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スカートの少女、いろいろ見せすぎる

「待てノエル、後続が来ていない!」

「余裕がありません、援護お願いします!」


苔の生えた倒木を飛び越えると、小柄なノエルよりも一回り小さい人型の生物が倒れた女性を取り囲んでいた。毛髪のない頭、黄色く濁った目、不潔な乱杭歯、下卑た笑い。もちろん実際に見るのは初めてだが、想像していたゴブリン像そのままだ。派手に物音を立てているためか、こちらに気づいた様子はない。


「5匹!まずは不意を突いて時間を稼ぐ!」


ノエルは低く跳躍すると、女性の足を掴んでいるゴブリンの側頭部を思い切り蹴飛ばした。思わぬ強力な運動エネルギーを受けたゴブリンの体は、ごろごろと3回転して動かなくなる。跳躍前にプリーツスカートの前を押さえたのは今朝の経験からだが、後ろ側を隠す余裕まではなかった。

倒れたゴブリンの手から離れた短剣を拾い上げ、逆手に構えた。奇声を上げて向かってくる1匹のゴブリンを迎え撃つ。


(さて。こういう軽い武器なら、この子は盗賊技能で戦闘ができるはず)

(ずいぶん遅くて雑な動き。軽くバックステップして小手を・・・なんて考える余裕まである)


ノエルは【盗賊LV4】であるが、盗賊技能で戦闘を行うには、武器・防具ともに極めて軽量なものを装備する必要がある。今朝ギースと立ち会った際の武器は彼女にとって非常に重い木剣であり、【戦士LV1】として戦うしか選択肢が無かったのだ。

この日初めて本来の力を見せたノエルが相手の首筋を裂いたとき、反対側から現れたギースが驚き慌てる2匹のゴブリンを切り捨てていた。

しかし最後に残ったゴブリンが、短剣の刃を女性の顔に食い込ませて喚きだした。間合いを詰めようとしたギースが動きを止める。


「こいつ、生意気に脅すつもりか?」


ゴブリンの注意がギースに向いたとみて、ノエルは複雑な身振りとともに詠唱を始めた。一瞬だけ躊躇したのは奥の手を見せることを気にしたためだ。


「柔らかな白き霧よ、全てを包み込み夢の世界にいざなえ。【眠りの雲】!」


にわかに白い靄があたりを包み、それが晴れたときには短剣を突き付けていたゴブリン、突き付けられた女性、ともに深い眠りに落ちていた。


(さっきの動きに加えて眠りの魔法だと?この子は一体何者だ?)

(いろいろ見せすぎた、かな。でも余裕がなかった)

(・・・・・・)

(・・・・・・)


今朝と同じように訪れた沈黙は、複数の足音が近づいてくるまで続いた。


「・・・聞きたいことは沢山あるが、まずは協力に感謝する」

「いえ。出過ぎた真似をして申し訳ありません」

「はあはあ・・・団長、ご無事で!?」

「遅いぞお前たち。もう終わったところだ」

「す、すみません・・・」

「2名で女性を保護、残りは周囲を警戒だ。撤収するぞ」

「はっ!」

「ノエル、君も詰所まで一緒に来てくれ」

「はい」


(尋問、ではないだろうけど・・・さて、どう説明したらいいかな。実はオンラインゲームで寝落ちしたら美少女に生まれ変わったおっさんです、と言ったらどうなる?)

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