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「……すまない。昨晩は大変な迷惑を掛けた」


 フロンツィエで一夜を過ごした翌日の朝、朝食の席でフォルグーンさんは開口一番に俺とクラルテに謝罪の言葉を繰り出していた。


「そ、そんなことないよ! フォルグーンさんはボクを気づかったから酔っ払っちゃったんだし……!」

「だな。俺も別に気にすることはないと思うぜ。それにお陰でフォルグーンさんの人柄とかも伝わったしさ」


 酔って口走っていたフォルグーンさんのフェリミリカ大公やジークリットさんに対する数々の言葉は、フォルグーンさんが家族を強く想っているからこそ出てきたものだ。予想外のアクシデントではあったがフォルグーンさんの事を知れたという意味では結果的に良かったんじゃないかと思う。 


「……しかし、酩酊した挙げ句に動けなくなって部屋まで運ばせてしまうなど騎士にあるまじき醜態だ。本当に申し訳ない」


 俺もクラルテも全く気にしていないのだが、フォルグーンさんは申し訳なさを拭いきれないらしい。


「じゃあ俺たちに貸し一つって事で謝罪もこの辺にしとくのはどうだ? 借りを返す機会なんてこれからの旅の中で幾らでもあるだろうしさ」


 俺たちの暫定目的地は東の国境線付近にあるという“今は使われていないロイライハ帝国の要塞”だ。魔馬車で移動するにしても目的地に辿り着くまで確実に数日以上は要する。そして旅に不慣れな俺はきっとその道中で二人に様々な迷惑を掛けてしまうだろう。


 ────待てよ……? そうすると目的地に到着する頃には数え切れない程の借りを俺は二人に作っちまってるんじゃ……。


 嫌な想像が働くが、それはさておきこの旅の道中でフォルグーンさんが俺に借りを返す機会なんて数え切れないほどあるのは間違いない。


「…………なるほど、謝罪をしたところで私の気が晴れるだけという訳か。オチバ・イチジク、行動で示せとは実に建設的な意見だ。流石は皇帝候補者たちを相手に戦ってきただけある。では君の提案通り、この旅の中で借りはしっかり返すとしよう」

「えっと、色々と言い訳してぇとこだけど……。まぁどうせ拗れるだけだしいいや……。よし、そんじゃあ魔馬車の運転は任せたぜフォルグーンさん」 

「……ああ、それについては私に任せてくれて問題ない。昨夜の酔いも今は完全に抜けきっている」


 いざとなれば魔馬車の運転経験のあるクラルテに頼むなんて事も考えていたが、フォルグーンさんのこの様子なら魔馬車の運転に心配は要らないだろう。


 そうして朝食を取った俺たちはフォルグーンさんの操る魔馬車でフロンツィエを()ち、東の国境線に続く街道を進んでいくと……。 


「えっと、それじゃあハウデムって村の周辺にある廃虚を盗賊が根城にしてるって事でいいかな?」

「ええ、立ち寄ったハウデムの人々からはそう聞かされましたね……。とはいえ、商人としては付近に盗賊が住み着いてると聞かされてゆっくりは出来ません。話を聞いた私はその日の内にハウデムを出ましたよ」


 俺たちは東の国境線方面から来た商人と遭遇し、思い掛けず新たな情報を入手していた。


「と、まぁそういう事情ですので私が聞いた盗賊の話が事実である保証はありませんが……」

「ううん! 教えてくれてありがとう! はい! これ情報料!」

「いえいえ、勇者様の手助けになれたのなら光栄ですとも。女神フィロメナのご加護がありますように」


 俺たちが遭遇したのは外国から来た商人のようで、この商人はクラルテの白いマントを見て勇者だと確信し、商魂たくましく商売を持ち掛けてきたところ今の情報を俺たちが買ったという訳だ。


「……行き先はハウデムに変更だな」

「異論はないぜ。けど、そのハウデムってのはどこにある村なんだ?」


 商人と別れるとフォルグーンさんが改めて“ハウデム”に行き先を変更する旨を口にし、俺は地図を広げて御者台のフォルグーンさんにその“ハウデム”という村について尋ねる。

