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【ネトコン12受賞!Webtoon予定】身代わり婚は死の香り? 〜妻が次々に死ぬ死神公爵に嫁がされましたが、実家よりも幸せです  作者: 新 星緒


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13・2 リシャールの従弟

 マグダレーナ様は、とても素晴らしい令嬢だ。美しくて気品があって、淑やかで芯の強さがあって、勤勉で博識で、そしてとても優しい。

 セドリック殿下がどうして彼女よりヴィルジニーを選んだのか、まったくわからない。


 ジスモンド様は『男女のことは、そう簡単にはいかないんだよ』と笑っていたけれど。私は圧倒的に、マグダレーナ様派だ。


 とはいえ元婚約者たちは、私たちが心配したような状況にはならなかった。案外うまくいっている。間にジスモンド様や私が、挟まってはいるけれど。

 ちなみにリシャール様は『女性は苦手だ……』と言って、対応をさりげなくジスモンド様に押し付けている。


 でも多分そのことに、マグダレーナ様は気づいていると思う。とても聡明な方だから。

 特にリシャール様が領主としての仕事を教えてくれる時間に、彼女の優秀さが際立つ。私なんて知らないことばかりだけれど、彼女は基礎知識がしっかり入っていて、その上で素晴らしい質問をしたりする。もちろんのこと、覚えも早い。


 リシャール様は私も十分よくできていると褒めてくれるけど、自信喪失気味だ。


「あら、そんなことはありませんわ」

 お茶の時間。テーブルについているのは、マグダレーナ様とセドリック殿下、私の三人だけなので思い切って悩みを打ち明けたら、彼女はきっぱりと否定した。


「私が並外れて優秀すぎるだけよ。王妃になるための教育を受けてきたのだから、あなたとは、現在持っている能力が違うの」

 確かに、私は最低限しか家庭教師がついていなかった。


「いいこと?」とマグダレーナ様。「ヴィオレッタ様は、今スタートラインに立ったばかりなの。これからの努力次第で、いくらでも私を追い越せるわ」

「せめて、マグダレーナ様に追いつけるようにがんばります!」

「俺だって、ヴィオレッタには負けないぞ」とセドリック殿下。


 そこへ、

「やあ、楽しそうですね」と言いながら、ダミアンがやって来た。

 彼はブランドン殿下の依頼書を振りかざし、クラルティ邸に居座っている。

 でも実はマグダレーナ様も彼が苦手らしい。

 そしてセドリックが言うには、なんで保健省の役人と兄に繋がりがあるのかが、わからないという。


 ダミアンは、クラルティ邸で完全に浮いている。だけど本人は、どこふく風だ。

 とはいっても、たいていは部屋に閉じこもっている。なにをしているのかは、誰も知らない。

 ただ、出てくると、こんな風に気軽に声をかけてくるのだ。


「ヴィオレッタ」とダミアンが私を見る。「少し庭の散歩に付き合ってくれ」

「ダメだ!」と私が断るより先に、セドリック殿下が言った。

「なぜですか」と、笑顔を崩さないダミアン。

「そういう質問をしているところが、信用ならない」

 セドリック殿下が言うと、マグダレーナ様も優雅にうなずいた。

「困ったな」とダミアンは笑うと、「ではまた今度にしますよ」とセドリック殿下に言い、マグダレーナ様と私には「では、失礼を。お嬢様がた」と、わざとらしく挨拶をして、去って行った。


 彼の姿が完全に見えなくなると、セドリック殿下とマグダレーナ様が、揃って私のほうへ身を乗り出した。

「絶対に、ふたりで散歩をしてはダメ!」

「ええ。もちろん、そんなつもりはありません」


 ダミアンは、リシャール様への態度がずっとひどいままだもの。


「だがな」とセドリック殿下。「兄上が気に入っているということは、ヤツは抜け目のない優秀な男だということなんだ。気をつけろよ」

「ヴィオレッタ様は『クラルティ公爵のことで』と言われたら、きっと誘いを受けるわ」


 確かにそうかもしれない。


「絶対に、なにがあっても断るのよ」と、マグダレーナ様。

「わかりました。そうします」


 私だって、彼は苦手だもの。近づきたいとは、思わない。



今日から5/7(火)まで、毎日21時に更新します

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