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【ネトコン12受賞!Webtoon予定】身代わり婚は死の香り? 〜妻が次々に死ぬ死神公爵に嫁がされましたが、実家よりも幸せです  作者: 新 星緒


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9・〔幕間〕公爵閣下は落ち込む

「リシャール! 明かりもつけないでなにをしている!」


 叔父上の声に目を上げる。確かに部屋は暗かった。


「ランスが青ざめているぞ」

「……鍵はどうしたのです」

 閉めておいたはずだ。

「キャロライン殿下に頼んで、合鍵を借りてきた」

「ひとりになりたいのです。もう就寝の時間でしょう」


 目の前でランプの明かりが揺れたが、顔を上げる気は起きない。



 今晩は許されるぎりぎりの時間まで、ヴィオレッタのそばにいた。

 彼女が無事だったことを、この目で確かめていたい。

 けれど私がそばにいることが、危険を呼び寄せたのかもしれない。

 なにが正解か、なにが許され許されないのか、わからない。不安で押しつぶされそうだ。


「リシャール。彼女が誘拐されたのは、彼女の(・・・)父親のせいだ」

「私と関わったからかもしれません」

 私の妻たちはみんな事故で死んだ。ヴィオレッタは妻ではないが、そうみなされているのかもしれない。


「しっかりしろ、リシャール。お前は彼女の人生を預かると決めたのだろう」

 ああ、そうだ。とてもではないが、見過ごすことはできなかった。

 妻でなければ、クラルティ邸に引き取っても大丈夫だろうと考えた。だってメイドたちはみな、なにごともなく過ごしているのだ。だが。


「私の考えが甘かったのです」

「違うと言っている。もしも本当にお前の恐れるとおりなら、彼女はお前のいないところで死ぬ。今まではそうだっただろう」


 そうだ。確かに妻たちは私のあずかり知らぬところで、命を終わらせていた。


「いいかリシャール。怯まずにヴィオレッタはクラルティ邸に連れて帰るんだ」

 顔を上げた。暗闇で、下からの明かりに照らされた叔父上の顔は、不気味に見えた。


「あるかないかわからない陰に怯えてはダメだ。ヴィオレッタはお前が守りなさい」

「彼女のことは、キャロライン殿下に頼もうかと考えています」


 嫌だが。

 初めての友人とこれから過ごすだろう日々を、楽しみにしていた。そのために、近寄りたくもない王都へやってきたのだ。

 でも私のせいで彼女が四人目になったならば……


「冷静になれ。いくら殿下の後ろ盾があったとしても、この王宮でヴィオレッタが幸せに暮らせると思うか。今でも散々陰口を叩かれている。これで殿下の侍女になってみろ。妬みやっかみが加わって、へたをしたら陰湿ないじめが始まるだろう」

「それは……」


 彼女をそんな目にあわせるわけにはいかない。


「お前が不安になるのもわかる。だがヴィオレッタを守れるのは、お前だけなんだ。キャロライン殿下がいくら彼女を気に入っていようとも、自由に動けない。奔放に生きているようで、そうではないんだ」


 叔父上がランプをテーブルに置いた。

「よく考えるんだ。王宮に彼女を置いて帰れば、お前はヴィオレッタを守れない」

 彼女を守れない……。


「今日はだいぶ無理をしただろう。頼むから、足のマッサージをきちんと受けてくれ。ランスを呼ぶよ」

 叔父上がそう言って離れていく。


 誰もいなくなった正面にむけて、

「私の足は、案外動いてくれるのですね」と言う。

 おかげでヴィオレッタを守ることができた。こんな役立たずな足を抱えた私でも。


 叔父上が振り返った気配がした。

「そうだよ、リシャール」

「私の被害者を増やすのが嫌でしたが、あずかり知らぬところで妻たちが、恐ろしい思いをしているのも嫌だったことを思い出しました。ありがとうございます、叔父上」


 どうするのか、腹は決まった。




ちょこっとお休みに入ります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読んでます! 本当に事故なのか? もし内部犯の事件なら、誰が何故と?疑問は尽きないですね~ 時々怪しいと思わせる言動などあったりと、悪い人?と思ったら良い人?なのかなと思わ…
[一言] がんばれリシャール君!
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