 ロイライハ帝国の地理に疎い俺はハウデムの場所なんて全く分からない。地図と睨み合って端からくまなく探していけばいずれ見つけられるだろうが、折角ロイライハ帝国の東の地理に詳しい案内役としてフォルグーンさんが付いてきてくれてるのだ。聞かない手はない。


「……概ね向かう方角に変わりはないな。ハウデムは東の国境線付近にある村だ。尤も東の国境線に続く街道からは少し南に逸れた位置にある村という事であまり立ち寄る者は多くない」


 きっとロイライハ帝国に来る殆どの人は帝都に向かうのが目的だろう。それこそ先ほどの商人のように商魂たくましくなければ敢えて帝都に繋がる街道を逸れてまで田舎の村に立ち寄る理由はないという事だ。


「あんまり人が通らない場所だから盗賊も周辺の廃虚に住み着きやすかったってことか。でも、ただの盗賊ってなるとラスバブとはあんまり関係なさそうかもな」

「……いや、そうとも言い切れない。その盗賊らがセアリアス学園の生徒であるという可能性はある」

「え? そうなのか? ん? 待てよ? そういやアリルドと一緒に学園を抜け出た亜人生徒が多数いるって話があったか。じゃあそいつらが盗賊に?」

「……あくまで推測だがそう考えられる根拠もある。単純に時期の問題だ。先日のライハ神襲撃より以前から盗賊被害が発生していたならその報が既に商人らを通じてフェリミリカの耳にも伝わっているはず。だがそうした話を私はフェリミリカから聞いていない。つまり、盗賊被害の件はまだフェリミリカに伝わっておらず、発生したのもごく最近の事になるという訳だ」


 盗賊被害は学園から生徒らが抜け出した後に発生している。確かに盗賊被害の発生したタイミングを考えれば盗賊の犯人が学園生徒である可能性は高いのかもしれない。


「でも、仮にその盗賊が学園から抜け出した生徒ならどうして盗賊被害なんて起こしたんだろう? だってそんな事したら自ら居場所を教えちゃうみたいなものだよね? それだけ物資が不足してる状況って事なのかな?」


 クラルテの疑問は尤もだ。

 学園から抜け出した生徒らはアリルドをリーダーとして仰ぐ集団であり、アリルドやその共犯のラスバブが彼らを統率していないとは考えづらい。

 となれば、可能性としてはクラルテの言う通りアリルドたちが手綱を握れないという状況、もしくは……。 


「敢えて居場所を知らしめる為に盗賊被害を起こしたのかもしんねぇな……」 

「え? どういうこと?」

「ほら、アリルドたちは東の神殿でライハ神を待ってるって話だろ? けど、アリルドはその具体的な場所を明示しなかった。それっておかしいよな? 待ってるって言うなら待ち構える場所を教えるべきだろ。だから、もしかすると待ち構える準備を整えたかったのかもしれねぇなって」

「ということは……。待ち構える準備が終わったから盗賊被害を発生させてボクたちの耳に入るようにした……ってこと?」

「フォルグーンさんと同じであくまで推測だけどな」


 詰まる所、ラスバブとアリルドの目的はライハ神を誘き寄せる事にある。

 であれば、いつまでも誘き寄せる場所を秘匿しているとも思えない。

 そう考えるとこの盗賊被害はラスバブたちが“自らの居場所を知らせる為に発生させた”なんて風にも思える訳だ。


「ま、それもハウデムに行けば分かることか」


 こうして俺たちは次の目的地をハウデムとし、ハウデムとの分岐点まで街道を突き進む事にした。 

 とはいえ、ハウデムは国境線付近にある村だ。出発したその日の内にハウデムに到着する筈もない。

 俺たちは十数時間ほど魔馬車に揺られながら街道を進み、やがて日が暮れてきた所で魔馬車を街道の隅に停め、夜営の準備に取り掛かる事にした。 

 そして夜営の準備も先ほど終わり、皆で焚き火を囲んで一息ついていると……。


「………………さて、そろそろフェリミリカと連絡を取るとしよう」


 荷物の中から黒い円筒状の物体を取り出しながらフォルグーンさんがそんな事を口にする。

 魔道具で定時連絡をする時間という訳だ。

 しかし、そこで僅かな違和感を覚えた。


 ────あれ……? フォルグーンさんの顔色、少し悪くないか……?


