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前回、サブタイトルのナンバリングを間違えてしまいましたので修正しました。内容に変化はありません。

「外の意匠も凄かったけど……。内部も結構しっかり作られてるんだな」

「だね。でもどうやってこんな立派な施設を作ったんだろう? 昔の人は凄い進んだ文明を持ってたって言うけど、魔法を研究する施設ってことみたいだしやっぱり魔法で建てたのかな……?」


 俺、クラルテ、ゼン、ドミ、スピラの即席五人パーティは程なくして順番待ちを終え、今は地下研究施設の三階層の通路を進んでいた。

 施設内部は外の支柱のように凝った意匠が施されている訳ではないが、ツルツルとした壁面は明らかに人工的に加工されたものであり、この施設が高い技術力によって建造された事が察せられる。

 通路の高さと横幅もかなりのものだ。大型のトラックが進入できるくらいの広さはあるだろう。

 加えて施設内のどこであっても常に光が行き届いている。光源が電気によるものなのか魔力によるものなのかはよく分からないが、何らかの照明器具が壁や天井に埋め込まれて通路を常に照らしているようだ。

 また、通路には時折小規模の研究室らしき部屋も見受けられるが既にこの三階層は物色され尽くされている場所だからか今のところ目ぼしいものは見つかっていない。


「っと、また別れ道だな。上り階段と下り階段か。さっき聞いた話通りなら下り坂の道を進むんでいいんだよな?」


 ゼンから三階層までの内部構造や門番とやらについての最新情報を共有してもらってはいたが念のため確認しておく。


「ええ、門番への道順はそれで間違いありません」

「………なんだか順調すぎて本当にここが危険な場所なのか疑いたくなるな」


 道中は想像していた以上に順調だ。俺たちの行く手を阻む罠や敵といった姿はない。

 しかし、それは俺たちより前に施設を探索した先人らが排除してくれたからだろう。通路に散らばる機械の残骸がそれを物語っている。

 これらの残骸は施設内の至る所にあり、侵入者を排除する自動固定砲台のような役割だったと推測できた。

 だが気になるのはその固定砲台の形状だ。残骸は殆ど原型を留めていないが、この形状には見覚えがある。

 

「これ、機関銃ってやつか……? 世界観が違ぇんだけど……」


 その残骸は、ひしゃげているが細長い砲身と先端に弾らしきものを発射するとしか思えない穴があった。

 銃に詳しい訳じゃないが、これが連射する銃だということくらいは何となく分かる。


「…………本当にここって魔法を研究してた施設だったのか?」


 機械文明的過ぎる残骸からは魔法の要素なんて何処にも見受けられない。

 しかし、それについてはクラルテが解説してくれた。

 

「ボクも何となくしか分からないけど、魔力を溜め込める事が出来るみたいだから多分これは魔力を発射して攻撃する魔道具なんだと思う。どの残骸からも魔力の残滓(ざんし)が感じられるしね」

「へぇ、魔力が弾になるのか……」

 

 言われてみればこの残骸たちの近くに薬莢(やっきょう)のようものも、実弾も見当たらない。となれば、この残骸は本当に魔力を発射して攻撃する魔道具だったのだろう。


「あれ……? でもそれならなんでこの残骸はこんな所に置きっぱなしにされてんだ? 一応、これって魔道具なんだろ? 魔力が弾になるならこれ単体で武器にもなるだろうし、魔道具だってんなら回収して売れそうに思えるんだけど……」

「確かに武器としての価値はあるかもしれませんね。ですがこの重量を持ち運ぶのは相当に骨が折れるでしょうし、一定以上の魔力を持った者でないとそもそも武器として運用できない魔道具でもあるようです。何より──」

「……皆、ちょっと止まって」


 ゼンの話に耳を傾けているとクラルテから待ったが掛かる。

 実は俺たちが道中を順調に進める理由には先人たちのおかげ以外にもう一つあった。

 それはクラルテの存在だ。


「……やっぱりガーディアンの気配がする」


 この施設にはガーディアンと呼称されるゴーレムが徘徊している。ゴーレムというのは意思なき動く無機物を総称して指すようで、詰まる所このガーディアンは研究施設を警備する為に配備された存在という訳だ。

