第二章
宿に着くまでに俺たちは話をした。
彼女の名前はパルルと言った。父親と一緒にこの街で宿屋を経営しているらしい。
以上。
ちなみに彼女は俺にまったく質問してこなかった。
道すがら大半は沈黙だった
なんで建物が一階建てばっかなのとか、牛や馬っぽい生物がいるけどあれはなに?とかホントは色々聞きたかったが、こっちばかり質問するのもなんだかと思い、俺自身あんま喋れなかった。
俺、嫌われてんのかな…。
「あ、ここです」
パルル指さした先にあったのは、なんとも普通な感じの特に特徴の無い宿屋だった。
「おとうさーん!お客さんよー!」
パルル父親を呼ぶと、奥からヒゲムクジャラの男が出てきた。
「お父さん紹介するね、この人今日泊まりたいんだって」
説明それだけ!?
「さっきパルルさんが強盗共に襲われてるところ助けたんですよー」
「そーですか。じゃあ6500ピルーです」
容赦ねえな!
「あー、実はですね…」
ここまでついてきてなんだが、俺自身まだ無一文の身だったことを明かす。思えば、天界にいた時にいくらかもらっておけばよかった。言わなかった自分で言うのもなんだが、気の利かない神である。
「あーそういうことですか。参りましたねぇ…」
「なんだ、早く言ってくださいよ」
オイオイ…命の恩人容赦ないな…。こいつら人の情とか無いのか…。
「あの、よろしければなんですが…」
俺は一つの提案をしてみる。
「ここでお代分だけでも働かせてくれませんか?この街のことも知りたいですし…」
自分で言うのもなんだが、命の恩人がいうセリフじゃないと思う。
すると、二人が驚きの表情でこちらを見ていた。
俺、なんか変なこと言ったか?
二人は唾を飲んで言った。
「「その発想はなかった」」
…まじか…。
「へぇーなるほど!ちょうどうちらも男手が欲しかったんだよ!」
「すごいです!そんな考えが出るなんて!あなたは一体何者ですか!」
「……」
俺は思った。
なんだこれ…。
確かに俺が望んだのは現代知識で無双する世界だったが…確かに合ってるんだが…なんか違う、違うよこれは…。
そもそもこの提案自体現代知識とかそういう次元じゃないよね?普通のコミュニケーションの中で生まれる考えだよね?
とにかく、こうして俺は宿屋フレーゲルの店員となった。
「そういえば名前はなんていうんでしたっけ?」
この人たち、どんだけ俺に興味なんだろう。