episode.1- 5年前、春。
第一印象は、とっても綺麗な人、だった。
髪はそこそこ長く、サラサラのストレート。
目は切れ長で、それでいて大きくて、瞳がキラキラしていた。
身長も中学1年生にしてはかなり高い部類だったに違いない。
というのも、私は身長が150もない小柄な体型で、ほとんどの男子が自分よりも大きかったから…。
まるで漫画の主人公のように窓辺の席に座る彼を、幼いながらかっこいいなぁと思ったのを覚えている。
「真歩、見惚れてるの?まさか、松本に??」
そうやって声をかけてきてくれたのは、小学校からの親友の心優。
「…あの人、松本っていうの?」
「え、まじで見惚れてたの」
揶揄うつもりで言ったのに、私が興味を示すように名前を反芻したのでびっくりしている心優。
「見たことないひと」
「なんでもねー、東京からきたんだって!」
「東京?」
私が通っていた中学校は、地元の小学校から上がってくる人が大多数で、しかも3クラスでひとクラス30人弱の小さい学校だった。
だから、遠くから引っ越してくるなんてなかなかのスキャンダルで、話題の中心なんだろう。
心優は、松本という名前の彼についてもう知り尽くしてるみたいで。
「松本蓮、野球やってる人なんだって。見えないよねー」
「へぇーー…」
「で、?真歩、一目惚れ?」
「ん、や、その…」
“ただ、かっこいいなーって”
そう言った私を、心優は全部お見通しかのように笑って私の背中を強く叩いてきたのだった。