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【ネトコン12受賞!Webtoon予定】身代わり婚は死の香り? 〜妻が次々に死ぬ死神公爵に嫁がされましたが、実家よりも幸せです  作者: 新 星緒


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15・1 事件後

 私たちの一行は、多少の怪我人はいたけれど、みんな無事だった。たくさんいた賊は、護衛騎士たちが体調不良をおして、倒してくれたらしい。

 ダミアンもそれほどの大けがではなく、倒れたのは刺されたショックによるものだったらしい。


 私も初めて人を刺して怖かった。あの感触は一生忘れないと思う。

 護衛騎士の隊長が、最初に体調不良を訴えたあと、リシャール様と相談をして私は短剣をケープ下に隠したのだ。彼は心配していたけれど、結果的によかった。すべて、護身術を教えてくれたキャロライン殿下のおかげだ。


 リシャール様のほうは、杖を通常のものから非常時用のものに変えていた。都で私が捕まったあとに新調したもので、鉄製で木目の塗装が施してある。これで叩かれた男は何か所も骨折していた。


 そして憲兵が駆けつけたのは、セドリック殿下の機転だ。彼とマグダレーナ様に、『ダミアンの様子におかしいところがあったら、知らせてください』とお願いしてあった。それは保険程度のつもりだった。


 だけど私たちがクラルティ邸を発った数時間後にダミアンが、『父の忘れ物を取りにテールマン邸に行く』といって、出かけたらしい。そこでアルフレードと相談のうえ、憲兵を動かしたのだそうだ。


 賊はダミアンがクラルティ邸に来てすぐに、非常事態に備えて雇ったらしい。彼らは雇い主の目的がなんなのかは知らなかった。

 ダミアンも最初は黙秘をつらぬいた。でも、なにも説明しないと父親も同罪になると教えられると、すべてを告白した。


 王太子は偶然存在を知った廃人になる薬を、遊びで世間に流通させたらしい。薬は最初、保健省が摘発・入手したものだったそうだ。ダミアンは王太子に脅されて、手先になったという(これは本当かはわからない)。


 寵臣が憲兵にマークされたときに、犯罪の証拠になる書類などを処分したそうだ。ところが、間違って別のものを処分していたという。それに気づいたときにはもう、寵臣からの手紙が紛失していたらしい。


 手紙を持ち出した人間には何人か心当たりがあって、ダミアンはずっとその人物たちを見張っていたそうだ。最有力で、最初のターゲットがホーリー様だったという。

 ダミアンはクラルティ邸を何度も訪れていて、内部に詳しい。忍び込んでホーリー様の部屋を漁っていたら本人にみつかってしまい、うっかり殺してしまったのだそうだ。


 なんともひどい話だ。


 証拠の品とダミアンを提出すると、国王は愕然としていた。

 それでもすぐに王太子を逮捕して、事件の調査に乗り出した。一応イヤな人間でも、王としての矜持はあったようで、ほっとしている。

 そしてリシャール様と私は、予想どおりにますます嫌われたのだった。


◇◇



 王宮の庭園の一隅にある温室。その中にある円卓を、みんなで囲んでいる。

 リシャール様と私、セドリック殿下とマグダレーナ様、ジスモンド様とキャロライン殿下。

 王太子殿下の犯罪発覚で嵐のような数日を過ごしたのだが、それもようやく落ち着き、こうやってお茶の時間を持てるようになった。


「しかし、あの阿呆は。王族どころか人間の風上にも置けない」と、憤慨しているのはキャロライン殿下。

「昔から兄上は苦手だったけれど。まだ、信じられない」セドリック殿下はしょんぼりと肩を落としている。


 リシャールの予想どおり、新しい王太子はしばらく決めないそうだ。


「だがマグダレーナ嬢には、良い影響だったのではありませんか」と、笑顔のジスモンド様。

「ええ。お父様は私が妃に選ばれていなくてよかったと、胸を撫でおろしています。現金なものね」と、苦笑するマグダレーナ様。

「それを言ったら、クラルティ公爵もだな。あなたが死の原因ではないと立証された」

 キャロライン殿下がそう言うと、リシャール様は

「ですが、妻全員が死んだ事実は変わりませんよ」と答えた。

 だけど以前に比べれば、そこに暗さはない。


 リシャール様はとても前向きになった。前回王宮に滞在したときと違って、積極的に陛下や貴族たちと会合している。

『ヴィオレッタのおかげで強くなれた』のだそうだ。嬉しい言葉だ。


「でも大きな前進だよ。それに、よくそれだけ足が動けるようになったものだ。見上げたものだ」

 ジスモンド様がそう言うと、となりでキャロライン殿下が大きくうなずいた。

「ジスモンドの甥だけある」

「のろけかよ」とセドリック殿下が呟く。


 ジスモンド様とキャロライン殿下は、うまくいったらしい。一見ふたりの関係はなにも変わっていないように見えるけど、どちらからも幸せオーラがあふれ出ている。しかもジスモンド様は、宰相の補佐官になった。色々な段階をすっ飛ばして。


 本人が言うには、キャロライン殿下の専属侍従を希望したらしいのだが、『露骨すぎる』と却下されたそうだ。だけどその却下した人物が誰かは、教えてくれない。でもたぶん、宰相様なのだろう。


「でも本当にリシャール様は努力されていらしたんですよ」と、セドリック殿下に向けて言う。

「そりゃ、そうだろうな」と、殿下。

「ヴィルジニーにはとてもイライラさせられたけれど、時どきヴィオレッタ様にも感じるわ」

 そう言ってマグダレーナ様がため息をついた。

「どうしてですか!?」

「さて、僕はそろそろ仕事に戻るかな」と、突然ジスモンド様が立ち上がった。「キャロライン殿下もご公務でしょう?」

「ああ。一緒に戻ろうジスモンド」


 ジスモンド様が差し出した手をキャロライン殿下が握り、立ち上がる。


「私も、お友達と会う約束がありますの」と、マグダレーナ様まで立ち上がる。

「あ、俺も」とセドリック殿下。「えっと……」

「国王陛下に呼ばれているのでしょう」と、マグダレーナ様。

「そうそう! それ! じゃあな、ヴィオレッタ。リシャール。またあとで」


 四人は慌ただしく去り、温室にはリシャール様と私だけが残された。

 とたんに鼓動が速くなる。


 前向きで積極的になったリシャール様は、以前よりいっそう素敵になった。

 ふたりきりで過ごすのは、ちょっとツラい。目を見るとドキドキしてしまって、自分がうまく話せているかわからなくなる。


「もしかして気を遣われているのだろうか」と、リシャール様が首をひねる。

「どういうことですか」

「うん……。本当は、クラルティに帰ってからにするつもりだったんだ」


 まただ。リシャール様が射抜くような目を私に向けた。

 



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― 新着の感想 ―
この期に及んでまだ気付いてない。どんだけにぶちんなのーーー!!
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