夜の音
窓を少し開けて。
今日は雨が降っているから、そのぐらい開けておいたほうが、雨音が聞こえてちょうどいい。
明日......というか今日もまた明日も早く寝ないといけないんだ。でも、今寝てしまうと何かが奪われてしまいそうなんだ。だから少し、夜更かしでもしよう。
眠ってしまいそうだ、何か話してくれよ。最近の気になることはなんだい。君はスポーツが好きだったじゃないか。だったらその話でもしてくれよ、なぁ。したくないなら別にいいけど。僕はそれを強要するわけにはいかないからね。
昨日学校を辞めたよ。君にはその理由は前に話したからさ、もう言わないけど。でももう辞めてもいいと思ってたんだ。学校を辞めた程度で、将来が危うくなるなんてことはないしさ。あと1ヶ月は暮らせる。そしたら仕事でも探すよ。だからそれまで、待ってて欲しいんだ。
こんな話もあれだから、昨日あった出来事でも話そう。
昨日映画を見たよ。とってもいい映画だった。号泣するほどでもなかったけどね。でも少しは感動したかな。まぁ、原作版はもう読んだからだったかもね。
前の席に老人がいたよ。自分の席に座る前にその老人の顔を見たんだ。肌はシワだらけだのに、目だけは輝いている。羨ましかったよ。
上映が終わったよ。その老人はどうしたと思う。感動して涙を流しながら独りで拍手をしていたよ。でもね、世の中って怖いんだ。その老人の隣に座っていた若者の集団の一人が「うっせぇじじい」と言って舌打ちをしてたよ。そのあと、他の人たちが謝ったりしてたけどさ。でも、怖いと思ったんだ。思ったことをすぐ口に出してしまうなんて。世の中にはいい人と悪い人がいるって改めて実感したよ。
そのあと僕は席を立って、出口のあるスクリーンの近くに行こうとしたんだ。そのついでに、その老人の顔を見たよ。目が輝いてた。何でかは分からなかったけどね。
この話は終わりだ。話すのが嫌になったよ。
君の肌はとっても冷たいね。目を閉じてるけど、寝ちゃったかな。さっきの方が暖かかったけどね。
手遅れだったよ。申し訳なかったと思ってる。
残念だ。
君の胸を触りたいな。いや、別に性的な意味で言ってるのではないよ。脈を測りたいんだ。でも、君の腕にしておくよ。その方が、いい。君はそのままの方がいいと思う。
静かだね、さすがに夜だからかな。雨ももう止んだよ。
今日の夜は本当に静かだよ。君の腕もね。




