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よろしくお願いします。
────マジで最っ高のタイミングだぜ……!!
クラルテ、スピラ、レファリオの登場に胸が熱くなるが、しかし残念ながら今の俺にその再開を喜んでいる時間はない。
「っと、すまねぇ! 詳しい説明をする時間はねぇんだ! 来てもらって早速なんだが、俺たちを囲んでやがるこのゴロツキ共の処理を頼む……!」
突然の頼みにクラルテはきょとんとした表情を浮かべるが、
「─────! ────!」
それが急ぎであると分かると力強く頷き、
「──────────────────」
レファリオは早速とばかりに影魔法を発動させていく。
「───、─────────────? ───────────────────?」
スピラはダルメジアを指差しており、何となく“元凶を叩いて良いのか”と聞いているような感じがする。
だがそれはマズい。
何故なら、俺の勝利条件は“ダルメジアを物理的に倒すことで達成できるものではない”からだ。
賭け勝負における俺の勝利条件は“残り二回の回答で正解すること”であり、仮にスピラの言うようにダルメジアをぶっ倒したとしても金貨の場所を制限時間内に、しかもあと二回の回答の中で言い当てられなければそれは俺の負けになる。
────そうなったらアリクティはダルメジアから解放されねぇままだし、俺自身もダルメジアに命を握られちまう……!
それは最悪の状況だと言えるだろう。
重要なのは、俺が制限時間内に金貨の在処を言い当てることなのだ。
────結局の所、この状況を真に打開するにはこの賭け勝負に勝たなきゃなんねぇってこった……!
だから、
「悪いけど奴に手を出すのは待ってくれ……!」
俺はスピラに待ったを掛ける。
「色々事情が複雑でな……! 手順通りに奴を倒さねぇと奴に俺の命を握られちまうんだ……!」
「──!? ───!? ──────────────────────────!?」
「待て待て!! 何言ってんのか分かんねぇけど、落ち着けスピラ!? ちゃんと策はある!!」
────まぁ、その策ってのもかなり運要素が強いんだけどな……。でも、もう今はそれに賭けるしかねぇ……!
「とにかく、邪魔が入らねぇように俺の身を護ってくれると助かる……!」
◆◇◆
レファリオが影魔法で俺たちを囲む無法者たちの動きを止め、クラルテが他の無法者たちを牽制し、スピラが俺の護衛をする。
そんの陣形が整った所で俺はやっと本来の集中力を取り戻し始めていた。
────残る俺の回答回数は二回……。この二回で何としても金貨の隠し場所を当てなくちゃなんねぇ……。
ルールとして絶対に曲げられないのは、“金貨は体に隠されている”ということ。
────けど、問題は誰の体に隠したのかってことだ……。
状況的にも金貨の隠し場所は、ダルメジア本人かダルメジアが呼び寄せた十人の無法者の内の誰かが持っている筈だ。
本当は呼び寄せられた無法者たち全員を観察したかったが、残念ながらそれは阻止されてしまったし、もうそんな事をしている時間もない。
────でも、冷静に考えてみりゃちゃんと手掛かりはあった……!
この状況下において、明らかにそぐわない反応をしている人物が一人いたのだ。
“勘が的中して正解してしまう”という可能性があるにも関わらず、そいつは俺が回答する事に何の緊張感も持っていなかった。
つまり、そいつは“俺が必ず不正解になると確信していた”という事になる。
“俺が必ず不正解になる”という事は、“俺が想定している場所には隠されていない”という事であり、同時に“無法者たちの誰にも隠していない”という事だ。
────お前だ……! ダルメジア……! お前のその余裕が“自分自身に金貨を隠してる”って白状してるようなもんなんだぜ……!
その推察はダルメジアの性格を鑑みても辻褄が合うと言える。
ダルメジアは基本的に誰も信用していない。
そしてダルメジアは必ず勝てる勝負を好み、確実に勝てる策を取る。
ならダルメジアが金貨を隠す場所として無法者を選ぶことなど絶対に有り得ない。
万が一にでも負ける可能性のある択を取るはずがないのだ。
────隠した場所はダルメジア本人……! 確実だ……!!
そうなればまだ指摘していない箇所は、左右の靴、両足の下、背中だが……。
────間違いなくその中に金貨は隠されてねぇ……! 奴のあの自信は俺が知り得ない場所に金貨を隠してるからだ……!
