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サブタイトルの整理前に出来ちゃったので投稿します。


 ラスバブの件やネーロとリーノたちの決闘など、色々な問題が終息した。

 疲れた体力もノイギアの店の二階の居間を借りてしっかり睡眠を取った事で回復している。

 俺を取り巻く環境は着実に良くなっているといっても過言ではないだろう。 

 しかし、何も問題がない訳じゃない。


「金がねぇ……。死活問題だ……」


 異世界と言えど金策は必要だった。

 ノイギアに返す借金に、旅支度に必要な資金など、今の俺はとにかく金に関する問題が立ちふさがっているのだ。


「あ……。そっか、リザイアスにも金を返さねぇとじゃん……」


 俺はリザイアスにも借金していた事を思い出す。

 色々あったがリザイアスは俺がこの世界に来てから最初に手助けしてくれた人物だ。

 リザイアスからは返さなくていいと言われたが、そういう訳にはいかないだろう。


「貰いっぱなしってのは性に合わねぇんだよな……。ま、今はノイギアの店を手伝って少しでも稼がねぇとか……」 

 

 応急処置として今の俺はノイギアの店で住み込みながら働かせてもらう次第となっている。

 だがノイギアの店は行列が出来るような人気店という訳ではない。給金が出ることは有り難いが、借金返済と旅支度を思えばこの働き口だけに頼るのはどうにも心許なかった。


「そうすっとやっぱり他でも仕事を探す必要があるよな……」


 そうして支度を整えて一階に下りると既にノイギアが開店準備に取り掛かっており、カウンターの上にトーストを乗せた二枚の皿が配置されているのが目に入る。


「えーと……。これってもしかして……?」

「朝食だ。文句は受け付けんぞ」

「ぜんぜん文句なんてねぇって! ありがとな!」

「……言っとくがただじゃないぞ? しっかり給金からは天引きさせてもらう」

「あ、そういう……。いや、それでもわざわざ作ってくれたんだ。感謝してるよ」

「くく、そうかい」


 しかし、借金や旅支度金に加えて生活資金まで必要となるとますます他の仕事を探す必要があるだろう。

 朝食を取りながら再び仕事について頭を悩ませる。

 と、そんなこんなで朝食を食べ終えたところでふと気になった。


「あれ……? なぁ、ノイギア。今って開店してる状況なのか? 客足が全然ねぇけど……」

「くく、閑古鳥が鳴いてて悪かったな。これがウチの通常営業だ。敢えて言うが、そもそも俺の店で働いたところでたいした稼ぎにはならん。せいぜいが日銭を稼げるくらいだろうさ。だが日銭を稼げる上に屋根のある場所で寝れるんだ。上等だろう?」

「ゔっ……! それは……。大変ありがとうございます、としか言えねぇよ。欲を言えば寝袋じゃなくてベッドで寝れたら言う事なしだったけど……。でも意外だな。外観も良さそうだから繁盛してもおかしくなさそうなのに。……やっぱり店主が無愛想だからか」

「おいおい、そういう事をはっきり言うな。ウチはどんちゃん騒ぎするような大衆食堂じゃないんだ。昼はゆったりした時間を提供する喫茶店。夜は落ち着いた時間を提供する酒場ってのが売りなのさ。そもそも来る客だって新規の奴はそうそういないんだよ」


 確かによく見れば店内の内装は客を落ち着かせる事を目的とした雰囲気作りがされている。まさに趣味でやってるお店という感じなのだろう。


「だからお前らを雇ったところでせいぜいが窓や床の掃除が中心だ。それと客がいたら無駄話は控えてくれよ? 店の空気感を壊されちゃ折角気に入ってくれた常連客も遠退いちまう」

