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【ネトコン12受賞!Webtoon予定】身代わり婚は死の香り? 〜妻が次々に死ぬ死神公爵に嫁がされましたが、実家よりも幸せです  作者: 新 星緒


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8・3 処分

 議会場から近衛騎士の先導で退出した。てっきり牢にいれられるのだと思ったのに、連れて行かれたのは、みんなと同じ小ぶりのサロンだった。


「よかった。これなら見込みはある」とキャロライン殿下が珍しく、ほっとしたような声を出した。

「あのヴィオレッタを見て、心が動かないはずがない」とジスモンド様が笑顔で言う。

「ああ。思いの外頑迷な様子だったから、どうなることかと思ったが」

「セドリック殿下が反抗的だったからではないですか」

「俺!?」

 三人は話しながら、それぞれ椅子に腰かける。


「ヴィオレッタ」

「リシャール様」

 同時に話しかけてしまったわ!

「リシャール様、どうぞお先に」

「ああ。――すまなかった。なんの力にもなれなくて」

 リシャール様がうなだれる。


「そんなことありません。私のためにたくさん意見してくださったではないですか」

「こんなに自分を情けなく感じるのは初めてだ」

「そんなことはありませんってば」

「それに比べて」リシャール様が微笑む。「君は強く頼もしかった」

「もしそうだったなら、リシャール様がいてくださるからです」


 ふと思いついたことに、戸惑う。だけれど思い切って伝えるのだわ。

「あの。手を握ってもらってもいいですか」

 リシャール様が両手で私の手を包み込む。温かい。


「落ち着きます」

「それはよかった」

 本当に。リシャール様の手は魔法の手なのかもしれない。私の中にあった緊張とか恐怖とか、そういうものが解けていく。


「というかセドリック殿下。ここでくつろいでないで、陛下の元に行ってください」

「嫌だ」

 ジスモンド様とセドリック殿下がなにやら言い争っている。そのうちジスモンド様がセドリック殿下の耳になにやらささやくと、セドリック殿下は『それなら仕方ないか』と言って、部屋を出て行った。


「なにをしに行ったんだ」とキャロライン殿下が尋ねる。

「肝心のことをまだ陛下に伝えていないでしょう?」と苦笑するジスモンド。「『ヴィルジニーに未練はなくなった』」

「そうか」

「セドリック殿下がヴィルジニーと同じ顔のヴィオレッタをかばうのは、陛下もおもしろくなかったでしょうからね」

「だな。今度はこっちの娘かと考えたかもしない。――いや、『かも』ではないか」

「ええ」


「私も陛下ともう一度話をしたい」とリシャール様が言う。そして控えている侍従に、『陛下に伝えてくれ』なんて頼んでいる。

 あんなに険悪な雰囲気だったのに。

「リシャール様」

「そんなに心配そうな顔をしないでくれ。陛下との喧嘩は覚悟のうえで、来ているのだから」

「……はい」


 謝罪とかお礼とか、そんな言葉がうかんだけれど、やめにした。

 リシャール様が心配するなというのだから、信頼して任せなくてはいけないのだ。



 ◇◇



 サロンを私以外の四人が出たり入ったりを繰り返しながら、長い時間が経った。一度だけ私のもとに見知らぬ近衛騎士が文官を連れてやってきて、ヴィルジニーと入れ替わった経緯を聞いていった。

 やがて結論が出たようで、全員そろって再び議会場に通された。

 さきほどとは違って国王のとなりに大臣らしきひとが、書類を持って立っている。私たちが一列に並ぶと、その大臣が、


「ヴィオレッタ・カヴェニャック」と私の名前を呼んだ。

 はい、と答える。

「王命によるクラルティ公爵とヴィルジニー・カヴェニャックとの結婚において、姉妹が入れ替わった件は、本人の証言並びにカヴェニャック邸使用人らの証言、その他からヴィオレッタ・カヴェニャックには責がないものとする」


 ええと。

 ということは……?


「よかったな!」とキャロライン殿下が私の背をバシリと叩いた。「晴れて無罪だ!」

「まあ!」

「ただし!」と大臣が声を張り上げる。「カヴェニャック伯爵およびヴィルジニー・カヴェニャックは王命違反による処罰がくだる」

 王命違反、ということは反逆罪より軽い罪になったということ?


「カヴェニャック家からは爵位はく奪、ふたりは国外追放となる。また詐欺の被害者の救済のため、資産はすべて没収。ゆえにヴィオレッタ・カヴェニャック」

「はい」

「君も、貴族籍から抜けることになる」

「はい」

「以上だ」


 以上?

 国王を見る。彼は鼻を鳴らした。

「余を騙すつもりはなかったと判断した」

「ありがとうございます!」


 カーテシーをして、それからリシャール様を見る。

 彼は、泣きそうな顔をしていた。


 ◇◇



 あとでキャロライン殿下が大臣から教えてもらったのだけど、どうやら私の訴えが国王の気持ちを懐柔させたらしい。どう見てもヴィルジニーのような悪女ではなく、処罰を与えるのにためらいが生じたのだとか。がんばって主張してよかった。


 それとリシャール様。国王と相当にもめたみたい。それでも理詰めの主張で、最終的に国王から『現状に即した処分』をするという約束を勝ち取ったのだとか。

 もっともそのせいで、余計に国王は彼を嫌いになったというから申し訳ないことこのうえない。


 だけど重罰を免れてよかった。

 お父様たちも命は繋がったようだし。


 すべてリシャール様とみんなのおかげだわ。


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