ならば、
「…………よし。悩んでもやっぱ分かんねぇな。お手上げだ」
潔く諦めるしかない。
「ほっほーゥ! 降参ですかァ〜! えェ!! 潔く敗北を認めるのは大変よろしい事だとワタシも思いますよォ〜! だからといってアナタを丁重に扱うとは限りませんがねェ〜!!」
ダルメジアの自信を見る限り、いくら悩んでも俺が正解に辿り着く事はないに違いない。
あと二回の回答で確実に正解する方法なんてものはどう頑張っても存在しないのだ。
だが、
「誰が降参するなんて言ったよ。俺じゃ正解が分かんねぇってだけの話だろ」
それは降参したという訳では無い。
「…………そうですかァ。ワタシィ、往生際の悪い方は嫌いですのでアナタを甚振るのが今から非常に楽しみですよォ」
「そうかよ。そろそろ時間がくるから七回目の回答だ。金貨はお前の背中にある」
その回答はやはり不正解で、俺は最後の三十秒を迎える。
しかし、不思議と俺の中に焦りはない。
最早俺に出来る事なんてものは、信じる事だけだからだ。
そして俺は、ずっと勝負の行方を見守っていた男に目を向ける。
「そろそろ回復した頃だろ。お前の魔法なら分かる筈だ。俺は残りの三十秒をお前に賭けるぜ、ルフナ。俺はお前の魔法を信じてる。お前なら気付ける筈だ」
ルフナは目を見開いて驚いている。
当然だ。こんな土壇場で唐突に無茶振りされて驚かない筈もない。もし俺がされた側だったら、“何で俺に振るんだ”と激怒していた事だろう。
────それでもここで勝つにはお前に頼るしかねぇ。無理だってんなら、それは俺が賭けに負けたってだけの……。いや、やっぱ多少は恨むかも……。
そんな事を考えながらも俺は覚悟を決めて目を瞑るのだった。
◆◇◆
オチバがルフナに声を掛けて目を瞑ったあと、いち早く反応したのはダルメジアだった。
「ほっほーゥ! もしかしてルールをお忘れですかァ〜? 外野の声はワタシやアナタに届くことはないのですよォ〜? それにィ……! 魔力切れがそう簡単に回復する筈もないでしょウ! アナタのしている事は全て無駄なのですよォ〜!」
だが、オチバはダルメジアの煽りに対して一切の反応を示さないでただ沈黙している。
そしてルフナは、
────オチバ、君はいったい何を考えているんだ……。
オチバの行動の真意を探ろうとしていた。
そして、
────確かに今の俺は君のお陰で少しなら魔法も使える……。
ダルメジアの言葉とは反対にルフナの魔力切れは想定以上の回復傾向にあった。
ダルメジアとの賭け勝負の果てにルフナが魔力切れとなったのは嘘偽りない事実だ。実際に魔力切れを起こしたルフナは魔力で体を強化することも、満足に喋る事も出来ない状態にあった。
しかし、その賭け勝負が終わった直後にルフナはオチバからとある魔道具を託されていたのだ。
その魔道具には魔力が宿っており、その魔力を使う事でルフナは徐々に容態を回復させたという訳だ。
今のルフナは喋る事に負担はなく、魔法だって問題なく使える。
────だが、それだけだ……。ダルメジアの心は読めたが、それを“君に伝える手段”がない……。君は俺に何を望んでいるんだ……。それを伝える方法をこの三十秒で見つけろって言っているのか……?
現実的に考えれば視覚情報を利用してオチバに伝えるのが得策なのだろうが、
────駄目だな……。
ルフナはその択を即座に切り捨てる。
────ダルメジアが金貨を隠している場所は少し複雑な位置だ。文字や身振りで瞬時に伝えるのは無理がある……。
また、ルフナが視覚情報を利用する手を切り捨てたのにはもう一つ大きな理由がある。
それは、“オチバが目を瞑った”という状況そのものだ。
────つまり、視覚情報以外で伝えられる方法にオチバは行き着いている……。そしてそれは、“視覚情報で伝えるよりも確実に伝わる方法”という事だ……。
ルフナはオチバの言葉を心の中で繰り返し反芻し、その方法を考える。
そうして考えた末にルフナは────。
◆◇◆
「どうやら本当にこのまま時間切れで幕が閉じそうですねェ……。であるならばァ、最後は大いに盛り上げて終幕を迎えるとしましょうかァ〜!」
残された時間は十五秒を切り、
「それではァ! 十ゥ! 九ゥ!」
ダルメジアはカウントダウンを始める。
それでも俺は目を瞑り続け、外界の音を聞き流し、いつか届く筈の声を信じて集中する。
そして、
「…………ダルメジア。金貨の隠し場所は、“お前の後頭部の中”だ。金貨はお前の後頭部が欠けて出来た“殻の内側”に隠されてる」
目を瞑ったままの俺がその言葉を発した刹那、ダルメジアを包む球体が弾けた。
「…………はィ?」
「ふぅ……。どうやら正解だったみてぇだな」
これで俺の誤答回数は七回、ダルメジアの誤答回数は八回という結果だ。
俺は瞑った目を開いてダルメジアを視線で捉える。
そして、
「つー訳でこの賭け勝負、俺の勝ちだぜ。ダルメジア」
賭け勝負の終わりをダルメジアに突き付けたのだった。
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