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五章 七月四日 月曜日

 悠人が神妙な面持ちで話しかけてきたのは、本番を数日後に控えた教室だった。


「なぁ、充彦。正直な話、お前この音楽祭が終わったらどうするんだ?」

「何を」

「何って……諸星と朔耶ちゃんのことだよ。決まってるじゃないか。なあ、バンド、これで空中分解なんてことにならないのかな」


 悠人はやけに心配していた。でも、ありがたいことだった。


「解散なんて事にならないように、精一杯手は打ってきたつもりだ」


 俺は悠人に笑ってみせる。


「本当かよ。オレには全然そうは見えなかったけどな。お前、あのコ達の間をフラフラしているし。恋愛絡みの多角関係で解散って、ありがちすぎて目も当てられないって。今は大丈夫だろうけど、いつか背中を刺されるぞ? お前」

「俺に策があるんだ。必勝の策が」

「なんだよそれ?」

「まぁ、聞いてくれ。この策が巧くいかなくても、最悪お前がさっき指摘してくれたように、俺がアイツか朔耶のどちらかに刺されるだけで済む」


 悠人が大きく息を吐くき、肩を落として見せた。


「意味ワカンネ。でもお前、やっぱりバカなんだな」


 ◇ ◇ ◇


 俺は悠人に事の顛末を教えてやった。緩んでいた悠人の顔が、話が進むにつれて真剣な表情になってゆく。


「協力するよ、充彦。しかし凄いスケールの話だな。ほんと良くやるよお前。尊敬する」

「怒らないのか? お前に相談無しに、勝手に決めたんだぞ?」

「良いよ。飽きたら坊主を継ぐ。飽きる前でも、ウチの寺の本堂でコンサートというのも味があって良いかもしれない。教会でも賛美歌歌ってるよな? 読経だって抑揚をつけるんだ。特に問題はないだろ」


 俺は呆れたけれど、コイツの言葉が嬉しかった。ただ、心の中で意見を言わせて貰えば、悠人の趣味にも問題があると思う。特にその頭の中身に致命的なものがあるっぽい。

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