「ま、そりゃそうだな。あっ、ならあれは何なんだ? 店に入るとき見たやつ。悩み相談とかなんとかってのを見たぜ? 相談に乗るくらいなら俺でも手伝えるんじゃねぇか?」

「う〜ん、あれはだなぁ……」


 その話題にはあまり触れたくないのかノイギアが眉間のしわを深くしたちょうどその時……。


「ふわぁ~あ。みんな早いねぇ。おはよぉ……。ふわぁ……」


 大きな欠伸を二度もしながらクラルテが上階から下りてきた。

 因みにノイギアの店の構造はログハウスを模した二階建ての木造建築だ。

 一階は全て喫茶店として作られており、二階は居間と二つの部屋があった。一つはノイギアの自室で、もう一つは物置に使っているとのことだ。

 昨夜の部屋割りは、当然ノイギアは自室。俺は二階の居間に、クラルテは二階の物置で一晩過ごしている。


「おいおい、クラルテ……。お前さんは勇者である以前に年頃の女の子だろうに……」

「ん? ボクがどうかしたぁ……? ふわぁ〜。あっ! このトーストってもしかしてボクのかな……⁉」


 目ざとくノイギアが用意していたトーストを見つけたクラルテは寝ぼけ眼のまま席についてそれを頬張っていく。


「はぁ……。これが勇者とはねぇ。それを食べたら顔を洗って身嗜みを整えてこい……」

「は〜い」


 そうノイギアに促されたクラルテは朝食を終えると席を立ち、顔を洗いに洗面所へと向かった。


「それで? 悩み相談ってのをやってんだろ?」

「はぁ……。あれはだな。あまりにも客が集まらんもんだから気の迷いで書いちまったのさ。それに真面目に相談しに来る奴なんていないぞ? しかしまぁ、これを書いてるからか酒の席で愚痴を聞く機会が多いのかも知れんな。お陰で色々な情報を知れるようになった」

「ってことは……。えっ? それじゃあただの客寄せ文句だったのか? なら相談料とか受け取ってちゃんとした営業形態したらもしかして……?」

「それはないな。ただ愚痴を聞くだけで金を取る訳にはいかんよ。何か問題を解決した訳でもあるまいし。少なくとも俺の店では認めん」

「あ、そうすか……」


 店主が駄目と言うなら従うしかない。


────でも待てよ? それってもしかしてこの世界じゃ新しいビジネスになるんじゃねぇか……?


 これはひょっとすると俺の現代知識で金稼ぎ無双なんて展開が到来するのかもそれない、なんて事を考えていると……。


「そもそも本気で悩みごとを抱えてる奴はギルドに行くだろう」


 どことなく聞いたことのある名詞がノイギアの口から放たれた。


「ギルド? って、あのギルドか? 魔物退治の依頼とかが掲示板に張り出されたりする? あのギルド?」


 ギルド、それは異世界系の物語でよく目にする単語だ。それら多くの物語におけるギルドの役割は大抵の場合、“様々な依頼を集めてギルドに所属する人物又は団体にそれらの依頼を割り振る仲介業者”という役目を担っている。


 「お前さんの想像しているものと一致しているかは知らんが……。俺が知っているギルドは一つだな。とにかく、金を積んででも解決したい問題事ってのはギルドで依頼を出して解決するのが普通だ。悩み事だって例外じゃない。報酬金さえあればそれを解決しようと躍起になってくれる輩が一人や二人いるもんだ。それに人が多く集まる場所にはその問題を解決してくれるのに適任な専門家がだったいるかもしれん。わざわざ俺の所にまで来て金を払ってまで相談する奇特なやつはそうはいないだろうよ」

「なるほど、それは確かに……。専門家には勝てねぇな」


 悩み事相談で金策できるかもしれないと期待したが、沢山の人材が集まるギルドが競合相手というのは流石に強すぎる。この考えは捨てた方がいいだろう。


「あ、一応聞くけんだど……。住民同士の問題のトラブルだとか、愚痴を聞くとか、子供を預かるとか……。そういう庶民的な問題でも普通はギルドを頼るもんなのか?」

「……? 何を馬鹿なことを……。そんなものをギルドに頼む奴はいないだろうな」

「そうなのか⁉ だったらそういうのを専門にしたビジネスならもしかして────」

「住民同士のトラブルに無関係な奴が首突っ込んでどうする。まさか暴力沙汰で解決するつもりなのか? それとも説き伏せるつもりか? どちらにしても余計に揉める上にこっちが恨まれる結果になると思うぞ」


