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【ネトコン12受賞!Webtoon予定】身代わり婚は死の香り? 〜妻が次々に死ぬ死神公爵に嫁がされましたが、実家よりも幸せです  作者: 新 星緒


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4・1 従者の忠告

 身支度が終わり、そろそろ朝食へ行こうと思っていたところに、公爵の従者が来た。なんの用なのかは、わからない。取り次ぎに出たイレーネも困った顔をしている。ということは公爵の使者ではないということだ。


 彼のことは、まだよく知らない。公爵のそばで控えめにしている堅苦しそうなひと、との印象があるだけ。もしかしたら、『お前みたいな悪女は公爵に近づくな』と怒られるのかもしれない。


「どうしますか。大変に無礼な申し出ですが」

 イレーネが私の意思を訊いてくれる。昨晩も夢うつつの私の着替えを苦労してやってくれたようだし、専属メイドが彼女でよかった。

「構わないわ。通してあげて」と答える。

 追い返してしまったら、従者の用件がわからないままになってしまう。私はそのほうがイヤだもの。


 長椅子にかけて待っていると、従者はなにやら思い詰めた顔で部屋に入ってきて、目通りの礼を丁寧に言った。

 罵られる可能性が高いと思っていたのだけど、違うみたいだ。


 彼は一度私から視線を外して、イレーネを見た。彼女の前では話しにくいのかもしれない。けれど従者とふたりきりなんてなりたくない。彼もわかっているのだろう、すぐに私に視線を戻した。


「お伺いしたのは、ジスモンド様のことでございます」

 従者の口から出たのは、思わぬ名前だった。

「というと?」

「あの方はリシャール様がただひとり、親しくしている親戚です。兄のように頼りにし、友人のように親しくしております」


 確かにそのように見えた。


「ジスモンド様も、リシャール様に深い親愛の情があるように思えます。私も幼きころは、そう信じていました」

 つまり、今は信じていないということだ。

「ランス」とイレーネが非難の口調で呼びかけた。

 だけど彼は首を横に振る。


「大事なことだ」ランスはイレーネに答えてから、ふたたび私を見た。「ジスモンド様の拠点はクラルティ邸ですが、年の半分は留守にしています。行く先は都や他の都市、他国と色々で、その先々に恋人がいるそうです」

「本当かどうかは、わからないわ」とイレーネ。

「問題はそこじゃない。――ジスモンド様はそのような方なのです」


 そう、とだけ返事をする。


「クラルティ邸に仕える私たちを除いて」とランスが続けた。「リシャール様の三度の結婚式、三人の奥様の事故、すべてのときにこの屋敷にいたのはジスモンド様だけなのです」


 それは――どういうこと?


「失礼よ、ランス!」とイレーネが鋭い声でたしなめる。

「だが、おかしいじゃないか。いつもふらふらしている方なのに、毎回滞在している。しかもこんな急な結婚のことまで聞きつけて、わざわざ帰ってきたんだぞ! もしあの方が……」そこでランスは言葉を飲み込み、不安げな眼差しで私を見た。「あなたが四人目になったら、リシャール様は耐えきれないでしょう。優しい方なのです」


 これはもしかして、叔父に注意をしろという忠告なの?

 ランスは困ったような、だけど強い意思がある目で私を見つめている。彼は本気だ。

 だけど叔父は、私の正体を知られたくない点について私には要注意だけど、悪い人には見えない。とはいえ昨日あったばかりだものね。それに人付き合いをしてこなかった私に、人を見る目があるとも思えない。


「それだけでは、なんとも――。では、あなたに質問するわね」

 うなずくランス。

「公爵夫人が事故死することに、ジスモンド様の得はあるのかしら」

「あの方は文無しです。リシャール様が公爵家の財産から、都合をつけて差し上げているのです。もし夫人がそれをやめさせたならば即、露頭に迷います」

 それは納得できる理由のように思える。だけど。 


「閣下が、ジスモンド様より政略結婚の奥様を優先する可能性があったの?」

「ないですよ」とイレーネが即答する。

「わかりかねます」とランスも自信がなさそうに答えた。


 ふむ。ならば叔父が事故に関係あると考えるのは、早計のような気がする。かといって潔白と断言もできない。

 一応、用心しておこう。


「もうひとつ質問ね。ジスモンド様のことではないわ。私が四人目にならないためには、どうすればいいのかしら」

 ふたりは顔を見合わせた。

「こればっかりは」と困った顔をするイレーネ。「結婚されないのが一番じゃないかと思いますけど、不可能ですし」

「結婚が中止になる正当な理由があれば」伏し目でランスがぼそぼそと言う。

「そうね。それが一番良いのでしょうね」


 確かにそのとおりだ。しかも私がヴィルジニーではないと打ち明ければ、簡単に解決する。

 だけど四人目になるのと同じくらいに、死罪はイヤだ。

 どうするのが最善なのか、まったくわからない……。


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― 新着の感想 ―
[一言] あ、執事さんじゃなくて、従者さんが怪しいって言ってたのか。 にしても、やっぱり怪しいよねぇ? 私もそう思うわ
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