 焚き火に照らされるフォルグーンさんの顔色があまり良くないように見える。今日一日御者をしていたから俺やクラルテより疲労が溜まっているのかもしれない。


 ────でもそりゃそうか。神経使うよな。そのうち俺も魔馬車の動かし方を覚えねぇと……。


 実際、魔馬車の動かし方は覚えるに越したことはない。早速明日から魔馬車の制御方法を教えてもらう事にしよう。

 けど今はとにかく定時連絡だ。


「…………これが連絡用の魔道具だ」


 フォルグーンさんが取り出した黒い円筒状の物体はやはり魔道具だったらしい。五百ミリのペットボトル程の大きさをしている。


「そう言えばあんまり詳しくないから聞かせてもらうんだけど、セアリアス学園の入学式で前にフェリミリカ大公が空中に映像を出してたろ? これがあの魔道具なのか?」

「……いや、あれも魔道具だがこれとはまた違う。あれはもっと汎用的な魔道具だ。私も専門ではないから詳しい説明は省かせて貰うが……。あれは魔力の通り道を事前に作り、その通り道がある場所に映像を映すといった魔道具だ」

「これとは違うのか?」

「……違う。これは場所を問わず、どれだけ距離が離れていようと声を届ける事を可能とする魔道具だ」

「めちゃくちゃ凄い魔道具じゃねぇか……」

「……だが、前にも言ったがこの魔道具は誰でも使える訳ではない。今は私とフェリミリカの魔力で起動するように調整を施している。……よし、後は私が魔道具に魔力を込めるだけで此方の準備は完了だ」 

「わ〜! 準備もそんなに掛からないんだね! 魔力を流すだけで連絡が取り合えるなんてすごい便利だよ!」

「……確かに起動は簡単だ。しかし、言うほど便利とも言い切れない。いつでも使えるという訳ではないからな」

「あ、この魔道具って使用条件があるんだ?」

「……そういう事だ」 

「ちょ、ちょっと待ってくれ……? 使用条件ってなんだ? 話の流れから何となく意味は汲み取れるけど一応説明してくれ」

「そっか。そう言えばオチバは遺跡から発掘される魔道具とかまだ全然触れてきてないもんね。えっとね。魔道具の中には使用するのに魔力以外にも必要な条件があったりするんだよ。けっこう珍しいんだけどね」


 俺の疑問にクラルテが答える。


「じゃあこの連絡用の魔道具を使うにはフォルグーンさんの魔力以外にも何かしらの条件が必要ってことか?」

「そういうこと。で、この魔道具がフォルグーンさんとフェリミリカ大公の魔力で動くって事は多分これと対になる魔道具がフェリミリカ大公のところにもあって、そこが関係してるんじゃないかな?」

