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【ネトコン12受賞!Webtoon予定】身代わり婚は死の香り? 〜妻が次々に死ぬ死神公爵に嫁がされましたが、実家よりも幸せです  作者: 新 星緒


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8・2 国王との対面

 私が通されたのは、議会場という部屋だった。高い位置に玉座があり、向かい合う形で半円状の席が並んでいる。その玉座と席の間に立たされた。

 だけど、ひとりではない。みんな一緒。私を守るかのように、囲んでくれている。

 セドリック殿下は議会場に入る前に。侍従にどこかに連れて行かれそうになったけど、頑なに拒んで共に来てくれた。


 玉座にすわる国王は子供たちと同じ、銀の髪に緑の瞳で、けれど彼らとは違ってひどく神経質そうな顔をしている。

 そのほか、席にすわっているのは全員男性。室内にいる女性は私とキャロライン殿下しかいない。


 そのキャロライン殿下が、ビシリと敬礼をした。

「近衛騎士特別編成部隊、ただいま帰還いたしました」

 とても凛々しくてカッコよかったけれど、国王は嫌味たらしく鼻を鳴らした。

「ずいぶんと遅かったな。セドリックが無事だったのはよかったが、やはり女のお前には近衛騎士なぞ荷が重かろう」

「そのようなことはございません、陛下」

 国王がまたも鼻を鳴らす。


 どうやらキャロライン殿下が近衛騎士であることが、不満みたい。


「セドリック」と国王は顔を彼に向けた。心なしか声が甘くなっている。「その女から離れなさい」

「嫌です」セドリック殿下は、ぷいっと子供みたいにそっぽを向く。

「陛下」と代わりにキャロライン殿下が声をかける。「クラルティ公爵がお越しになっております」

「クラルティ?」と国王はわざとらしく視線をさまよわせる。「あの金髪碧眼の美しい一族がここにおったかな」


 ……なんなの、この茶番。

 一国の王がする態度なの?

 まるで子供じゃない。


 と、リシャール様が前に進み出た。

「残念ながら容姿の血は受け継ぐことができませんでしたが、現在のクラルティは間違いなくこの私です、陛下。お久しぶりにございます、リシャール・クラルティです」

 国王が鼻白むのがわかった。きっと、リシャール様を怒らせるつもりだったのだ。

「先にお知らせしたように、陛下が私に命じた婚姻の件で、大切な話がございます」


 国王が面倒そうに手を振る。


「カヴェニャック伯爵家の者は全員、反逆罪を適用する。その女を憲兵に引き渡せ」

「彼女は父親に脅されていたのです」

「だとしても、家門全体の問題なのだ」


 リシャール様、セドリック殿下に、ジスモンド殿下、キャロライン殿下までが反論する。侃侃諤諤の激しい言い争い。

 どう見てもこれは、私が罰を免除してもらえるような状況ではない。

 クラルティ邸に帰りたかったけれど、諦めるしかないのだわ。


 息をひとつ吐くと、勇気をふるって手を挙げた。

 国王が気づき、目が合う。

 みなが口を閉じてくれて、議会場は静まり返った。


「……なんだね」と国王がついに尋ねてくれた。

「発言のご許可をくださり、ありがとうございます」声が震える。でも噛まずに言えた! 「カヴェニャック家長女ヴィオレッタでございます」

「……で?」

「この度は王命に背き、申し訳ございませんでした。どのような事情があろうとも、背いたのは事実、罰を受けるのは当然と考えております」

「当たり前のことではないか」


 はい、とうなずく。


「ですがやはり、重罰は怖いのです。それでも入れ替わりを自らクラルティ公爵閣下に明かしたのは、親切な閣下を困らせたくなかったからです。閣下はこれまでの奥様のように私も事故死するのではないかと、非常に心配してくださっていました」

 ふう、と一度息をつく。


「私が重罰を受ければ閣下をはじめとした皆様は、お心を痛めることでしょう。私自身のためにも、皆様のためにも、陛下にお願い申し上げます。どのようなことでもいたします。刑を、ほんの少しでよいのです、閣下たちが納得できるものにしていただけないでしょうか」

 頭を下げて返事を待つ。


「私からも」とリシャール様の声がした。「これ以上、私に関わる女性を不幸にしたくありません。どうぞご寛容なご判断をお願いしたい」



 長い沈黙が降りた。

 どれほど経ったか、国王は、

「全員下がるように。再検討は、しよう」

 とだけ言ったのだった。



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― 新着の感想 ―
政権交代を望む。叔父様、出番だ。
[一言] 公衆の面前でこれだけ幼稚な事をしてくる野郎だ。 王様が黒幕でも私は全く驚かない
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