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三章 五月七日 金曜日

 今日は馴染みの楽器店にやってきた。レンタルスタジオの予約を入れておいたのだ。受付にはいつものように金色の頭の長髪兄ちゃんが座っていた。俺にはとても口にする勇気は無いけれど、リョウ兄は今日も暇らしい。



「はろはろ、リョウ兄。元気してた? 約束どおり遊びに来たよ?」

「リョウさん、今日もよろしくね!」

「いらっしゃいませ! って、なんだ、オリヒメか。それにサクヤもかよ。まったく、喧しい上に面倒なのがつるみやがって。良いかお前達、店で騒動起こすなよ!?」



 リョウ兄は酷いことを言いつつも、笑顔で俺達を歓迎してくれていた。



「大丈夫だよ、俺と悠人もいるから」

「そうそう。オレ達にはリョウ兄はいつも酷いことしか言わないものな」

「なに言ってるんだ、ミツヒコ。寝言は寝ていえ。お前らクソガキどもが信用できるかって。むしろお前ら二人がこいつらと一緒で不安倍増だ」

「酷いよリョウ兄」

「とにかく、仕事増やすんじゃねぇぞ!?」



 俺は思わず反論する。でも、俺のそんな言葉なんてリョウ兄は聞いてなんていなかった。



 夜、俺は早速アイツに今日の事をメールをしておいた。



『今日は皆で音を合わせたんだ。今日から本格的にバンドとしての音を作っていくつもりだ。ベースはギターと違ってリズムキープが大事だと思うから、それが俺の手に掛かっていると思うと、どうも緊張してしまうかも』

『メールありがとう。実はお前がいつメールを寄こすのかと待ってたんだぞ? それにしてもやっと始めたのか。遅いぞお前達。で、お前が緊張するだって? 何の冗談だよ。大丈夫だ。お前ならやれる。そうだな。ベースラインだけど、リズムの中に時折フィルやアクセントも入れてみろよ。プレイに味が出てくるはずだ。そして皆の技量にも依るけれど、いけるようならセカンドラインをベースで弾いても面白いかもな?』



 アイツの返事が妙に優しく感じられ、それが俺にはとても嬉しい。



『ベースに遊びを入れたり、旋律を弾くのか?』

『そうだ。変なこだわりは捨てろ。ギターはコードやソロだけのものじゃない。リズムも任せていんだよ。ベースで色々なパターンを試してみろよ。きっと活躍できるから。変な固定観念は要らないと思うぞ?』

『わかった。やってみる』

『ああ、気軽に試してみろよ』



 明日にでも試してみようと素直に思う。と、浮き足立つ心を感じても、それ止められない俺がいた。

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