表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

206/215

206

 

 念願のライハ神との対話を終えた翌日の朝。

 今日からルーマとユーリィさんを助ける為の本格的な作戦会議が行われる。俺もその会議に参加する予定だ。

 という事で、俺も作戦会議が行われるセアリアス学園の講堂に足を運んでみると……。


 ────見慣れない服装の奴らがいるな……。


 講堂に入って直ぐ、セアリアス学園の制服とも違う統一された服装を身に纏う十人ほどの一団が目に入った。彼らは一箇所に纏まって着座しており、何やら机を囲んで作業をしている。

 この時間この講堂にいるという事は彼らも“作戦会議の出席者”に違いない。


 ────けど、雰囲気的には学生って感じゃねぇし……。なら、あれがフェリミリカ大公の私兵ってやつか……?


 昨日、フェリミリカ大公は自らの私兵を投入して作戦を実行すると話していた。きっと彼らがその私兵たちなのだろう。

 だが、フェリミリカ大公の抱える私兵がたった十人ぽっちとも思えない。


 ────ってなると、この人らはフェリミリカ大公の私兵部隊を率いる隊長格ってとこか。ん……? よく見たらあれって……。アリクティさん……?


 私兵たちの一団を見ていたところ、彼らと共に机を囲んで作業するアリクティさんの姿が視界に映った。

 と言っても、アリクティさんの服装に変化はない。“アリクティさんがフェリミリカ大公の私兵になった”という事情ではなさそうだ。


 ────んー……。遠目からじゃアリクティさんたちが何をしてんのかよく分からねぇな……。まぁ、これから始まる会議と関係ある事なら急いで知ろうとしなくても大丈夫か。


 何の作業をしているかはこの作戦会議に耳を傾けていればやがて判明する事だろう。

 そうして更に視線を巡らせると……。


 ────お、クラルテも発見と。


 クラルテも見つけられた。

 朝に弱いクラルテがこの会議に出席できるか少し心配だったがどうやら無事に起きれたようだ。しかし、まだ眠気から完全に覚醒していないようで先ほどの一団から離れた席でぼんやりとしている。


 ────それと……。クラウディオたちは流石にまだ回復してねぇか……。


 講堂を見渡すがクラウディオたち皇帝候補者らの姿はない。救護室で魔力切れの回復に専念しているのだろう。


 ────あと俺の知ってる中でまだここに来てないのは……。


 なんて事を考えていると、俺が講堂に入って来た所とは違う別口からフェリミリカ大公、ライハ神、ジークリットさんが現れた。これで俺が知る限りの出席者は揃ったという訳だ。


「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」


 フェリミリカ大公が登壇し、皆の注目を集める。


「先ずは大まかな経緯を改めて説明しましょう。一昨日の祝祭会において、クルエル教の信者を名乗るラスバブという人物と皇帝候補者のMr(ミスター).レイジアンが共謀してMs(ミス).マヤリスとMs(ミス).アルメヒスの両名を連れ去る事態が発生しました。そして去り際に彼女らは『東の神殿で待つ』との言伝をライハ神に残しており、此度の作戦会議はこれらの事態を解決する為のものとなります」


 大まかな経緯はフェリミリカ大公の話している通りだ。相違はない。


「早速作戦会議へと移りたいところですが、その前に……。ライハ神、どうぞ」


 フェリミリカ大公が後退すると、隣に立つライハ神が前に出る。


「……私は言伝に従って東の神殿、とやらに向かう事にしました……。これだけは決定事項、です……」


 それはライハ神が絶対に譲れないところなのだろう。ライハ神の強い決意が感じられた。

 そしてライハ神の決意を受けて再びフェリミリカ大公が前に出る。


「祖であるライハ神の決断を私は支持します。私は東へ赴くライハ神に皇帝候補者たちと手練れの者で編成された護衛班を付ける事に決めました。また、ラスバブやMs(ミス).マヤリスとMs(ミス).アルメヒスの居場所を突き止める捜索班については昨日の時点で既に編成を終え、手掛かりを探すように指示を出しています。以上がこれまでの経緯と現状です。祝祭会という祭典での襲撃を未然に防げなかったこと、学生の身分であるMs(ミス).マヤリスとMs(ミス).アルメヒスを守れなかったこと。全てはヴィッツ公国大公であり、セアリアス学園の理事である私の責任です。ですが、何としてでも拐われた両名は救出しなければなりません。両名を救う為、ライハ神の身を護る為、そしてラスバブという脅威を取り除く為に、どうか皆さんの力を貸していただきたい」