「……その通りだ。この魔道具は対となるもう一方が存在し、私とフェリミリカがそれぞれの魔道具に魔力を流している間だけ繋がるようになっている」 


 フォルグーンさんとフェリミリカ大公が同時にそれぞれの魔道具に魔力を込めること。それがこの魔道具の使用条件という訳だ。

 しかし、これでは緊急時に連絡を取るのは殆ど不可能に近い。確かに手放しで便利だと評価するのは難しい魔道具と言えるだろう。


「それで連絡の時間を決めてたんだな。あれ? でもそうなると昨日の定時連絡は……。って、フォルグーンさん⁉ 大丈夫か⁉」


 昨日定時連絡が出来なかった事を思い出し、何気なく口にした途端、フォルグーンさんの顔色が明らかに悪くなっていた。


「……………………昨日連絡出来なかった事をフェリミリカは怒っているだろうか」


 なるほど。先程からフォルグーンさんの具合が悪そうだった原因は昨日定時連絡が出来なかった事にあるらしい。


「えっと、怒ってるかは分からないけど……。心配はしてるんじゃないかな……?」

「ああ、俺もそう思うぜ? てか、むしろ怒ってるとしたら連絡が遅れれば遅れるほど状況は悪くなる気がするぞ?」

「…………そうか。そうだな。二人とも待たせてすまない。不甲斐ない姿を見せた。早速定時連絡を行うとしよう」


 フォルグーンさんは静かに覚悟を決めると連絡用の魔道具を胸の前で構える。すると魔道具から淡く輝く霧が放たれ、俺たちの周囲を漂う。

 その直後……。


『無事である事に一切の疑念はありませんでしたが……。初日から定時連絡を怠るとは思っていませんでした。きっと相応の理由があるのでしょう。先ずは状況説明を』


 どこからともなく声が聞こえてきた。

 聞こえる声の音質は決して良好とは言えないが間違いない。聞こえてくるのはフェリミリカ大公の声だ。そしてフェリミリカ大公の声は魔道具から直接聞こえてきてる訳じゃないのだろう。仕組みは不明だがどうやら俺たちの周囲を漂うこの輝く霧がフェリミリカ大公の声を俺たちに伝えてくれているらしい。 


「…………状況に関しては今朝方フロンツィエを出立し、街道沿いに進みながら商人からの情報を得てハウデムに進む針路を取る事となった。…………定時連絡をしなかった事に関しては本当にすまない。完全に私の落ち度であり、君の怒りを買うのも当然だ」

『怒っていません。ですが状況は概ね理解しました。不測の事態に見舞われたようでないのなら何よりです』


 何処からともなく聞こえてきたフェリミリカ大公の声にフォルグーンさんが応答し、そこへ更にフェリミリカ大公が返す。

 会話が成立している様子を見るに魔道具は正常に機能していると見て良さそうだ。


「……いや、優しい君の事だ。きっと私と連絡が取れない状況に君は」

『待ちなさい。フォルグーン、この定時連絡は互いの状況を確認する事を目的としたものです。私情を少しも挟むべきではないとまでは言いませんが程々にしなさい』

「……そうか。すまない。君と話が出来るのが楽しくてつい興が乗ってしまった」

『はぁ……。全く貴方という人は……。ですが貴方が無事で本当に安心しました。頼りにしていますよ』

「……ああ。愛する君の期待には必ず答えるとも」

『ええ、知ってます。愛する貴方が私の期待に答えるなんてことは。ふふ、定時連絡をするという事で他にも人をこの場に呼んでいたのですが人払いを済ませていて正解でした。こんな会話を聞かれたら恥ずかしいったらありません』

「……………………そうか」

『何ですかフォルグーン? 妙な間がありましたが?』

「…………いや、気にしないでくれ」

『確認しますが……。まさかそんな恥ずかしいセリフを他に人がいる中で口走っている訳ではありませんね……?』


 フェリミリカ大公との会話を始めてから次第に顔色が良くなっていったフォルグーンさんだったが、その一言で一気にまた青くなる。

 俺とクラルテはフェリミリカ大公のそのセリフを聞くと瞬時に顔を見合わせ、言葉を発する事もなく直ぐにこの場から離れる為に立ち上がったのだが……。


「…………………………すまない。私の配慮が足りなかった」


 フォルグーン・ヴィッツ、彼は愛する人に例え優しい嘘であっても吐けない人物だったようだ。


「ご、ごめんなさい……! クラルテです。全部聞こえちゃってました……」

「オチバです。聞いてすみません。でも夫婦仲が良いのは全然恥ずべき事じゃないと思いますよ」


 この場にいる事をバラされたのであれば黙り続ける訳にもいかない。

 というか、ここで返事をせずに逃げてしまえば俺たちは“不可抗力とはいえ盗み聞きをして謝罪もしない人”になってしまう。つまり、謝るタイミングはここしかなかった。


『あ、謝らなくて結構です……! ですが二人とも今聞いた会話は可能な限り忘れなさい! それとMr(ミスター).オチバ、貴方と連絡を取りたいという者がいます! 彼女との会話が終わったなら今晩の定時連絡を終了とします!』


