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自警団、作戦を開始する

ゴブリンの巣はエルナーク市から見て北北西の方角、3時間ほど森を歩いた場所にあった。崖にできた自然の洞窟を利用しているようで、入口は馬車が通れるほどの広さがある。


見張りに立っていた2匹のゴブリンは当初の計画通り、ノエルが盗賊技能【潜伏ハイド】で接近して【眠りの雲】の魔法で眠らせ、既に仕留めている。自警団長ギースが静かに声を上げた。


「工作隊前へ、作戦を開始する」


自警団が立てた作戦は簡単なものであった。巣の入口で生木や針葉樹の葉を焼いてゴブリン達を燻り出し、槍兵隊で入口を包囲し殲滅する。戦力で上回っている場合の一般的なゴブリン退治の方法だそうだ。ぱちぱちと火が爆ぜ、黒煙が洞窟を覆っていく。


驚き慌てたゴブリンが数匹、武器も持たずに走り出してきた。あっという間に槍先にかけられて動かなくなり、団員の間から、よし!やったぞ!次だ!などと声が上がる。

しかしその直後。洞窟から黒煙が勢いよく噴き出し、数名が煙に包まれた。槍を手放すことはなかったが、涙を流して激しく咳き込む。


「カイン!リック!」

「承知している」

「まかせて!」


自警団に動揺が広がったが、ノエルはこの事態を予測していた。ゴブリンには稀にホブゴブリンなどの上位種がおり、魔法を使う種も存在するのだ。おそらく風を操る魔法を使用したのだろう。


「我が友なる風よ、心のままに狂え。【暴風ウィンドストーム】!」


カインがかざした杖から烈風が渦巻き、黒煙を押し返した。しかしついでに槍兵数名が転倒した上に、入口で燃え盛っていた炎まで吹き飛んでしまったのは計算外であった。平静を装うカインの背中に汗が伝った。


「こっちもいっくよー!」


本当に気にしていないのはリックの方だった。ワインドアップモーションから剛腕をしならせると、手にしていた拳大の石が信じがたい勢いで放たれ、杖を持ったゴブリンの頭部を撃砕した。

先ほどまでの暴風が嘘のように消え去り、洞窟の中から多数の足音が聞こえてくる。


「怪我をした者はいないな?よし、陣形を立て直せ。次が来るぞ!」


団長ギースは歴戦の傭兵であった。少々年齢を重ねたとはいえ、戦士としての修練も十分に積んでいる。

しかしそのギースにして、洞窟から現れた影には目を疑った。陽に照らされた赤い巨体が、ずん、と重厚に歩を進める。


「ばかな。食人鬼オーガーだと・・・?」

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