 そうしてフェリミリカ大公も自身の決意を口にし……。


「これより、クルエル教信者ラスバブに拐われたMs(ミス).マヤリスとMs(ミス).アルメヒスの救出に関する作戦会議を行います」


 いよいよ会議が始まった。


Ms(ミス).マヤリスとMs(ミス).アルメヒスの救出を行うにあたり最初に確認しなければならないのは、“Ms(ミス).マヤリスとMs(ミス).アルメヒスが何処に囚われているのか”という点です。手掛かりはMr(ミスター).レイジアンが残した“東の神殿”という言伝のみですが……。これについて捜索班は何か手掛かりを掴めましたか?」 

「はっ! 今現在、ネフシャリテ家の助力により“神殿”と想定される場所を地図に書き記しているところです」


 フェリミリカ大公の問いに答えたのはフェリミリカ大公の私兵と思われる一団の一人だ。

 だが……。


「いいえ。たった今、地図は完成しました」


 その発言は直ぐ別の声によって否定された。


「いきなりの発言をお許し下さい、フェリミリカ大公。私はルフナ・ネフシャリテの代理でこの場に出席している従者のアリクティ・グローウンです」


 私兵の発言を否定して立ち上がったのはアリクティさんだ。


「ほう。では貴女がネフシャリテ家の……。構いません。Ms(ミス).グローウン、続きをお願いします」

「発言の許可、ありがとうございます。先ずフェリミリカ大公にお伝えしなければならない事が一つあります。それは現状ネフシャリテ家が持つ情報において、ロイライハ帝国の東側に“神殿”と呼ばれるような建造物は存在しないという事です」

「……つまり、東に“神殿”は存在しないと?」

「少なくとも昨年の地形調査では“神殿“も“新たに建造中の建造物”も確認されていません。なので、“神殿は既存の建造物を利用している可能性が高い”と我が主ルフナ・ネフシャリテは見当をつけました。そしてロイライハ帝国が所有する施設が乗っ取られたという話が出てきていない現状、神殿として利用されている建造物があるとすればそれらは“現在ロイライハ帝国の管理の手を離れている施設”だと推測できます」


 そう言ってアリクティさんは身を退け、机の上に広げられている大きな地図を指し示す。


「ご覧下さい。此方が我が主ルフナ・ネフシャリテの指示により作成した“神殿として利用されている可能性のある現在稼働していない砦や要塞等の施設の位置を記した地図”になります」


 アリクティさんと私兵たちはこの地図を作成する為に机を囲んでいたという訳だ。


「これは……。流石はフロンツィエ辺境領を預かるネフシャリテ家ですね。東の国境線周辺一帯の地形までもが詳細に記されています」


 広げられた地図は既成の地図に手書きの地図を何枚も画き足して繋げたもののようで、既成品のヴィッツ公国の地図を左側に置き、そこから上下と右に手書きの地図が繋がって伸びている。

 肝心の地図の中身はというと、湖を挟んでヴィッツ公国を囲むフロンツィエからロイライハ帝国の東側国境線地帯までの地形の情報が事細(ことこま)かにかかれているようだ。

 だが特に注目すべき点は、手書きの地図に付けられている数々の丸印だろう。

 要するに……。


Ms(ミス).グローウン。この印の場所にラスバブ、或いは拐われた二人がいる可能性が高いのですね?」

「はい。我が主ルフナ・ネフシャリテはそう推察しています」


 早くもラスバブたちの居場所に見当がついたという事だ。


Mr(ミスター).ネフシャリテとその従者であるMs(ミス).グローウンに感謝を。…………捜索班!」

「はっ!」


 アリクティさんへの礼を述べるとフェリミリカ大公は捜索班を呼びつけ、先ほどフェリミリカ大公に応答したのと同じ私兵が再び応答する。


「貴方たち捜索班は直ちにこれらの印のある場所を巡る計画を纏め上げなさい。また捜索箇所はどれも国境線と限りなく近く、数が多い上にそれぞれの距離は離れています。小隊単位での再編成を行い、準備が整いしだい出立するように」

「はっ‼」


 フェリミリカ大公の指示を受けた私兵は力強く返事をし、私兵たちの中から三人を引き連れて講堂を出ていく。

 そこで俺も改めて地図に記された丸印を確認してみると、確かにそれらの位置は東側の国境線に沿うように点在し、互いに距離も離れているようだ。


 ────この数だと捜索にはかなりの時間が掛かりそうだな……。


 仮に捜索班が一つだけだった場合、これらの場所を全て巡るとなれば最後に捜索する場所に着く頃には軽く数ヶ月が経過してしまっている事だろう。捜索班を分割して捜索させるフェリミリカ大公の指示は的確だ。


