無敵令嬢の唯一の弱点
溺愛系が書きたかったから書きました。
とにかく甘さを追求しております。
楽しんでいただけたら幸いです…
アマンダ・マリリアは無敵である。
貴族令嬢ながら、馬に乗り戦場を駆け抜け、
細身なレイピアを自由自在に操って国を勝利へ導く。
見目も大変麗しく、黄昏色の波打つ髪が風に靡くさまは
男だろうと女だろうと見ぼれ、彼女の勝ち気な燃えるような瞳に吸い込まれてしまいそうになる。
強く、美しく、聡明な公爵令嬢は正に無敵だ。
ーー そんな彼女の唯一の弱点を知り得るのは
世界広しと言えども僕だけだろう。
「やあ、アマンダ」
僕が後から声を掛けるとアマンダの肩がピクリとゆれ、ゆっくりとこちらへ振り向いた。
「ヲルフ殿下…」
美しい彼女の声は僅かながら震えている。
平静を装っているようだけど、君の耳が一瞬で赤くなったのを僕は見逃していないよ、アマンダ。
「久しいね、帰っていたのかい?」
「はい、2日ほど前に西の大陸を制圧しましたので。」
恥ずかしそうにうつむく彼女からは無敵令嬢と呼ばれるあの凛々しい姿の面影は全く無い。
「ほお、流石アマンダだね。」
「勿体無いお言葉です…」
僕はアマンダに近寄り、腕に彼女の華奢な体を囲った。
「お疲れ様、よく頑張ったね。」
艷やかな髪を撫でながら優しく言うとアマンダの体から力が抜けてしまった。
へとりと地面につく前に力を込めて彼女を支える。
見れば、彼女の顔は真っ赤に紅潮していた。
そう、彼女の唯一の弱点
ーーーー それは僕だ。
「ふふふ、可愛いね。
そんなに顔を赤くして…」
耳元で囁やけば彼女の赤い顔はより一層赤みを増した。
ああ、本当に可愛い。
僕とアマンダの出会いは王城の庭園だった。
まだ幼かったアマンダは彼女の父親に連れられて登城したが、途中ではぐれ、迷子になって庭園の隅で泣いていた。
そこに僕が通りかかり、泣いているアマンダに声を掛けたのだ。
その後、アマンダは良く王城へ遊びに来るようになり一緒に遊ぶことも多くなった。
いつだっただろうか…
それまで兄のように慕ってくれていたアマンダがいつもの様に抱きつかず、
僕がエスコートするだけで顔を赤く染めるようになったのは。
その変化がとても可愛く、愛おしく僕の目には映った。
やがて…母上の目論見だろうが…僕とアマンダの婚約が決まり、
目に見えてアマンダが僕のことを兄としてでは無く婚約者として慕うようになった。
時折僕がこうして接触を図ると決まってアマンダは照れるのだ。
こんなの、可愛いに決まってるじゃないか。
「ふぇ…で、殿下…あ、の…」
「なぁに?」
アマンダが潤んだ目で僕を見つめる。
少し屈んで目線を合わすとアマンダは視線を泳がせる。
急かす様に僕が首を傾げれば彼女は小声で僕に耳打ちした。
「あ、の…殿下…だ、大好きです…」
「…っっっっ!!!」
それだけ言うと再び顔を真っ赤にさせてアマンダは走り去ってしまった。
「…もう、ほんと…」
顔の熱を覚ますために手で顔を仰ぐ。
ああ…くそ。
なんでああも無自覚なんだか…
僕はすぐにアマンダの後を追う。
だって、あんなに可愛い顔したアマンダを他の男に見してやる訳にはいかないじゃないか。
本当に君はわかってない…
なんにも…わかってないよ…アマンダ…
どうやらもっと知らしめる必要がありそうだ。
僕はアマンダの弱点を知っている。
でもアマンダは知らないだろう。
ーーー 僕の唯一の弱点が
アマンダだということを。
読んでいただき、ありがとうがとうございました。