 三階層を徘徊する多くのガーディアンは先人たちの手によって破壊されているが、徘徊するその性質のせいで全てのガーディアンを排除するには至っていなかった。

 そんな訳で俺たちも徘徊するガーディアンと遭遇する可能性は十分にあったのだが……。


「ちょっと行ってくるねっ!」


 クラルテがガーディアンの気配を察知すると素早く撃破して戻ってくるため、クラルテを除いた俺たちはこの施設に入ってから一度もガーディアンと戦闘することなく進むことができている。因みにガーディアンの残骸を道中で何度か見掛けていたが、その造形はやはり機械文明的な要素を感じるフォルムをしていた。


「あっ! わたしも……!」


 スピラが少し遅れてクラルテに追従しようと反応するが、既に走り去ったクラルテにその声は届かず、スピラは置いていかれる。

 外での威勢はどこにいったのか。さっきからスピラはどうにもこんな調子でいまいち集中できていない様子だ。

 もう何度もクラルテを見送っている。もしかするとクラルテとの実力差を思い知らされて不甲斐ない思いを感じているのかもしれない。


「……何見てんだよ」

「あー、いや……。そう落ち込まなくたっていいんじゃねぇかって思ってさ。今はクラルテを頼りにしようぜ」

「うっせーな……。お前と一緒にすんな」

「……………ゼン、お宅の妹さん言葉づかい怖すぎなんだけど」

「手が出てませんからスピラなりの照れ隠しですよ。ああ見えてイチジクさんの伝えたいことはちゃんと伝わってますからご安心下さい」

「ああ、強がるのもスピラの可愛いところだ。私はそういうスピラの事が好きだぞ」

「照れ隠しじゃねーよ!」


 何となく察していたがやはりゼンとドミは妹のスピラをかなり溺愛しているようだ。


 ────つーか、ドミは兄妹の話になると饒舌(じょうぜつ)になるんだな。


 そうして五分と経たない内にクラルテが駆け出していった方角から爆発音が聞こえてくる。あれはクラルテがガーディアンとやらを破壊した音だ。もう何度も聞いている。


「終わったみたいだな。でもお陰様で未だに動いてるガーディアンとやらを拝めてないのは勿体ない気もするぜ……」

「それについては申し訳ありません。フライハイトさんにばかり負担を掛けてしまって」

「あ、いやいや! あれはクラルテが率先してやってる事だからゼンたちは気しないでくれって!」


 それにゼンたちがいるからこそクラルテは俺を残して自由に動くことが出来ている……というのが事実だ。むしろ俺が足を引っ張ってると言っても過言ではない。


「ただいまーっ!」


 そんなこんなでクラルテが戻って来ると俺たちは再び奥へ進んでいく。

 そうしてようやく俺たちは件の門番がいるという部屋に辿り着いた。

 


◇◆◇

 


 俺たちは門番のいる部屋にはまだ入らず、情報を改めて整理する。


 先ず、門番がいる部屋は大きく開けた空間だった。

 見える範囲に大きな障害物はなく、部屋の中央に門番らしき存在が鎮座している。

 この部屋に繋がる道は俺たちのいるこの場所と門番の向こう側だけのようだが、門番の背後にある道は大きなシャッターで閉じられていた。事実上、出入り口は俺たちのいるここしかない。

 天井には通路にあったものよりも大きな照明器具が設置されている。お陰でこの空間も視界不良で困る心配はなさそうだ。

 また、壁にはこれまで残骸として見てきた機関銃の魔道具が設置されている。しかし、この入り口付近にある幾つかの機関銃については既に破壊されているようだ。恐らく先人たちによって破壊されたのだろう。