 言われてみれば納得しかない。

 元の世界でも殆どの人は近隣トラブルがあったからって用心棒を雇うなんて事はしないだろう。弁護士を雇ったりはするだろうが、その弁護士だって覚悟の上で依頼を受けているに違いない。


「そして愚痴を聞くってのが仕事になるのかは俺にはイマイチ分からんが……。誰彼構わず愚痴を聞くってのはお勧めせんな。金銭のやり取りがある以上、依頼主は信用して愚痴を溢す。その愚痴の中にポロっと知っちゃいけない秘密なんてのが紛れていて命を狙われるようになるんじゃたまったもんじゃないぞ」


 これも正論だ。例えば、愚痴を言いに来た人がクルエル教徒だと考えたら……。いや、考えたくない。


「ましてや子供を預かる? あり得んな。知らない誰かに子供を預けたがる親がいると思うのか?」


 託児所は平和な日本だからこそ通用するのだ。

 この国の治安についてそこまで詳しい訳じゃないが、少なくともいきなり決闘に巻き込まれる程度には治安が悪いという事を俺は知っている。その点を踏まえて言えば、子供を見ず知らずの人物に預けるなんてまさにあり得ないだろう。


「……おっしゃる通り、だ。はぁ、軽く考えすぎてた……。つーか、無知を晒し過ぎてかなり恥ずいわ……」

「うーん。でもボクはオチバが言ってたことってそう悪くない気もするけどねっ! ボクは良いと思うな! オチバは誰かを助けたいって思ってたんでしょ? その気持ちはボクにもよく分かるもん! オチバは勇者に向いてる性格してるよっ!」


 あまりの無知に羞恥を感じていたところ、顔を洗ってすっかり眠気を覚ました様子のクラルテが追い打ちをかけてきた。


「や、止めてくれ……⁉ そんな純粋な気持ちで考えてた訳じゃねぇんだから……⁉」

「えー? 照れなくてもいいのにー? どうして恥ずかしがるの? ボクはそういう世界になって欲しいよ? それって皆が他人を信用できる世界だもんね!」

「も、もう止めろっての……⁉」

「くく……。確かに聞いてるこっちが恥ずかしくなるような理想郷だな」

「ノイギア⁉ お前までそっち側か……⁉」

 

 止まらないクラルテの言葉を遮るように大きな声を出すと、ノイギアがそれを笑って弄りだす。


「うーん。冗談なしでボクは本当に良いと思うんだけど……。だって理想は追い求めなきゃ近づけないんだよ?」

「ま、こればかりは勇者様の言う通りだろうな。何事も動かなきゃ始まらん。という訳で、今日のところは客も来そうにないからお前たちは外で先立つものでも稼いでくるといいさ」

「いいの⁉ なら遠慮なくそうしようよオチバ! ギルドに行こう!」

「い、いきなりだな⁉ ん……? あー、そういう事か」


 俺はギルドと聞いて先入観から“ギルドは魔物退治など危険な依頼を取り扱う場所”と考えていたが、そうではなかったのだ。

 ギルドは、"報酬金さえあればそれを解決しようと躍起になってくれる輩が一人や二人いる"ような場所だとノイギアは教えてくれていた。

 

「要は俺達みたいに金に困ってる奴らが行くのにうってつけの場所だった訳だな……。ノイギア、お前それは回りくどいって……。教えてくれたのは助かるけどよ……」

「よーし、それじゃ行くぞーっ!」


 こうして俺とクラルテはギルドに向かう為、ノイギアの店を後にするのだった。

読んでいただきありがとうございます。

続きは出来次第投稿になります。

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