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騎士の悩み事

予定していたもうひとつの番外編が間に合わなかったので、こちらを先に。勢いで書いた義兄弟による下ネタ話です。時間的にはエミリオが王宮に戻った直後、フランチェスカが相談役になる前です。

 エミリオの執務室を去り際、宰相は扉の脇に立っていたロレンツォの前で足を止めた。


「何か変わったことはないか?」


「いえ、特にありません」


「そうか。何かあればいつでも言って来い」


「はい、ありがとうございます」


 宰相が部屋を出て行ってからロレンツォが小さく嘆息していると、エミリオが口を開いた。


「最近、おまえは宰相が来るとやけに緊張しているな」


「そんなことはありませんが」


「が?」


 エミリオははぐらかそうとしたロレンツォの言葉尻を捉えてきた。


「……少し目を合わせづらいというか」


 ロレンツォはエミリオからも目を逸らしながら言った。


「なぜだ? わたしとおまえはともに宰相の婿だというのに、宰相が優しい言葉をかけるのはおまえだけだ。明らかにおまえのほうが大事にされているではないか」


「それは、単に私が婿として頼りないからでしょう」


 そのことをエミリオが羨んでいる様子だってまったくないとロレンツォは思う。


「まあ、それもあるだろうが。本当は宰相には話せないことがあるのではないか? フランチェスカとうまくいってないのか?」


「いいえ、とてもうまくいっています」


 ロレンツォが即答すると、エミリオは顔を顰めた。


「そうだろうな。聞くほうが馬鹿だった」


「むしろ、フランチェスカとあまりにうまくいっているせいで、義父上の顔を見られないというか……」


「いまいちわからん。何が言いたいんだ?」


 一瞬迷ったが、結局ロレンツォは口にした。


「だから、つまり、義父上に対してフランチェスカとあんなことまでしてしまって申し訳ありませんという気持ちになるのです。殿下はそういうことはありませんか?」


 ロレンツォは自分の顔が赤くなっているのがわかった。エミリオはロレンツォの言葉の意味を理解したようでニヤッとしたが、さらりと答えた。


「一度もないな。というか、おまえだって今さらではないのか? それとも、最近になってそんなに凄いことまでフランチェスカとしているということか? あんなことってどんなことだ?」


 ロレンツォもそこに関しては口を噤んだ。


「父親だって結婚を認めた時点で娘が相手の男にあんなことされるくらいは覚悟するだろ。自分だって同じことをしてるんだからな。宰相など父親の許可を得ていない娘にまで手を出したではないか。ああ、そう言えばわたしとおまえも手を出すほうが先だったか」


「私は違います」


 ロレンツォは慌てて言ったが、エミリオはフンと笑った。


「宰相からすれば同じだ。おまえが2か月近くもフランチェスカに何もしなかったなど信じるものか。おまえがフランチェスカと結婚した直後、ちょうどそこで宰相とおまえが初めて顔を合わせただろ。あの時の宰相の気持ちを代弁するとしたら、『こいつがうちのじゃじゃ馬を乗りこなしたという奴か。そうは見えんな』というところか」


「おかしな言い方をしないでください」


「何だ、『さすが騎士だな』と思われたはずだとでも言いたいのか? それとも、おまえたちなら逆にフランチェスカのほうが……」


「もういいですから、やめてください」


 やはりこんな話をこの義弟にするのではなかったと、ロレンツォは大いに後悔した。

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