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お待たせしました。


 

「よし! ギルドに着いたね! それじゃあ早速依頼を見に行こう!」

「ああ、分かった」

  

 クラルテは意気揚々と高額な依頼を探すためギルドカウンターの方へと進んでいく。

 俺たちはギルドにやって来ていた。 


 ────にしても……。新顔や余所者が我が物顔で歩いてたら絡まれちまったりする……ってのが異世界ファンタジーの恒例行事だと思ってたけど……。


 堂々と歩を進めるクラルテにちょっかいをかける者はいない。その理由はどうやらクラルテのマントにあるらしい。クラルテの纏う純白のマントはなんでも聖教会が勇者に贈る特別な品のようで、所謂(いわゆる)勇者の証として人々には知られているからのようだ。 

 ギルドにいる誰もがクラルテのマントを目にすると驚きの顔を向けつつ道を開け、更には同行しているだけの俺に対しても羨望の眼差しのようなものを注いでくる。


 ────絡まれないに越したことはねぇが、何もしてねぇのにそんな眼差しで見られるってのは何だかムズムズすんな……。


 しかし、順調だったのはギルドの職員の話を聞くまでだった。 


「申し訳ありません勇者様。近年の情勢により高額討伐の依頼は残っていない状況でして……」


 なんでも近年モルテ=フィーレ付近で頭角を現していた魔王が勇者に倒されたということで、危険な魔物や魔獣の数がめっきり減った今は討伐依頼が無い状況なのだとか。


「そっか〜。でも困ってる人がいないのは良いことだよねっ! それじゃあ他にはどんな依頼があるかな? 今、手持ちが全然ないからどんな依頼でもこなしちゃうよっ!」

「そういうことでしたら……。こちらの依頼なんかは如何でしょうか?」


 そうしてギルド職員がクラルテに案内する依頼を俺も横から覗き込む。


「えーと、なになに……。清掃依頼に、薬剤の採集依頼、街路整備の助力依頼と、あとは……護衛依頼ってのみたいだな」


 この中の依頼で一番高額なのは護衛依頼のようだが、危険な魔物や魔獣がいない時勢だと言っていたのに何から護衛するというのだろうか。

 そんな俺の疑問を見越してかギルド職員の人が先に口を開く。


「魔物や魔獣が減少したことで確かに交易路で危険生物に襲われる不安は無くなりましたが、それは同時に野盗なども交易路を安全に動ける事を意味していますからね。それに元々魔物や魔獣を狩って生計を立てていた人が苦肉の策で荷馬車を襲う、なんて被害報告も中にはあるんです」

「……まさか荷馬車を襲ってたその人らってギルドで仕事を無くした人たちとかなんじゃ?」


 もしそうだとすればその人たちは戦闘のプロだ。安全性を考慮するならそんな危険なのものは受けたくない。 

 だが、俺の不安な様子に気づいたのかギルド職員さんはすぐにフォローする。 


「ご心配なさらずとも大丈夫ですよ。討伐依頼の不足による失業問題についてはモルテ=フィーレ共和国議会の方で新たな依頼を出す形で解決していますから。例えばこちらの街路整備の助力依頼はモルテ=フィーレ共和国議会からギルドに出されているものなんです。またこの他にも薬剤採集の依頼などをギルドからの依頼として常設して対策していますので」


 つまり、ギルドを拠り所にしている人たちについては問題ないという事なのだろう。

 とはいえ、好き好んで野盗に襲われる恐れのある依頼を受けたくはない。


「まぁ、最初の依頼だしあんまり荒事になるような依頼は避けてぇかな……。つっても常設依頼は報酬が低いみたいだし、取り敢えず全部の依頼に目を通してから決めるとすっか……」

「うん、ボクもそれでいいと思うよ」


 そうしてクラルテに確認を取ってから他の依頼にも目を通す中……。


「危険そうじゃなくてなるべく報酬の多い依頼……。ん……? なぁ職員さん、この依頼についてちょっと聞いてもいいか……?」


 一つの清掃依頼を見つけて手を止めた。


『"清掃依頼"

 依頼人:モルテ=フィーレ共和国環境整備委員会

 場所:北方都市ミッドヴィルに建造された元モルテ王国と元フィーレ王国による共同魔法研究地下施設

 報酬:五万フィロ~五十万フィロ

 備考:現在、地下二階までの清掃が完了しています。地下三階以下の清掃進行一フロア毎に報酬を上乗せします。また、地下研究施設より回収した魔道具は買い取りという形で報酬の追加もあります』