 フェリミリカ大公は早口で捲し立てるようにそう言うと気配を消す。しかし、魔道具がフェリミリカ大公の魔力で動いている以上、きっと魔道具の直ぐ側にまだいるのだろう。


『フェリミリカ理事長、これはもう話が出来る状態なのでしょうか? ……そうなんですね。ありがとうございます』


 そしてフェリミリカ大公の声と入れ替わるようにして別の声が聞こえてきた。


『オチバ? 聞こえてるかしら?』 

「リスティアお嬢様か! ああ、聞こえてるぜ! でも、わざわざ定時連絡を使ってまでどうしたんだよ?」


 聞こえてきた声はリスティアお嬢様のものだ。

 だが、リスティアお嬢様とは二日前に別れの挨拶を済ませたばかりであり、以前のリスティアお嬢様ならまだしも今のリスティアお嬢様が我が儘で定時連絡を利用するとは思えなかった。

 つまり、それだけ急ぎの用があるのだろう。事実、リスティアお嬢様は直ぐに本題へと突入した。


『それがね、オチバに苦情が来てるのよ』

「俺に苦情? 誰からだ?」


 思い当たる節は……絶対にないとも言い切れない。恨みなんて誰だって知らない所で買ってそうなものだ。

 とはいえ、リスティアお嬢様がわざわざ定時連絡を使うくらいだから切って捨てる訳にいかない相手からの苦情なのだろう。


『アーディベル家別邸の管理人からよ』

「あ……⁉」


 告げられた瞬間、俺は苦情の意味を完璧に理解した。


 ────俺、ルーギットさんに何も言わないまま出発しちまってんじゃん……⁉


 ルーギット・オペレー。彼女は人形(ビスクドール)に宿るアーディベル家別邸の管理人だ。

 本来はライハ神と対話する日にルーギットさんへの連絡は済ませておくつもりだったが、リスティアお嬢様たちとの食事や翌日の作戦会議に備えて学園で一泊したりなど色々な事情が重なり、結局俺はルーギットさんへの報告を忘れ去って今に至っていた。


「やべぇ……。マジで忘れてた……。流石に申し訳なさが勝つぞ……」

「ぼ、ボクも忘れてた⁉ どうしよう⁉」

『安心してちょうだい。管理人への事情説明にはスピラを向かわせて一件落着したわ。それとクラルテは気にしないで大丈夫みたいよ? 管理人の文句は全部オチバに向かってるってスピラが言ってたから』


 ルーギットさんの文句がクラルテに向かないのは当然と言える。俺と違ってクラルテはアーディベル家の使用人ではなく、客人として扱われていたからだ。

 だが俺はアーディベル家の使用人であり、客人ではない。

 そんな訳で俺はアーディベル家の別邸に宿泊するにあたって管理人のルーギットさんに対して毎日三食の甘味を提供するという対価を払う約束をしていた。

 苦情というのは挨拶もなく旅立った事なのかもしれないが、恐らく甘味を用意されなくなった事による苦情が主題だろう。

 しかし、個人的には泊まってない日の対価を要求される謂れはないと思うが……。相手はルーギットさんだ。あまり深く考えても仕方ないのかもしれない。


『そういう訳で帰ったら改めてスピラを労ってあげてちょうだい。管理人に気に入られて苦労してるみたいよ』

「あー、苦労してる姿が目に浮かぶな……。うん、スピラには次会った時必ず礼を言うよ。リスティアお嬢様も教えてくれてありがとな」

『ふふ、どういたしまして。それじゃあね』


 こうして初めての定時連絡は終了した。

 スピラにとっては迷惑極まりない話に違いないが、今の俺はルーギットさんに構っている暇はない。ルーギットさんの事は取り敢えずスピラに丸投げさせてもらうとしよう。

読んでいただきありがとうございます。

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