そんなの子供だましだ。」


弟も僕と同じ意見だった。


「そうか、お前たちは信じていないんだな。それなら、自分の目で確かめてきなさい。」


そう言い、父はズボンのポケットから鍵を取り出した。


「それって!」

「あぁ、お察しの通りその部屋の鍵だ。お母さん達には内緒だぞ。」

「ありがとう!!!」


僕たちは父にお礼を言ってさっそく鍵を鍵穴に差し込んだ。


「おっと、もう行くのか?」

「え?行くなら早いほうがいいでしょ。」


父が鍵を回すのを制しした。


「せっかくの探検だ。懐中電灯とか準備しなくていいのか?きっと、その部屋は電気がつかなぞ」


僕たちは父の言葉を聞いて顔を見合わせた。そして、僕たちは各々必要そうなものを探すため、散らばった。


僕は一度部屋にリュックサックを取りに行った。そして、リュックの中に今日のおやつや父に言われた通りに懐中電灯を詰め込んだ。


(あとは、、)


その時ふと絆創膏が目についた。

弟はよく怪我をする。きっとこの探検、いや冒険でも怪我をするだろう。僕は兄として弟のために絆創膏を持っていくことにした。


そして、僕は荷物を詰めたリュックを背負い、あの扉の前にやってきた。そこにはすでに弟がいた。


「もういたんだ。早かったな。」

「うん。それより、兄ちゃんは何を持ってきたの?」

「おやつと懐中電灯、それと絆創膏!」

「絆創膏?なんで?」


弟は不思議そうに顔をかしげた。


「だってお前よく怪我するじゃん。」

「もしかして、僕のため?ありがとう!」

「いいってことよ!」「それより、お前は何を持ってきたんだ?」

「ふっふふ、見て驚かないでよ?」


弟は、少し悪い顔をした。


「ジャーン!」


そう言って弟がとりだしたものは、電池式のランタンだった。


「それって、、」

「うん。お父さんのやつ。くすねてきたんだ。」

「お前、そればれたらやばいぞ」

「でも、このほうが雰囲気でるでしょ?」


ばれたら大目玉をくらいそうだが、これも冒険のため。仕方のない犠牲だ。


「あとは、兄ちゃんと同じ。おやつ。」


こうして、僕たちの準備は終わった。

僕は意気揚々と鍵を回した。


「お、お前らもう行くのか。、、ってそのランタン!」

「やば」

「早く行くぞ!」


父に見つかった。僕たちは急いで[開かずの部屋]に入った。ここまで来れば流石の父も追いかけてこなかった。


「はは、さっそく見つかっちまった!」

「だな!これやべーな!」


僕たちは部屋に入れたという興奮と父に見つかったという、二つのいけないことをしてしまった。だけど、それが面白くて楽しい。

僕たちは二人で少しの間笑いあった。

少しして、頭が冷えて冷静になると、急にこの部屋の暗闇が怖く感じた。


「お、おい。早くそのランタンつけようぜ。俺も懐中電灯つけるから」

「う、うん。」


当初の予定では、懐中電灯はつけない予定だった。だけど、余りにもこの暗闇が怖くて、懐中電灯をつけることにした。弟もなにも反論しなかった。


「ランタン着いたよ。懐中電灯はまだ?」

「ちょっと待って。電源をオンにしているのにつかないんだよ」

「兄ちゃん、それ電池切れじゃない?」

「マジかよ、、」


残念ながら、俺の持ってきた懐中電灯をは電池切れだった。だから淡い光のランタンに頼る他なかった。


「しょうがないよ。ランタンだけで行こう」

「おう、」


僕たちはこのまま扉の前に居ても仕方がないと言うことで、先に進むことにした。

部屋は長年使われていないだけあって、埃やカビの香りがした。そして、いたるところにクモの巣が張り巡らされていた。


「兄ちゃん!」

「何だ?」


弟が何かを見つけたようだ。


「カーテンだよ!カーテンを開ければきっと外の光で明るくなるよ!」

「おぉ!」


弟は意気揚々とカーテンを開いた。カーテンの先にはきっと明るい外の光が、この部屋を照らしてくれる__はずだった。

カーテンの先には明るい光も、窓も存在しなかった。あるのは謎の箱だけ。その箱は僕たちが両手で持つことができる大きさだった。


「箱?」


弟は臆することなくその箱を開けようとした。だが、その箱には鍵が掛っていた。


「鍵穴、、」

「この部屋のどこかに鍵があるのかも!」

「そうだな!」


僕たちは周辺を探した。

周辺にはいくつか箱Tとお菓子が散らばっていた。僕たちは二人で箱を1つ1つ慎重に見ていった。


「わ!お菓子だ!」

「でも、このお菓子見たことないよ。」

「しかも変な匂いがする。」


床にはには僕たちの見たことのないお菓子が散らばっていた。もう少しはやく見つけていたら食べられたのかな。


「紙?」


次の箱には沢山の紙が入っていた。

紙には汚い字で色々書いてあった。


「もしかしたら、暗号かも!」

「きっとそれだ!」


