Section.20 Runner(7)
「アホども、やめんか! 」
大島が、声を張り上げた。
「権藤が死んだらどうする!これ以上死体を増やすな! 」
しかしその声は、乱戦の喧噪にかき消される。
明和会の男たちは、権藤も入れて正確には十二人。そのうち、権藤は雪奈に刺された上、アイコに投げ飛ばされて戦闘不能。アイコはもう一人投げ飛ばして、ついでに締め落としていた。アイコに手を出した男は聖が奇襲同然に蹴り飛ばして退場させた。結果的に、残ったのは九人。
対するのは、聖と美春、史郎に一樹。半狂乱のアイコと権藤を刺して放心している雪奈は戦力外、大島はもともと荒事に参加するガラではない。二対一でヤクザ相手では、いくらなんでも分が悪い。一樹はもと警官だし、美春はボクサーとしての基礎の上に修羅場を潜ってきているから、遜色はない。聖は基本的な身体能力は高いが、ケンカ慣れしているわけではないから、不意打ちでもない限り本職相手では分が悪い。史郎のことは、美春も聖もよく知らないが、体格が小さいのは有利とは言えないだろう。
明和会の連中からすれば、聖たちの振る舞いは、喧嘩にならないくらい無謀な行動に映ったかもしれない。
その分、虚を突かれた。
美春がひらりと聖の後ろから飛び出し、聖に襲いかかろうとしていた大柄な男に、横からアッパーをくれた。冗談のようにキレイに決まり、大柄な男は顎を出して仰向けに倒れる。さらに、倒れてくる大男を躱そうとしてたたらを踏んだもう一人の顔にもジャブを数発。あっという間に、二人を脱落させる。
明和会側の一人が、権藤に肩を貸して、引きずるように乱闘の輪から離れていき、これで残りは六人。