 そして機関銃を破壊する必要があったという事は、あれらの機関銃は侵入者に対して攻撃能力を持っているという事になる。


「でも、本当にこの部屋に入らなきゃ攻撃される心配はないみたいだな……」


 ゼンから聞いていた事前情報通りだ。部屋の入り口からいくら観察しても門番や機関銃が反応する様子はない。


「一応確認するけど、この安全圏から遠距離攻撃を仕掛けてあの門番を倒せたりってのは出来ないんだよな?」

「そうですね。集めた情報によるとどうやらあの門番は強力な物理と魔力の耐性を持っているようですので。私の遠距離魔法では期待する結果は望めないと思います」

「ボクも剣が武器だから遠距離攻撃の手段は持ってないかな」

「だったら接近戦しかあるまい。その方が私も積極的に戦える」 

「ドミの言う通りでしょうね。現状私たちの最大戦力はフライハイトさんとドミですが、二人とも接近戦を得意としています。ここは前衛と後衛に分かれて門番の弱点を探りながら戦うのが良いかと」


 ゼンは門番の弱点を探る為の作戦を提示した。

 事前情報でこの門番が難敵だとは聞いていたが、実際に目にした事で何故厄介なのかがよく分かる。


 ────ありゃあどう見てもロボットだな……。


 門番とは全長二メートルを越える二足歩行のゴーレムだった。

 機関銃やガーディアンと同じく機械文明の気配が感じられる。表面の外装は黒光りする光沢を放ち、頑丈そうだ。その巨体には巨腕と巨足がついており、かなりの重量を持つことが窺えた。

 この入り口付近が安全地帯になっている最も大きな理由は、あの巨体がこの場所に突っ込めば通路そのものが崩壊しかねないからに違いない。


「具体的にはフライハイトさんとドミが陽動している間に私とイチジクさんが弱点を探ってみます。くれぐれも怪我をしないように気をつけて下さい。危ないと思ったなら直ぐにここまで避難することを忘れないで下さいね」

「ちょ、ちょっと待てよ⁉ ふざけんなゼン! わたしも前で戦うっての‼」

「スピラには私とイチジクさんの護衛を頼みます」

「なっ……⁉ 何でわたしが……‼」

「流石にこの距離から門番の弱点を探すのは遠すぎて難しいですからね。私たちも門番にある程度近づく必要があるんです。ですがこの空間には身を隠せるような障害物なんてありません。隠密魔法を使えるスピラが護衛に適任なんです」

「……っ⁉ くそ……! 分かったよ……‼ けど無機物にわたしの隠密魔法が通じる保証はねーからな……‼」


 ゼンがスピラに俺たちの護衛を任せたのは合理的な判断からなのだろうが、恐らくスピラの調子が悪い事を考慮しての判断なのだろう。


「それじゃ行ってくるね!」

「スピラ。ゼン兄さんたちをしっかり護衛するんだぞ」


 そうして当面の動きが決まるとクラルテとドミはそれぞれ一言だけ残して門番へと駆けていく。


「では私たちも行くとしましょう。スピラ、お願いします」 


 ゼンがスピラに頼むとスピラは魔法を発動させ、スピラの体が一瞬だけ淡い光に包まれる。そして光が消えると同時にスピラの存在感が薄くなった。

 意識すればそこにスピラがいると分かるが、他の事に気を取られれば直ぐにでもスピラを見失いそうになってしまうような感覚がある。これが“隠密魔法”というスピラの魔法のようだ。

 

 地下施設に潜る前にゼンたちと一通り互いに出来ることの情報も共有していたから軽く知ってはいたが、スピラもクラルテと同じように魔法を駆使しながら剣で戦う戦闘スタイルなのだとか。

 とはいえ、スピラはクラルテのように魔力を剣にして戦うのではなく、隠密魔法で相手の隙を作って戦いを有利に運んでいく如何にも魔法戦士といった戦い方を得意としているらしい。


「……ほらよ。肩でも掴んどけ」


 スピラに嫌々促されて俺とゼンがスピラの肩に触れると、隠密魔法の効果が俺たちにも共有されていく。

 これで俺とゼンもスピラと同じように存在感が薄くなっている状態になったようだが、その実感はない。 

 だが、そうこうしている内にクラルテたちと門番の戦闘が始まる音が聞こえてきた。

 俺たちも門番の弱点を探すため、無言で戦場へと移動を開始する。



読んでいただきありがとうございます。

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