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【ネトコン12受賞!Webtoon予定】身代わり婚は死の香り? 〜妻が次々に死ぬ死神公爵に嫁がされましたが、実家よりも幸せです  作者: 新 星緒


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14・5 再び都へ

 朝食の席でリシャール様と私が王都に行くことを伝えると、三人三様の反応が返ってきた。


「え、つまらなくなるじゃないか!」と、怒るセドリック殿下。

「なにをしに行くんだ?」と、うさんくさい笑顔のダミアン。

「結婚式の相談ね」と、喜ぶマグダレーナ様。


「それは難しいのではないでしょうか。いくらジスモンド様でも、お立場が」

 私がそう答えると、マグダレーナ様は『あら、失礼』と言った。なぜかセドリック殿下が脇から小突いている。仲良しになったのだろうか。


「目的は、陛下へのご相談です」とリシャール様が殿下とマグダレーナ様に説明をする。「ヴィオレッタの元にお父上からおかしな手紙が届きましてね。詳細は言えませんが、かなり問題があります」

「悲しいな」と、肩を落とすセドリック殿下。


「ダミアン。そういう訳で、私たちは留守にする。行儀よくしていてくれ」

 リシャール様が従弟に向かって冷ややかに言い放った。

「もちろん。俺が責任をもって留守を預かるよ」

 心なしか、ダミアンは嬉しそうだ。

「いや。テールマン子爵を呼んだ。午後には到着するはずだ。殿下が滞在しているのに、爵位を持つ者が不在では失礼だからな」

「別に俺は気にしないぞ」と答えるセドリック殿下。

「リシャール様は生真面目ですから」と私が助け船を出す。

「そうよ。公爵様の留守中に殿下になにかあったら、公爵様の責任になるの。子爵様にいてもらうべきよ」


 マグダレーナ様がセドリック殿下に言った。

 なるほど。そういう視点はなかった。さすが、マグダレーナ様だ。

 問題は、ダミアンだ。

 こっそりと伺う。だけど彼は、なにも気にしていないようだった。笑顔でリシャールに、

『父上には休職中であることを黙っていてくれよ』と頼んでいる。

 これなら、すんなりと出立できそうだ。


◇◇


 馬車の窓から、緑豊かでのどかな景色が見える。夜から朝まで降った雨のおかげか、きらきらと光っているようできれいだ。

 今回の旅は馬車は二台だ。メンバーはリシャール様と私、ランスとイレーネ、それから数人の護衛騎士。


 前回と違って今回は、馬車にリシャール様とふたりきり。非常事態の旅だとわかっているけれど、それでもドキドキしてしまう。しかもまだ二日目だというのに。こんな風で、都まで私の心臓はもつのだろうか。途中で爆発してしまう気がする。


 それに比べてリシャール様は、とても落ち着いている。

 今は余計なことは考えてはダメだ。。

 ホーリー様が残したものを、無事に届けることに集中しなければ。


「それにしても、この先王家はどうなるのでしょうか」と、気を紛らわせるために、向かいにすわるリシャール様に話しかける。

「いくら陛下でも、こんなにも早くにセドリック殿下を許す訳にはいかないだろう。王太子位は空位にするのではないかな」

「キャロライン殿下は?」

「継承順的にいけば、彼女ではある」と、リシャール様。「だが、陛下は明らかにセドリック殿下贔屓だ。それに叔父上のことを考えると――」

「次期国王となったら、ますます立場が違くなってしまいますものね」


 うなずいたリシャール様は、

「叔父上には幸せになってもらいたい」と言った。

「そうですね。でも、それはリシャール様も」

「もちろん、私も幸せになる」


 強固な意志を感じる口調に、怯んでしまうほどの強い眼差し。

 いつかの夜のようだ。

 鼓動がさらに速くなる。


「自分にこれほどの衝動があるとは思っていなかった」とリシャール様は私から目を離さずに言う。「絶対に手に入れたい」

「……リシャール様なら可能でしょう」


 なんとか、そう言うと目を伏せた。

 まるで私を手に入れたいと言われているかのように、思えてしまった。

 リシャール様を意識しすぎて、自分に都合よく解釈しているのだろう。

 気をつけないと。


 突然、馬車の速度が上がった。揺れが激しくなる。

「なんだ?」

 と、リシャール様が疑問を口にしたとき、窓が外から叩かれた。護衛騎士の隊長が並走している。

 私が窓を開けると、彼は『申し訳ありません』と謝った。

「全員、体調が芳しくありません。昼食に当たったか、一服盛られたか」


 息をのむ。彼の顔色は蒼白で、滝のような汗が流れていて、眉が苦し気に寄せられている。

『休んで』と言いたいけれど、もし誰かの悪意なのだとしたら。

 そしてその場合、誰かの目当てはきっとホーリー様の残したものだろう。


「このあたりは牧草地で、なにもありません」と隊長。「憲兵のいる次の街までスピードをあげます」


 リシャール様は青ざめた顔で『わかった』と答えて、窓をしめる。

「慎重を期したつもりだったが、気づかれたのか。すまない、ヴィオレッタ」

「いいえ。発見したのは私ですもの。謝るのは、私のほうです。そして今はそんなことよりも――」

 うなずくリシャール様。

 万が一、襲撃された場合のことを考えなくてはならない。





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