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【ネトコン12受賞!Webtoon予定】身代わり婚は死の香り? 〜妻が次々に死ぬ死神公爵に嫁がされましたが、実家よりも幸せです  作者: 新 星緒


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5・〔幕間〕公爵閣下は強く想う

 応接室から出ると、セドリック殿下が袖を掴んできた。情けない表情を隠そうと、目一杯顔に力をいれている。


「公爵。俺もまだ十七だ。ヴィルジニー、いや、ヴィオレッタより若い。助けろ」

 思わず苦笑してしまう。彼はきっと甘やかされて育ったのだろう。私のことも、なにも知らないに違いない。


「加勢したいとは思っていますが、お約束はできません。殿下の婚約者殿が本当に婚姻を望んでいないのか、私にはわかりかねますから」

「都に行ったら、彼女に訊いてくれ。歯に衣を着せることを知らない女だ。俺の我慢ならないところを百は語るぞ!」

「わかりました」

 そう答えると、殿下の手は離れていった。


 きっちりと閉められた応接室の扉を見る。中にはヴィオレッタとキャロライン殿下、ふたりしかいない。殿下が『ヴィオレッタの事情をより詳しく、ふたりだけで訊きたい』と言って、私たちだけでなく護衛まで外に追い出したのだ。


 私の視線に気づいたのか、セドリック殿下が、

「姉上は厳しいから心配だな」と言った。

「そんなことありませんよ」と叔父上が否定する。「キャロライン殿下は一見そのように見えますが、王族イチお優しくて常識派です」

「そうかぁ?」

 セドリック殿下が半眼で叔父上を見る。


「大丈夫だよ、リシャール。ふたりきりになったのは多分、女性だけで話をしたかったからだ。気配り上手な方だから」と叔父上が言う。

 なるほど。確かに近衛騎士もみな男性だ。


「それにヴィオレッタだって若くはあっても子供ではないし、しっかりしている」

「そうですね」

 彼女が自分で承諾したのだ。


『ふたりきりで大丈夫です。ご配慮をありがとうございます』

 ヴィオレッタはそう、はっきりと言った。柔らかな微笑みを浮かべてもいた。


 だからこそ、健気な彼女の笑顔を守りたい。



 ◇◇



 ヴィオレッタを待つ間、途中だった仕事に戻ることにした。が、叔父上がついてくる。用件は聞かなくてもわかる。

 セドリック殿下や近衛騎士から十分に離れると彼は、

「まさかリシャールが都に行くとはね」と微笑んだ。「いや、成長したものだ」

 やはり思ったとおりのことを言われた。


「蚊帳の外に置かれてはたまりません」と答える。

「ヴィオレッタは良い子だし、気の毒な境遇だよ。だけどお前が辛い思いをしてまで助ける義理はない」

「……先ほども言いました。もう、『辛い』と泣きわめくような年ではありません。無論、都も陛下も、関わらなくて済むならそうしたいですよ」

「ああ、そうだね」


 叔父上はまるで父のような、慈愛に満ちた笑みを浮かべて、私を見る。長い間、彼だけが私の味方だった。いつでも穏やかに私を見守っている。

 ふと応接室でのことを思い出す。『私のせい』と言ったとき、彼は声を荒らげた。常日頃穏やかな彼の怒声を聞くのは、ずいぶんと久しぶりだった。


 だが妻たちが死んだのは、私のせいなのだ。私と結婚なんてしたから死神が鎌をふるったのだ。

 叔父上は優しい。だから私を守ろうとして否定する。だが私が原因であることは、紛れもない事実だ。




 ヴィオレッタがヴィルジニーでなくてよかったと、心の底から思う。彼女を『四人目』になぞしたくない。


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― 新着の感想 ―
[一言] うーむ。 これは、三人の元奥方達が、公爵様を亡き者にしようとか家を簒奪しようとかで王様から送り込まれた刺客とかだったりして? それなら、叔父様が甥っ子を守る為に事故死に見せかけて殺したとし…
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