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第一章

僕の目の前には神がいた。

「おお、なんじゃおぬし、また死んだのか」

彼は前回俺を蘇らせて、異世界に送ってくれた神だった。俺は以前の世界で不慮な事故により死亡したが、ひょんなことから生き返ることになったので、ついでに異世界に転生させてもらうことにしたのだ。

しかし、俺は異世界でも死に、再度ここに来たのだった。

「志半ばで死んでしまうのは嫌じゃじゃろう。どれ、また転生させるのは造作もないが…」

神の提案に俺は首を振る。

「いや…もういいや転生は…」

神は驚いた表情で俺を見た。

「転生を拒むの奴は初めて見たわ。輪廻転生を望む場合、どのような世界、生物になるかわからないんじゃぞ」

確かにそうだ。誰だって強くてニューゲームが良いに決まってる…。

だけど…。

「もうあんな世界こりごりなんだよ!」

そう、あんな世界もう嫌なのだ。

少し前の話をしよう。これは俺が経験した転生先の話であり、俺が再度死ぬまでの話だ。



1度目の世界で、俺のヒラエルキーは雑魚同然だった。

いじめにかつあげ、クソみたいな親…友達なんかいやしない…。あまり詳しいことは思い出したくも話したくもないが、とにかく最悪な世界だった。

そんな俺は、いつしか異世界への憧憬を抱くようになっていた。

異世界では、俺でもきっと優遇されて、モテモテで何一つ不自由無い生活で、口癖は「しょーがねーなー」になっていることだろう、と。

そんなある日、俺は事故にあった。

普通の学校の帰り道、突然の雷に打たれて死んだのだ。

後にそれは、前述の神のお漏らしなのが発覚するのだが。

ともかく俺は神の不注意により死んだ。

天界にて、神はなんだかバツが悪そうだった。

「おぬしに特別に転生するチャンスをやろう」

神はそう言った。俺としては願ってもないチャンスだった。

そこで俺はついでに身体能力をマックスにし、ついでに顔もイケメン(けど芸能人とかではなくあくまでも一般レベル)にして細身にしてもらい、汗をかくと柑橘系の香りが出るようにしてもらった。ついでに剣と魔法のスキルは達人レベルでついでに心も読めるけど相手が肝心なことをいう時は耳が悪くなるようにしてもらい、ついでに口癖を「しょーがねーなー」にしてもらった。

神は、すごく怪訝な顔をしたが、一応やってくれた。

これで異世界への準備は万端であり、これからは薔薇色のような人生が待っているはずである。

あと、このあと読心術で神の心を読んでしまい、お漏らしのことを知ったが可哀想なので言わないでおいた。

こうして、俺は準備万端異世界に転生した。



異世界、フンベテルゲートはまるで古風なRPGのような世界だった。牧歌的で、スローライフな世界。文明はさほど発展してないが、まだ魔法の色が強く残る世界である。

俺は気がつくと芝生の上で寝転がっていた。

「さて、これからどうしようかな…」

少し迷ったが、考えてもしょーがねーのでまずは街に行こうということになった。

周りに人の気配どころか、街の気配も無いけど、しょーがねーのでとりあえず当てずっぽうに歩き始めることにした。


長いこと歩いていると、ようやく街に着いた。

街は意外と賑わっており、様々な人が行き来していた。

とりあえずここから俺の伝説が始まるのだ。などと考えていると、突然布を咲くような女性の声が聞こえた。

「しょーがねーなー…!」

俺は悲鳴の先に急いだ。


「助けていただきありがとうございます!」

のびてる強盗まがいの男達を尻目にホコリを払っていると、彼女はお礼を言ってきた。

美しいスカイブルーの瞳を持った綺麗な女性だった。年は俺と同じくらいだろうか。少し見蕩れてしまった。

「ではそういうことで…」

彼女はそそくさと帰ろうとした。

ん?いや、ちょっと待って…?

「かかかか身体は大丈夫でしょうか?!」

思わず呼び止めてしまった。え?なんかないの!?かっこいいとかこのあと一緒にご飯どうですか?とか。

「いえいえ、あなた様のおかげでまったく何もありませんでした。じゃ」

また帰ろうとする。なんだかあまりにも素っ気なくない!?

なんかもっとこう、なんかないの!?

そもそも俺転生前の世界の学生服だから珍しいとか、明らかに常人離れした速度で動いてよね?格闘術だっておそらくこの世界には無いと思うけど、マーシャルアーツを使ったのに、ツッコミどころ満載じゃん!

とか考えてる間に、彼女はまたも帰ろうとする。

やばい、なんだかわからんけど、俺の異世界生活がここで終わるんじゃないかと思ってしまった。

このままでは前の世界と変わらず、俺はまた半引きこもりのような生活に戻ってしまう…。背筋がヒヤッとした。

「あー!ところでさぁ!今夜泊まるところ探してるんだよねー!この街初めてでさぁ!よければ案内してくれないかなー?!」

明らかに相手にして欲しそうに口に出してしまった。なんで助けた俺がこんな思いをしなければならんのだ?

「…あー、そうなんですか。よろしければ、私の家で宿屋を経営しているので、よろしければご案内しますよ?」

思わず、パァアと表情が明るくなった。いけないいけない、こんなことで喜んでいては後のハーレムに耐えられないぞ。顔をクールに戻し、1度咳をする。

「う、うん。よろしく頼むよ…」

俺は、この時まだこの世界の違和感に気づいていなかった。思えばこの時点で色々気づくべきだったのだ。

しかし俺はこの先の輝かしい未来しか見えていなかったのだ。それがこの先の恥と後悔の生涯に悩むことになるとは…。

「ちなみに1泊6500ピルーです」

金とるのかよ!

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