 報酬にあるフィロという通貨は聖教通貨と呼ばれており、モルテ=フィーレ共和国内専用通貨のモルフよりも価値があると聞いた覚えがあった。 


「この報酬額は他の依頼と比べてもかなり高いと思うんだけど……。もしかしてこの依頼って凄い危ない依頼だったりする?」 

「あー、その依頼ですか。そうですね。実は少し訳有りの依頼でして……」


 俺の質問を受けたギルド職員は依頼書の項目にある清掃場所の部分を指差す。

 そこには"北方都市ミッドヴィルに建造された元モルテ王国と元フィーレ王国の共同魔法研究地下施設"とあった。


「この施設はモルテ=フィーレ共和国がまだモルテ王国とフィーレ王国だった頃に出来た遺産施設なんです」

「モルテ王国とフィーレ王国……。今の口振りだとこの二つの国が一つになって今のモルテ=フィーレ共和国になった……ってことなのか?」

「はい。かつてのモルテ王国とフィーレ王国は弱小国家でしたがこの共同施設の誕生を最初の架け橋として互いに協力し合うようになって近隣列強諸国と渡り合ったと言われていますね」

「わぁ! すごい美談だねっ!」

「そうかもしれませんね。ですがこの施設が建設された当時の背景には隣国諸国との戦争が関わっていまして……。ここで研究されていた魔法というのは……」

「なるほど、戦争に役立つ魔法を研究する施設だったって訳か」

「はい。そしてここから依頼が高額報酬である理由に繋がるのですが、実はこの施設の防衛設備はまだ生きているんです。恐らく当時の機密情報を盗まれないようにする為の防犯対策だったのでしょう。この依頼書に書かれた清掃というのはつまり、研究施設に存在する防衛設備の破壊なんです」

「え……? これってモルテ=フィーレ共和国の依頼だよな……? なんで協力関係の切っ掛けになった最初の架け橋をブッ壊そうとしてんの……? 美談はどうなった……?」

「そういう反応になるのも分かりますけど仕方がありませんよ」


 だが職員は俺の愕然とした反応を見ても意に介さず、あっけらかんとした調子で話を続ける。


「だってよく分からない兵器が家の地下にあるかもって考えたら普通に怖いじゃないですか。それにこれだけの報酬ですから誰だって一度は足を運んで下さりますので、取り敢えず依頼を置いておけば少しずつですが清掃も進むんです」


 結局、報酬額に釣られた俺たちも一度その地下施設とやらに足を運ぶことにするのだった。

 


 ◆◇◆

 

 

 それから俺とクラルテはモルテ=フィーレ共和国の首都であるモルテ=フィーレから北に向けて出立し、ミッドヴィルという近隣諸国との国境線沿いに面した街に到着していた。徒歩で。


「と言うわけで、(くだん)の地下研究施設のあるって街にやって来た訳だけど……。マジで道中じゃ何も問題なんてなかったな……」

「そうはそうだよ。モルテ=フィーレ共和国の中央通り(メインストリート)から北に続く舗装された道をただひたすら歩くだけだったし」


 モルテ=フィーレ共和国の中央通り(メインストリート)の名前は、かつてのモルテ王国とフィーレ王国の国境線だった事に由来するという。

 モルテ=フィーレ共和国はこの中央通り(メインストリート)を中心に発展し続け、今でも南北に伸びるこの中央通りの途上を起点に街が発展し続けているとの事だ。そんな背景もあり、共和国を縦断する中央通り付近の危険生物は軒並み退治され尽くされていた。


「……まぁ、危ない目に遭うよりは全然マシだな」


 とは言え、徒歩で二日の旅は現代人の俺にとって中々に大変な旅だったのは言うまでもない。


「それにしてもちょっとした遠出になっちまった分、出費も増えちまったな……。ノイギアに更に金を借りる事になったのも痛い……。これは何がなんでも依頼を成功させてプラスの結果にしねぇと……」

「えーと、一度足を運ぶだけって言ってなかったっけ?」


 因みにクラルテは元々旅をしていただけあって出費はほぼない。俺だけがノイギアから追加の金を借りている。


「ここまで苦労してマイナスで終われねぇ! 早速その地下研究施設に行って元を取るぞ!」


 共和国の最北に位置する街、ミッドヴィルに着いてまだ間もない俺たちは落ち着くことなく依頼にあった地下研究施設へと向かうのだった。 

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