僕たちはじっくりとその紙を見た。それでも、まったく分からなかった。


「もしかしたら、お父さんなら分かるんじゃないかな?」

「そうかも。一応持ってい帰ろう」


僕はその紙をリュックの中に詰め込んだ。


「あ、ノートもある。これ、[日記]?って書いてある。」

「本当だ。でも、中身は薄くてよく読めないね。」


箱の奥に日記のようなものを見つけた。でも、中身は色あせていて良く読めなかった。これも何かのヒントになると思い、持ち帰ることにした。


「ここには、、、あ!鍵があったよ!」

「本当か!?」


僕は弟から鍵を受け取り、箱に差し込もうとした。

その瞬間、どこからか「ごとっ」と音がした。


「、、、お前なにかしたか?」

「な、なにもしていないよ!第一、僕この箱持ってるじゃん!」


弟は、鍵のかかった箱を両手に抱え込んでいた。だから何かできるはずない。


「ごとっ」


また音がした。僕たちは怖くなった。


「怒っているんだ。僕たちがこの部屋に入ったから、幽霊が怒っているんだ!」

「そ、そんなはずないだろ?!ゆ、幽霊なんか存在しないんだ!」


弟の発言に、僕は強がった。でも、本当は僕も怖かった。本当に幽霊がいるんじゃないか、って。


「は、はやく出ようよ。」

「あ、あぁ」


僕たちは持ってきた荷物をまとめ、扉に向かった。


「いたっ!」


そのの途中、弟が転んだ。


「大丈夫か?立てる?」

「うぅ、痛いよ、、」

「大丈夫、この部屋からでたら絆創膏貼ってやるから、泣くなよ。」

「、、うん。がんばる」


僕は弟の腕を引っ張り、立ち上がらせた。そして、また扉に向かった。

扉を開けると、明るい廊下が僕たちの帰りを出迎えてくれた。

部屋の暗さと廊下の開けるさで目の奥がジンジン痛んだ。


「ほら、怪我したところ出せ」

「うん、」


弟の膝に絆創膏を貼ってやった。


「ほら、これで大丈夫!」

「ありがとう」

「お前らやっと帰ってきたのか!」

「お父さん!」


ランタンの件、怒られるかもしれない。でも、僕はお父さんの顔をみて心底ほっとした。


「お父さん、ランタン勝手に持って行ってごめんなさい」

「ごめんなさい。」


僕たちは頭を下げて謝った。


「はぁ、もういいよ。それより、なにか見つかったか?」

「あのね、日記と暗号の紙と鍵付きの箱!」

「おぉ、どれどれ見せてみろ。」


僕は持ってきたものをお父さんにわたした。

お父さんはそれを真剣に見ていた。


「どう?暗号解けそう?」

「ん~、お父さんには難しそうだ。お祖父ちゃんなら分かるんじゃないかな。」

「わかった!呼んでくる!」


弟はさっきまで泣きそうだったのが嘘のように笑顔で祖父を呼びに行った。

程なくして、祖父を連れて弟が帰ってきた。


「お祖父ちゃん、この暗号分かる?」

「ん?おぉ、これまた懐かしいものを」

「これ分かるの!?」


祖父は嬉しそうに紙と日記を見た。


「この紙は、お祖父ちゃんが小さいときに文字が書けるのが嬉しくて書いた何の意味もない言葉だよ。」

「え~、」


僕たちは祖父の言葉にがっかりした。


「なら、この箱は!?」

「あぁ、その箱も懐かしいなぁ。鍵は見つかったか?」

「うん!」

「なら開けてみなさい」


僕は、鍵を鍵穴に入れ、回した。

箱は簡単に開いた。


「ビー玉?」


中には、埃をかぶったビー玉が入っていた。


「なにこれ~」

「懐かしいなぁ、これはお祖父ちゃんの宝物だよ。」

「これが?」

「今は埃をかぶっていても、昔は綺麗だったんだよ。」


僕たちはもっと凄いものが入っていると思っていたのに、拍子抜けだった。


「あ!でも、幽霊がいたんだよ!」

「そうそう!僕たちは何もしていないのにがたっって音がしたんだ!」


僕たちは身振り手振りで幽霊のことを話した。


「それは、きっと鼠だろう。この部屋は何十年も掃除していないからなぁ」

「そんなはずないよ!お父さんも幽霊が出るって言ってたし!」

「なら、そうなのかもしれないなぁ」


祖父はそう言って、居間へ行ってしまった。本当のことは分からずじまいだ。

でも、真実なんてどうでもいいのかもしれない。

僕たちは冒険を楽しんだ。

ハプニングがあって、謎があって、お宝がある。それを見つける過程で生まれた新たな謎。これの答えを探しにまた冒険に出るのもいいし、謎は謎のまま終わらせても面白いのかもしれない。




閲覧ありがとうございました。


以下分からなかった人向けに書いてみました。

・[開かずの部屋]は、実は祖父の秘密基地。

・実は父も子供のころに[開かずの部屋]を冒険済み。そこで何を見たのかは、本人のみぞ知る。

・[開かずの部屋]にあったお菓子は父が持ち込んだもの。なぜおいて行ったのかは不明

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