「はい! はい‼ フェリミリカ大公! ボクから一つ提案があるんだけどいいかなっ!」


 するとこのタイミングで勢いのある声が前の方で上がった。クラルテだ。その様子を見るにフェリミリカ大公の話に区切りがつくのを今か今かと待っていた事が何処と無く窺える。


「何でしょう? Ms(ミス).フライハイト」

「ボクとオチバも捜索班に加えてほしいんだ。ほら、ボクとオチバは怪我も残ってないし……。もちろん魔王との戦いには全力を尽くすよ! でも、二人が拐われたのはラスバブを倒せなかったボクにも責任があるから……。ボクにも二人の捜索を手伝わせて欲しいんだ……!」


 クラルテの提案は昨日聞かされていたものであり、俺も承知済みの内容だ。


「そうですか……。Mr(ミスター).イチジクも同様の理由ですか?」


 しかし、講堂の後ろの方にいた俺にフェリミリカ大公の視線が突然飛んで来たのは予想外だった。


「…………はい。俺もクラルテと同じ気持ちです」 


 いきなりの指名に心臓が跳ねるが、心を落ち着けて返事をする。

 内心慌てて口にした返答だが、この言葉に偽りはない。

 俺を庇って拐われたルーマ。

 “ユーリィさんを護る”というクラウディオたちとの約束を果たせずに拐われてしまったユーリィさん。

 俺は二人に負い目を感じていて、本心から二人を助けたいと思っている。

 だが、現実的に考えて何の対抗手段もない俺が二人を拐ったラスバブをどうにか出来る筈もない。

 というか、ラスバブとはもう関わりたくないというのが俺の本音だ。

 そこで俺は一つの結論に至った。


 ────ラスバブとの対峙を避けつつ、拐われた二人を助けて負い目を払拭する……! 


 それこそが俺の狙いだ。


「分かりました。Ms(ミス).フライハイトとMr(ミスター).イチジクが捜索班として動く事を許可します」 

「えっ⁉ 本当⁉ やった! ありがとうフェリミリカ大公‼」


 クラルテが驚く。いや、俺も声に出さないだけでフェリミリカ大公のその返答に驚いていた。

 クラルテが二人の捜索に乗り出せばそれだけクラルテの体力はラスバブと戦う前に消耗してしまう事になる。それはクラルテにラスバブの打倒を依頼したフェリミリカ大公にとって避けたい事態の筈であり、きっとフェリミリカ大公はクラルテの提案を受け入れないだろうと俺は思っていたのだ。


 ────フェリミリカ大公を説得するのに骨が折れるだろうって思ってたけど……。杞憂だったな。


 では、果たしてクラルテの提案を受け入れたフェリミリカ大公の真意はというと……。


「礼を言うのは此方の方です。魔王との戦いだけでなく、拐われた二人の捜索にも手を貸していただけるのですから。それに魔王との戦いに関しては魔王の専門家とも言えるMs(ミス).フライハイトの判断に委ねるのが最善でしょう。貴女が出来ると言うのであれば私はそれを信じるだけです。そして何より捜索の手が増えればそれだけ拐われた二人の救出も早くなります。願ってもない提案です」


 フェリミリカ大公がクラルテの提案を受け入れたのは、対魔王の専門家としての勇者クラルテへの信頼、そして拐われた二人の救出を何より優先に考えているからだった。


「ですが、貴方がたが捜索に乗り出すにあたり連絡役を兼ねた現地に詳しい同行者を一人付けさせて貰います」

「それくらい全然! むしろ助かるくらいだよ!」


 俺もクラルテもロイライハ帝国の地理には全く通じていない。フェリミリカ大公の申し出は本当に有り難い話だ。


「ではMs(ミス).フライハイトとMr(ミスター).イチジクを捜索班に加える事とします。同行者は午後までに此方で選出しますので貴方がたはその間に出立の準備を済ませておくようにお願いします。必需の物資に関しては此方で用意しますので捜索班より受け取って下さい」


 そうして俺とクラルテも捜索班として動く事が決まり、以降の会議はライハ神の護衛班に関する議題という事で俺とクラルテは出立の準備に取り掛かるのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よろしければブックマークやいいね、そして下部から出来る星の評価もしていただけたら嬉しいです。

大きな励みになるのでよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